<マザーズ指数(左軸)とマザーズ売買代金(右軸)>
1月の中小型株ハイライト
年替わりで大逆流、グロース株は意外なほどの好発進に
月替わりのタイミングで需給が反転する、というのはよくあることですが…昨年に続き「月替わり&年替わり」のタイミングでの需給反転が世界の株式市場で炸裂しました。昨年、そして前月でもある昨年12月に忌み嫌われていたグロース株が、逆流(買い戻し)のターンに。
12月CPI(消費者物価指数)が6カ月連続の伸び率鈍化となり、次回FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅0.25%への縮小を市場はコンセンサス化。さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)担当の人気記者の記事から、「利上げは3月が最後で、春にも利上げ停止」がコンセンサスとして固まる過程で、「米金利低下→売り込まれたグロース株上昇」の基調に。
また、中国のゼロコロナ解除による中国リスタート期待で香港株や欧州株が急伸したことも、リスクテイクの雰囲気をより濃くさせました。
グロース株優位の展開で、1月の月間騰落率はNYダウ(ダウ工業株30種平均)の+2.8%に対し、ナスダック総合指数は+10.7%と圧倒的なパフォーマンスに。日本もその流れはくむ格好になり、日経平均株価の+4.7%に対して、東証マザーズ指数は+6.2%と好調でした。
「日銀トレード」には滅法弱い中小型グロース株
中小型グロース株にとって好地合いとなった1月でしたが、1月12~17日にかけていったん調整を入れる場面もありました。
年初からの上昇が腰折れしたきっかけは、18日に結果公表を控える日本銀行会合に向け「金融引き締め思惑」が急浮上したことでした。前月12月会合時に、日銀はサプライズで長期金利の変動幅を拡大(±0.25%→±0.50%)。
直後にマーケットが荒れただけに、「1月会合は何も無い」がコンセンサスだったのですが…12日に一部メディアが「大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」、また「必要な場合は追加の政策修正を行う」と報道。
これにマーケットは過剰反応し、日本国債は売り(10年金利は一時0.5%超え)、ドル/円は下落(円高)、そして株式市場では「日銀トレード」が流行しました。
「日銀トレード」とは、日銀の金融引き締めによる金利上昇のメリットを受ける業種(とくに銀行株)を買い、円高デメリットの日経平均(先物)を売るというような、イベント目掛けたポジション構築を指します。
この過程で、円高デメリットなど無関係とはいえ、金利上昇を嫌って売られた中小型グロース株。また、銀行株だけで60銘柄以上あるプライム市場と違い、「日銀トレード」で買われる銀行株が皆無なことも蚊帳の外になった理由といえます。
ただ、18日の会合結果はというと、「あの報道は何だったの?」レベルの現状維持であっさり終了。「日銀トレード」失敗のヘッジファンド勢のアンワインド(巻き戻し)で日経平均も急上昇したほか、余計な理由で出遅れた中小型グロース株も挽回の動きに。
ひとまず、今後も「日銀トレード」の兆しが出た時期は、「中小型グロース株は触らない」が得策ということだけ言えそうです。
活気あふれるデイトレ勢、直近IPOや低位株に集中特化
12月のIPO(新規公開株)ラッシュ、節税目的の損出し売りという需給悪化要因を通過し、地合い好転もあいまって、個人の短期マネーは躍動し始めます。序盤は、地合いに飲まれて大きく下げていた12月上場の直近IPO物色がヒートアップ。
ここから、材料株に広がっていった格好で、例えば国策ネタで「異次元の少子化対策」なるパワーワードが出てきたことから小型の子育て関連株などが人気化しました。
当初、「年前半安/年後半高」を予想する市場関係者が多かったこともあって、意外に堅調な1月の株式市場に対して、懐疑的な見方が広がりやすかったことも影響したと思われます。上昇する日経平均や大型ハイテク株の上値を追い駆けづらいこともあり、海外投資家の関与が薄そうな小型材料株などでの日替わり物色に専念する投資家が増えました。
直近IPOのELEMENTS(5246)、monoAI(5240)のほか、バイオのセルシード(7776)、ブライトパス(4594)、材料株としてSERIOホールディングス(6567)、トラースOP(6696)、エコモット(3987)が人気化。
多くが株価1,000円未満の低位株で、今期赤字予想(=業績は無視ということ)のような銘柄で、かつ、時価総額の小さい「個人投資家以外、触ってないんじゃないの?」な銘柄ばかり。デイトレするのなら、「人さえ集まっていたら何でもOK」そんな風潮が強かったといえます。
東証グロース市場の売買単価(どのくらいの株価の銘柄を売買しているかを示す)が1月後半にかけて急低下したことが印象的でした。
2月の中小型!今月のキーワードは…今年のスターは?
