みなさんは株主優待のために何かの株を買おうとした時、直前で「これ本当に買って大丈夫かな…」と不安を感じた経験はありませんか? 優待目的であっても、保有している間に株価下落が続けば、結局高い買い物になってしまいますよね。
そこで本稿では経済情勢や業績動向もふまえ、人気の2月優待の中で今後も安定した成長が見込めそうな5銘柄を紹介させていただきます! また今回の5銘柄は、いずれも現行の一般NISA(年120万円)の枠内で購入して権利取得が可能です。
- イオン(8267): 高付加価値のトップバリュ製品でコスト吸収
- コメダホールディングス(3543): 体験価値の向上で値上げ浸透
- J. フロントリテイリング(3086): 固定費の削減が奏功して利益率復調
- アダストリア(2685): ターゲットを絞り込んだ店舗展開で付加価値向上
- ウエルシアホールディングス(3141): 業界最大手の資金力を生かして競合他社の取り込み進む
※本稿で紹介する銘柄の株価や優待取得最低金額、配当利回りは、2022/12/30の終値を用いて筆者が試算。過去の配当は当社HP銘柄詳細の「配当・優待」の項目で確認。
私が選ぶ業績良好の優待おすすめ5銘柄
2月優待の人気ランキングTOP30(2022年12月時点の楽天証券HPの株主優待検索より)の中から、私が選んだ5銘柄をご紹介します。判断基準は(1)増収増益か(2)株主優待が今後も続くと見込めるか(3)インフレの中でも利益率を維持できる打ち手を出せているかの3点です!
1. イオン(8267)─2月優待人気ランキング1位
銘柄名 | イオン | 銘柄コード | 8267 | ||
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株価(円) | 2,783 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
278,300 | 配当利回り | 1.29% | ||
優待内容 | 優待カード(有効期限は半期、100万円を上限として、保有株数に応じた割引率。100株以上で3%、500株以上で4%、1,000株以上で5%、3,000株以上で7%。そのほか2月のみ長期保有者には保有株数に応じた自社ギフトカードあり) |
全ての優待銘柄の中でもトップクラスの人気を誇るイオン。優待内容は、上限額の範囲で何度でも自社店舗で使える割引カード。日用品の購入などで頻繁に利用される方には、家計の支えになるうれしい優待です。そんなイオンは優待の魅力だけでなく、人気に伴う安定した成長予想も抱けそうです。
これはイオンの売上高と営業利益、および当期純利益と売上高営業利益率を併記したものです。このグラフは次の4銘柄でも同じものを使うので、見方を簡単にご説明します。売上高というのはどれだけ商品が売れたかの数字、たとえば100円の商品を売れば100円と、単純に積み上げられていく数字です。
一方で営業利益とは、この売上高から仕入れ値や、人件費や光熱費など売上を上げるための費用を引いて、正味の利益に近づいた数字です。これを踏まえ売上高営業利益率というのは、売上高に占める営業利益の割合、つまり売上高から営業に係る費用を引いて、どれだけ利益として残るかの割合の目安です。
最後に当期純利益というのが一般に「純利益」と呼ばれる数字で、営業利益からさらに営業外損益や一時的な損益である特別利益・損失や法人税などを差し引きした最終的な黒字額(これが赤字なら当期純損失と呼ぶ)のことになります。
イオンは図を見て分かるように、純粋な売上高はコロナ以降も好調です。これは小売業界トップクラスの経営体力を生かして、金融や不動産など経営の多角化を続けていて、収益源に隙が無いためと考えられます。
途中でコロナ禍の打撃で利益率が落ち込みましたが、その後の原材料高や円安の逆風の中でも、「トップバリュ プレミアム生ビール」など高付加価値のPB(プライベートブランド)商品の販売に成功しており、利益率を持ち直しています。値上げを極力抑えたりなどお客様のつなぎ止めにも注力しているので、優待が今後廃止される可能性も低いと私は考えています。
2. コメダホールディングス(3543)─2月優待人気ランキング6位
銘柄名 | コメダHD | 銘柄コード | 3543 | ||
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株価(円) | 2,485 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
248,500 | 配当利回り | 2.09% | ||
