アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2023年2月28日時点。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。

 2月28日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

配当権利取りの動き本格化!鉄鋼株が引き続き強い

 2月(1月31日終値~2月28日終値)の日経平均株価(225種)は0.4%の上昇となりました。

 米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が1月31日~2月1日に開かれましたが、波乱なく通過したことで、前半は一時買いが優勢となりました。

 しかし、その後は日本銀行の次期総裁人事を巡って一進一退となる場面があり、月後半には、米国で想定を上回る経済指標が相次いで発表されたことで、インフレ懸念が再燃する状況が強まりました。結局、月間を通して、日経平均2万7,500円レベルを挟んだもみ合いが続く形となっています。

 なお、注目された日銀の新総裁には、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する人事案を政府が決定しました。植田氏は、衆議院・参議院の所信聴取で、「金融緩和を継続することが適切だ」と発言しています。

 全体相場がもみ合う状況の中でしたが、ランキング上位銘柄の株価は総じて買いが優勢になりました。2月は、3月末の配当権利取りに向け配当狙いの買いが最も強まる月と言われ、その動きが強まったものとみられます。

 とりわけ、日本製鉄(5401)が1月に続いて大きく上昇する展開になっています。2023年3月期第3四半期の好決算発表が材料視されたほか、鉄鋼株は高配当利回りの代表セクターとして注目される流れにもなったようです。鉄鋼株では大和工業(5444)も10%を超える上昇率となっています。

 航空機のリースファンドなどを手掛けるFPG(7148)は2023年9月期第1四半期の大幅増益が好感されました。2023年3月期第3四半期好決算や増配を発表した農薬や化学品などの日本曹達(4041)などの上昇も目立っています。SBIホールディングス(HD)(8473)はビットコイン価格の上昇が支援にもなったようです。

 半面、西松建設(1820)が大きく下落しました。業績下方修正に伴い、配当を従来予想から減額した発表がネガティブ材料となりました。高配当利回り銘柄では配当の下方修正によるインパクトは大きくなりがちです。医療機器のPHCホールディングス(HD)(6523)も2023年3月期の税引前利益予想を引き下げたことで、一時急落する展開になっています。

新規ランクインはFPGや日本曹達など6銘柄

 今回、新規にランクインしたのは、PHCHD(6523)、FPG(7148)、日本曹達(4041)、INPEX(1605)いすゞ自動車(7202)TOYO TIRE(5105)の6銘柄です。

 除外となったのは、NIPPON EXPRESSホールディングス(9147)住友林業(1911)住友商事(8053)丸紅(8002)MIXI(2121)MS&ADホールディングス(8725)となっています。

 PHCHDは純利益予想を下方修正して株価が下落しましたが、配当計画は変更しておらず、利回り水準が上昇しました。FPGは株価の上昇に伴って時価総額が選定基準をクリアすることになりました。

 日本曹達は、会社側で2023年3月期の年間配当金計画を180円から220円に引き上げています。いすゞ自動車やINPEXは相対的に株価上昇率が低かったので利回りランキングが上昇しました。TOYO TIREには株式調査会社TIWの格上げが観測され、コンセンサスレーティング水準が上昇しました。

 一方、NIPPON EXPRESSは2023年12月期の減配予想で配当利回り水準が低下しています。住友商事はBofA証券が投資判断を格下げして、コンセンサスレーティングが基準値未達となりました。

 丸紅、MIXI、MS&ADはそれぞれ、株価が上昇したことで利回りランキングが低下しています。住友林業は配当利回りコンセンサスが計測されておらず、ランキングからは除外していますが、会社計画をベースにした配当利回りは4.78%の水準となっています。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が異なっているものとして、まずは西松建設(1820)が挙げられます。1月31日に年間配当計画を285円から221円に引き下げていますので、アナリスト予想の配当利回り水準は高過ぎで、実際は会社計画ベースの6.07%が妥当と考えられます。

 一方、日本製鉄(5401)は会社側が期末計画を発表しており、それをベースとした配当利回りは5.93%の水準となります。こちらも会社計画が妥当でしょう。大和工業(5444)に関しても、会社計画ベースでの利回り水準5.50%が妥当とみられます。

 ほか、会社計画よりもアナリストコンセンサスがやや高いものとして、双日(2768)兼松(8020)、INPEX(1605)、TOYO TIRE(5105)などが挙げられます。TOYO TIREに関しては、会社側で2023年12月期の前期比減配を発表したばかりであり、会社計画の3.41%をベースと考えるべきでしょう。

 SBIHD(8473)は、引き続き会社側で2023年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は152円(前期150円)程度という状況です。なお、上半期配当金は30円でした。

新年度の配当水準低下も意識!海運や鉄鋼株はいったん利益確定も一考

 米国の経済指標は足元では想定を上回るものが多く見られ、2023年の米国景気は当初想定されていたほど悪化しない可能性が高まっています。それに伴い、FRBの金融政策に関してはタカ派スタンスが強まる方向で、利上げ局面は従来見込みよりも長期化しそうです。

 当面は経済指標の上振れ基調が続くとみられ、株式市場ではこうした上振れ基調をマイナス視する動きが優勢となる見通しです。このような状況は、景気敏感型の高配当利回り株にとっては相対的にポジティブであると判断されます。

 一方、3月相場に入ったことで、高配当利回り銘柄に関しては、権利落ちを意識した利益確定売りの動きが強まってくる局面にもなります。

 権利落ち日には配当や株主優待が目当ての投資家が株式を売却するため、高配当であったり人気の株主優待があったりする銘柄ほど株価は下落しやすいと言われます。とりわけ、2024年3月期以降の配当水準が低下するような銘柄は、権利落ち後の株価回復には時間を要するとみられるため、利益確定のタイミングも早まる公算です。

 海運株などはこうした流れが顕著になるとみられますが、鉄鋼株なども、期初の段階では会社側で高い配当計画を出さない可能性があります。配当権利を放棄して、株価の値上がり分でいったん利益を確定させて売却し、権利落ち後に再投資することも一考すべきと判断します。