2月1日のFOMCがハト派的だったことで(十分その手前から市場は織り込んでいたはずですが)、米国株市場はより一層「利上げの一時停止」を見据えた楽観ムードを強めています。2月1日のVIX指数の終値は17.87ポイントで、これは2022年1月13日以来の低水準。「ゴルディロックス」と呼ばれる適温相場に戻ったかのような雰囲気で今に至ります。
ただ、逆張り(上がった株を売り、下がった株を買う)傾向が強いのが日本の投資家。あまりに米国のハイテクグロース株が年初から順調に上げているだけに、米グロース株が上がれば上がるほど、「そろそろ急落があるかもしれない」という警戒感も強めていると思います。
そのセンチメントは、東京時間の中小型グロース株売買に反映されます(上がったら利益確定売り、重要イベントの前で少しポジションを軽くするなど)。そうしたことが程よいブレーキとなり、極端な過熱感を帯びていないのが日本の中小型グロース株とも言えそうです。
程よいブレーキにつながる国内要因として、日本の中小型グロース株の決算発表が2月前半に集中することも挙げられます。決算発表の集中月は「2月・5月・8月・11月」の年4回で、今年最初のラッシュを2月に控えています。
決算のポジティブ/ネガティブ判定を投資家は行うわけですが、サプライズ度合いが大きい銘柄は発表直後にハイボラ化します。それを嫌い、手前で持ち高を減らそうとするような行動は多く見られます。
とくにハイボラ化するのは、決算発表に向けて買いポジションが積み上がっているような銘柄。東証スタンダード、グロース市場に上場する銘柄で、個人投資家の持ち高を示す信用買い残(金額ベース)が多いものを一覧にしました。
信用買い残が多い銘柄というのは、「いい決算だったらいいな」「決算のあと上がってほしいな」と思って決算を待っている投資家が多い銘柄と解釈できます。
今年最初の決算発表シーズン、決算発表目前の人気株(信用買い残上位)と予定日
市場 | コード | 銘柄名 | 2/2終値 | 信用買い残 (億円) | 過去3カ月 騰落率 | 決算発表 | 予定日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
スタンダード | 6890 | フェローテック | 3,280 | 156 | 33% | 3Q | 2月14日 |
グロース | 4565 | そーせい | 2,426 | 128 | 21% | 本 | 2月14日 |
グロース | 7794 | イーディーピー | 27,110 | 96 | 71% | 3Q | 2月10日 |
グロース | 9227 | マイクロ波化学 | 2,492 | 85 | 84% | 3Q | 2月10日 |
スタンダード | 8508 | Jトラスト | 563 | 66 | ▲13% | 本 | 2月14日 |
グロース | 4393 | バンクイノベ | 7,640 | 65 | ▲50% | 1Q | 2月13日 |
グロース | 4575 | CANBAS | 1,739 | 50 | 123% | 2Q | 2月10日 |
グロース | 7342 | ウェルスナビ | 1,410 | 45 | 2% | 本 | 2月10日 |
グロース | 2160 | ジーエヌアイ | 1,218 | 44 | ▲15% | 本 | 2月15日 |
グロース | 4165 | プレイド | 802 | 43 | 20% | 1Q | 2月13日 |
スタンダード | 6338 | タカトリ | 7,960 | 41 | 75% | 1Q | 2月13日 |
スタンダード | 6425 | ユニバーサル | 2,472 | 39 | 19% | 本 | 2月14日 |
グロース | 4485 | JTOWER | 6,200 | 38 | 3% | 3Q | 2月8日 |
スタンダード | 3856 | Abalance | 2,751 | 32 | 37% | 2Q | 2月14日 |
スタンダード | 7564 | ワークマン | 5,220 | 31 | 9% | 3Q | 2月6日 |
グロース | 7157 | ライフネット | 1,380 | 29 | 42% | 3Q | 2月9日 |
グロース | 4582 | シンバイオ | 631 | 29 | ▲10% | 本 | 2月9日 |
スタンダード | 3993 | PKSHA | 1,830 | 29 | ▲6% | 1Q | 2月13日 |
グロース | 6030 | アドベンチャー | 10,210 | 28 | ▲8% | 2Q | 2月10日 |
スタンダード | 6524 | 湖北工業 | 6,450 | 28 | ▲17% | 本 | 2月9日 |
各銘柄に決算を期待してポジションを持っている投資家はいるわけですが、とりわけ金額的に大きいのが上記のような銘柄群。持っている投資家が多いということは、その銘柄の決算後の株価次第で、グロース市場全体にも少し影響を与えると考えられます。個別株のイベントドリブンのようなものなので、決算発表予定日を把握しておくことは大事です。
イーディーピーやアドベンチャーなどは、最低投資単位が50万円を超えています(2/2終値の列の黄色の網掛け)。昨年10月に東証が、最低投資単位50万円以上の企業に株式分割をするよう要請しました。
最近では信越化学やファナックなどプライムの大型値がさ株が株式分割を発表しています。値がさの人気株に関しては、「株式分割期待」も事前に乗っている可能性が高そうです。
また、前回の四半期決算時に比べて株価が大きく値上がりしている銘柄(過去3カ月騰落率の列の黄色の網掛け)の場合、決算期待のハードルが高いと考えられます。株式市場は「織り込み」を進める場ですので、ポジティブサプライズ要素が小さいというだけで、特段悪くない決算でも大きく売り込まれるというリスクが高いともいえるかもしれません。
今回は、個人投資家に人気が高い銘柄の一覧と、該当銘柄の決算発表予定日を紹介しました。決算ばかりは、ふたを開けてみないと分かりません。ただし、ふたを開けて、箱の中に「サプライズ感」が入っている銘柄が「大当たり」に近い銘柄とも言えるのが中小型グロース株。2月1日時点で上場来の高値を付けている銘柄が東証グロース市場内にも14銘柄あります。
目下で株価絶好調なグロース株というわけですが、M&A総研(9552)、INTLOOP(9556)、ジャパニアス(9558)、ギックス(9219)、アズーム(3496)、グローバルセキュリティエキスパート(4417)などは、昨年以降のどこかのタイミングで発表した決算による「サプライズ感」からスター銘柄となりました。
今年はどの銘柄がスターになるか? スター発掘の目線で、ここから出る決算発表をチェックしていきましょう!
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