銀行株と鉄鋼株、配当取りで上昇

 東京株式市場の動きについて「底堅い」という印象を持つ投資家が増えているようです。日経平均株価(225種)やTOPIX(東証株価指数)が値を保ち、さらに目立った値上がりをするセクターが増えていることは投資家心理の上向きにつながっていると思われます。

 ここで株価上昇が目立つセクターは「銀行」と「鉄鋼」です。時価総額が大きく流動性に富むこのセクターが堅調に推移しています。両セクターの主な銘柄の動きを中心に確認しておきましょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306・プライム)

 国内最大の民間金融グループで、銀行・信託・証券・カード・リースなどを展開しています。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日本製鉄(5401・プライム)

 粗鋼生産量で国内首位、世界4位企業です。高級鋼板に強みを持ちます。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 銀行株も鉄鋼株も特定の要因によって株価が変動する「材料株」ではありません。銀行株に関しては米金利上昇による運用環境の好転、鉄鋼株については鋼材価格の値上がりがそれぞれ株価堅調の要因として説明されることが多いです。

 ただ本質的には「東京市場に流入する資金の増加」、さらには3月期末を前にした「配当取りの動き」があるとみられます。

 銀行(にとどまらず金融株全般が堅調)、鉄鋼セクターについては業界トップの日本製鉄だけでなく、2番手や3番手の銘柄にまで物色が伸びていることは特筆すべきです。ここでも具体的な銘柄の動きを見ておきましょう。

神戸製鋼所(5406・プライム)

 鉄鋼高炉国内3位で、アルミ・銅、建機・電力など複合経営で知られます。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

合同製鉄(5410・プライム)

 日本製鉄系の鉄鋼電炉メーカーで、建設用鋼材に強みがあります。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

めぶきフィナンシャルグループ(7167・プライム)

 傘下に地銀大手の常陽銀行(水戸市)、さらに足利銀行(宇都宮市)を擁する金融グループです。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

MS&ADホールディングス(8725・プライム)

 傘下に三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険を擁する損保首位級グループです。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

米FRBタカ派に傾くもリスクオン続くか?

 1月31日に発表されたIMF(国際通貨基金)による「世界経済見通し」では、2023年の世界の経済成長率を、昨年10月時点より0.2ポイント引き上げて2.9%に上方修正しました。

 多くの国と地域で懸念されたインフレの勢いが鈍化傾向にあることに加え、中国が新型コロナウイルス感染を徹底的に抑える「ゼロコロナ政策」から経済活動の再開にかじを切ったことを踏まえたものです。

 世界の株式市場では、IMFの見通しが極端に悲観的なものにならなかったことが好感され、投資家の間ではリスクを取って高い収益を追求するリスクオンムードが高まったと思われます。日本株が目立って買われているわけではないものの、世界株へのリスクオンに伴い東京市場も全般的に底堅さを示し、高流動性、高配当セクターが目立って物色されている構図です。

 こうした中、2月3日に発表された米国の1月雇用統計では、非農業部門の雇用者数の増加が51万7,000人となり、事前予想18万7,000人を大きく上回りました。平均賃金の上昇率は前年同月比では鈍化したものの、米労働市場の強い推移が示される内容でした。

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)高官からも利上げ継続姿勢が示されました。これまでFRB内ではハト派姿勢が目立ちましたが、ややタカ派寄りの姿勢に転じるようになったとみることもできます。

 一連の動きが投資家をヒヤリとさせたことは事実ですが、その後、米国の株式市場が大きな混乱となったわけではなく、ともすれば「あと3回の0.25%利上げ(場合によっては一度0.5%があるか)」という見方を織り込みつつあるように思われます。

日本株、高配当の業界2番手銘柄に物色も

 米国株に大きな波乱がないとすると、東京市場ではさらに投資家の物色意欲が強まる可能性もあります。その場合はやはり高流動性銘柄、高配当銘柄を軸として、2番手以降の銘柄も対象となる見通しです。

 ここでは10万円で投資可能で、年間予定配当利回り4%程度(3月期決算企業)、十分な流動性がある銘柄を取り上げます。期末配当権利付き最終売買日は3月29日(水)です。

10万円で投資可能な高配当・高流動性銘柄

*予定配当利回りは2/21終値で計算

日本精工(6471・プライム)

 世界有数のベアリングメーカーで自動車関連品が売上の過半を占めます。年間予定配当利回り3.9%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ENEOSホールディングス(5020・プライム)

 国内シェア5割の石油元売り首位企業です。年間予定配当利回り4.6%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

プレス工業(7246・プライム)

 トラック用フレーム、車軸部品で国内トップ企業です。年間予定配当利回り4.4%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

山陰合同銀行(8381・プライム)

 山陰地盤の地方銀行で、鳥取、島根両県で預金高1位を誇ります。年間予定配当利回り3.9%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三菱HCキャピタル(8593・プライム)

 三菱UFJグループのリース首位級企業です。コロナ禍で海上コンテナリースが拡大しました。年間予定配当利回り4.4%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)