※ここ最近のマーケット環境の変化に伴い、前週3/30に公開予定だったコラム内容を大幅に見直す必要が生じましたので、見直し後の内容で今回アップしております。

 毎週本コラムを楽しみにしていらっしゃる読者の皆さまにはご心配をおかけしましたが、急変することも多いマーケットの世界で、引き続き皆さまにより良い形での情報提供を行ってまいりたいと思いますので、何卒ご了承ください。

米国10年物国債利回りの現状は?

 2023年3月は、シリコンバレー銀行破綻や、クレディ・スイスの信用不安問題といった諸問題が引き金となり、マーケットが揺れる状況となりました。

 その結果、株式マーケットのみならず、債券マーケットや為替マーケットも大きく変動しました。

 例えば米国の10年物国債の利回りは、シリコンバレー銀行破綻直前は4%ほどの水準でしたが、3月24日(米国時間)は3.38%まで低下しました。その後再び金利上昇に転じ、3月31日時点では3.48%となっています。

 また、米ドル/円レートも、3月8日の137円90銭から3月24日には130円まで円高が進みました。金融不安も落ち着きを見せたことから3月31日時点では133円近辺まで戻りましたが、金融不安が生じると「債券高(金利低下)・円高」の状態になりやすいといえます。

 そして米国10年物国債の利回りと、ドル/円レートのチャートを並べてみると、ほぼ値動きが同じであることが分かります。

 直近で利回りのピークを付けた時期も、円安のピークを付けた時期も、ともに2022年12月下旬です。また、そこから反転して利回りのボトムを付けた時期も、円高のピークを付けた時期も、ともに2023年1月中旬です。

 3月に信用不安問題が生じたときも、利回りのボトムを付けた時期と、円高のピークを付けた時期が3月23~24日とほぼ一致しています。

 つまり、米国10年物国債利回りが低下すれば為替レートが円高・ドル安となり、逆に国債利回りが上昇すれば円安になりやすい、というのが足元の状況です。

ドル/円レートとNYダウに大きく影響を受ける日経平均株価

 日本の株式マーケットにおける代表的な指数である日経平均株価は、米国株の動きとドル/円レートに大きく影響を受けます。

 ダウ工業株30種平均(NYダウ)が上昇すれば日経平均も上昇しますし、NYダウが下落すれば日経平均も下落します。

 そして為替レートが円安に振れれば日経平均は上昇しやすくなり、円高に振れれば下落しやすくなります。

 ですから、今後大幅な円高が進み、かつ株価が下落するような状況となれば、日経平均はNYダウよりも大きな下げに見舞われる可能性が高いのです。

 NYダウが上昇した場合も、円高が同時進行した場合は、日経平均の上昇は相対的に小さくなってしまうと思われます。

 一方、金利上昇などに伴い為替レートが円安方向に向かった場合は、日本株にとってはプラスとなります。

 円安かつNYダウも上昇すれば、日経平均にとっては強い追い風となりますし、NYダウが下落した場合も相対的に下落率が小さく抑えられると考えられます。

 実際に2022年の株式マーケットは、日経平均も下がりましたが、NYダウの方がより大きく下がりました。これは2022年に大幅な円安が進んだため、NYダウより日経平均の方が下げ幅が小さくなったことによります。

金利・為替レートの変動に応じた具体的な戦略は?

 先日も米国のFOMCにて0.25%の利上げが発表されたように、政策金利はまだ上昇しています。一方、米国10年物国債利回りは2022年10月の4.25%をピークに足元では3.5%前後まで低下しており、将来的には政策金利が低下していくと予想する向きが増えていると考えられます。

 米国の金利が低下すれば、日米金利差が縮小するため円が買われ、ドルが売られやすくなり、結果として円高方向に進みやすくなります。

 となると、まず円安メリットを享受できる輸出型企業については、逆風が吹く可能性が高いといえます。

 特に、売上数量が減少しているにもかかわらず為替の影響で売上単価がかさ上げされて良く見えているだけという企業については、厳しい株価下落となるのではないでしょうか。

 一方、金利低下により成長株の見直し買いが進むように思います。成長株は金利上昇局面では、将来稼ぐ利益の現在価値が下がってしまうので株価が上がりにくくなります。逆に金利低下局面では将来利益の現在価値が上がるので株価も上昇しやすくなります。

 また、成長株の多くは国内向けの売り上げが多いので、為替レートの円高進行もあまり影響を受けずに済みます。

 その意味では、金利低下・円高が進むと輸出関連株は逆風となり、一方成長株にとっては追い風となるのではないかと筆者は考えています。

 一方、もしインフレ懸念再燃などにより米国の金利が再び上昇基調となれば、日米金利差の拡大から円が売られ、ドルが買われやすくなり、結果として円安方向に進みやすくなります。

 そうなると、上記とは逆に成長株には逆風となり、輸出型企業にとっては追い風となるでしょう。

 また、今まで金利上昇・円安となっているときは成長株よりも割安株の方が買われる傾向にありましたが、今後も金利上昇・円安となれば同様の動きになるのではないかと思います。

売却はあくまでもルール通りの実行を

 ただ、上記の内容はあくまでも「平時」という条件付きです。

 例えば欧米で金融機関やヘッジファンドの信用不安や破たん懸念の問題が相次いで見つかり、株価がパニック的な下落に転じたというようなときは、成長株だろうが、割安株だろうが、業績絶好調の銘柄であろうが、「株」というだけで大きく売られることになります。

 そして株価下落により景気悪化・個別銘柄の業績悪化につながる可能性も否定できませんので、保有している株の株価が売却ルールに抵触する水準まで下がったのであれば、速やかに売却・損切りをして、守りを固めるべきでしょう。

 株価が大きく乱高下するような状況ではなく平時であれば、上昇トレンドとなっている強い銘柄を中心に保有を継続して利益を伸ばすことを心がけましょう。

 そして株価が大きく値下がりしてパニック状態となり、株そのものを投資家が高リスクとして回避するような状況であれば、下降トレンドに転じた保有株は速やかに売却して守りを固め、株価が底打ちしたことを確認した上で買い直すのがよいと思います。

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