投資家は利上げが休止される時期に焦点を移すだろう
今年の前半相場の天王山と言われたFOMC(米連邦公開市場委員会)でパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「継続的な上昇」(複数形)の表現を維持し、3月に利上げを一時停止しないことを示唆した。また、インフレは「幾分緩和した」としながらも、「依然として高い」と指摘した。
これはタカ派の姿勢ではあるが、同時に今後の利上げの「ペース」を「エクステント」に変更し、利上げの速度から利上げの期間へと移行し、ピボットを行うことを示唆した。つまり、利上げサイクルの終了が視野に入っている可能性をほのめかしたのである。
パウエルFRB議長は、ポール・ボルカーのようなインフレファイターではなく、利上げに対して腰砕けになったアーサー・バーンズになったという解釈だ。ゼロヘッジは、「最も重要な収穫 : バーンズ2.0は、ボルカー2.0を圧倒した」とツイートした。
チャールズ・シュワブUKのマネジングディレクター、リチャード・フリンは、「投資家は利上げが休止される時期に焦点を移すだろう」と述べた。
パウエル会見での「引き締め過ぎは望んでいない。ディスインフレプロセスが始まった。FOMCは景気抑制水準へ向けてあと2回ほどの利上げを協議している」というパウエルFRB議長の発言の緩和的な部分を、市場は「もう利上げ停止は視野に入った」と解釈し、急落していた株式市場は持ち直した。米金利は低下し、ドルは売られ、ゴールドが急騰した。
S&P500CFD(15分足)
米10年国債金利(15分足)
ドル/円(15分足)
ユーロ/ドル(15分足)
ゴールドCFD(15分足)
市場は「利上げ停止が見えた(利上げはあと2回)」と喜んでいるが、バンクオブアメリカの投資ストラテジストのマイケル・ハートネットは、「市場は積極的な利上げが終わりに近づいているものの利下げはまだ見えないという<投資サイクルの最も難しい段階にある>」と、述べている。
世界金融危機(リーマンショック)前の<利上げ停止期間>は株式市場が上昇した。今のパウエルFRB議長のソフト・ピボット期待相場の裏にあるのは、リーマンショック前の利上げ停止期間の株の上昇との連想だ。
ナスダック100と米2年国債金利の推移(ドットコムバブル崩壊とリーマンショック)
直近の二つの弱気相場(ドットコムバブル崩壊とリーマンショック)を参考にすると、インフレが一段落し、金利の休止期を経て、FRBがいよいよ利下げに入ると、株式市場はさらに18~22カ月間下落を続けることになる。
つまり、FRBが利下げを行うまでの株式市場の上昇は、「死の舞踏」かもしれないのである。長期投資は危険だ。いずれにせよ、ここからの相場には予断を持たず、トレーディングベースで臨みたい。
米10年国債金利(日足)
ドル/円(日足)
ユーロ/ドル(日足)
ポンド/ドル(日足)
S&P500CFD(日足)
ナスダック100CFD(日足)
ゴールドCFD(日足)
バブルのシンメトリーの重い手
2月1日のゼロヘッジの記事『上がるものは下がる:バブルのシンメトリーの重い手』に、興味深い分析があった。以下に抜粋して紹介したい。
残念なことに、市場の自然の摂理は平均回帰であり、持続不可能なものはすべて崩壊する。これには、投機マニア、信用バブル、資産バブル、利幅、利益、売上、消費、税収、その他あらゆるものの際限ない拡大予想が含まれる。
バブルの崩壊には、よく知られた心理的な道筋がある。この過程は、否定、怒り、交渉、抑うつ、受容というキューブラー・ロスの段階を多かれ少なかれ辿るが、投機熱狂の勢いは傲慢さと過信の誇示を要求し、すなわち最初のぐらつきが「底値に違いない」とする。
また、「底が打った」「バブルが再膨張し始めた」という誤った希望も繰り返される。このパターンは、投機熱がついに冷め、バブルの再来に賭けていた人たちがついに諦めるまで繰り返される。
バブルの対称性は、まあ、面白い。1995年から2003年にかけてのドットコム株式バブルは、バブルの対称性の典型的な例であるが、他にも多くの例がある。バブルの対称性の特徴は、バブルが高騰するのに要した時間とほぼ同じ時間でバブル全体が後退することである。
ドットコムバブルの対称性
このことを念頭に置いて、現在の株式と住宅のバブルを考えてみよう。S&P500がバブルの対称となった場合、バブル以前の水準まで45%急落し、その後、投機的熱狂が徐々に鎮まるにつれて、さらに下落することが予想される。
現在のS&P500のバブルとシンメトリー
現在の住宅バブルとシンメトリー
このプロセスは、バブル崩壊とほぼ同じ期間を要することが多い。バブルが膨張するのに約2.5年かかったとすれば、バブルが弾け、市場がバブル以前の水準に戻るには約2.5年かかるのである。
出所:『上がるものは下がる:バブルのシンメトリーの重い手』 2023年2月1日 ゼロヘッジ
2月1日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
2月1日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「賞富の差の拡大、富の偏在が起こると、歴史はこうなる。グレートリセットには戦争が使われる。今はもう戦時経済に入っている」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
2月1日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
2023年相場の見通しと相場を動かす決定的要因(石原 順氏・エミン ユルマズ氏・大里 希世氏) - YouTube
楽天証券のYouTubeで、2023年1月14日(土)開催の『楽天証券 新春講演会2023』のアーカイブが公開されています。ぜひ、ご覧ください。
2023年相場の見通しと相場を動かす決定的要因(石原 順氏・エミン ユルマズ氏・大里 希世氏)
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