優待内容 | 100株以上で1,000円分の自社電子マネー。一部対象外店舗あり。300株以上かつ2月末時点で3年以上継続保有なら1,000円分増。 |
こちらもブランド力が強い銘柄。優待内容は自社店舗で使える電子マネー。くつろぎを重視したコメダ珈琲などの店舗で、お得にリッチな時間を過ごせます。そのコメダの業績も堅調です。
コロナ禍でも大きく利益を落とさず、利益率も堅実な推移です。足元では光熱費や原材料高などコスト負担が重いですが、ただ値上げするのではなく、付加価値をつけたモーニングサービスの販売などで体験価値を重視しつつ利益率向上に取り組んだ結果、値上げをしても客足は維持して売上高は続伸させています。
もとよりコメダ珈琲の魅力は「くつろぎ」の空間にあるので、今回のように体験価値に配慮しながら値上げをしていくことで、顧客ニーズと寄り添いながら今後も利益率を維持していける見込みが高いと考えます。
3. J. フロントリテイリング(3086)─2月優待人気ランキング9位
銘柄名 | J. フロントリテイリング | 銘柄コード | 3086 | ||
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株価(円) | 1,201 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
120,100 | 配当利回り | 2.50% | ||
優待内容 | 「大丸」「松坂屋」の10%割引の買物優待カード。株数に応じて限度額が変動。100株以上で年50万、500株以上で年100万、1,000株以上で年200万、以降1,000株ごとに100万円ずつ増え、上限は4,000株以上で年500万。そのほか希望者はパルコでの優待クレジットカード作成も。 |
大丸・松坂屋が主力事業で、日経平均株価にも採用されている、日本の百貨店事業を代表する銘柄のひとつです。愛称はJFR。優待はイオンと同じように、大丸・松坂屋にて限度額の範囲で何度も使える買物優待カード。
少しぜいたくな商品を選べる百貨店で、10%OFFはうれしい割引率です。大丸・松坂屋を始め百貨店はコロナ禍でとりわけ苦戦しましたが、その中で底堅そうなのがこの銘柄です。
コロナ前の業績には未達ですが、利益率は着実に持ち直しています。これは自身が「最重要施策」とうたう「経営構造改革」の一環で、業務委託領域や賃貸物件の見直し、物流の効率化など固定費の削減を推進しているためと思われます。
百貨店事業の重要材料である海外観光客のインバウンドも、2022年10月に日本政府が水際対策を緩和して以降、売上の押し上げ材料になっています。同社が1月に入り発表した12月の売上速報では、前年比で9.5%の売上増でした。
足元では中国政府がゼロコロナ政策を見直して自国の入国制限を緩和し始めた一方で、日本政府が中国からの入国者に入国時検査を課すなど引き締めを強め始め、中国観光客の先行きは不透明になっています。
しかしここまでの売上の持ち直しは中国以外からの訪日客が主に寄与したもので、そちらは現在のところ再引き締めもなく順調です。コロナ前ほどの本格回復はまだ難しそうですが、中国からの入国制限だけが原因で急に売上が落ち込むという可能性は低いと思われます。
また直近12月の決算短信の中でも、アプリ開発などを通じて顧客との関係性やタッチポイントを重視していると公表しているのもポイント。つまりは顧客の大きな来店動機である株主優待が今後廃止される見込みが小さいということなので、優待狙いでの長期保有もしやすい銘柄です。
4. アダストリア(2685)─2月優待人気ランキング18位
銘柄名 | アダストリア | 銘柄コード | 2685 | ||
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株価(円) | 2,345 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
234,500 | 配当利回り | 2.35% | ||
優待内容 | 自社グループ店舗(一部除く)で使える株主優待券。100株以上で3,000円相当、1,000株以上で10,000円相当、10,000株以上で20,000円相当。 |
駅前の「GLOBAL WORK」や「niko and ...」などオシャレな衣料店で有名なアダストリア。優待は自社店舗で利用できる割引券です。こちらも原材料高の影響は受けていますが、それでも業績の先行きは堅調そうです。
売上高とともに利益率も、おおかたコロナ前の水準に回復しています。人流の回復と噛み合う形で外出用のファッション服の需要も高まり、上海のロックダウンなどの悪影響を受けつつも、売上高はコロナ前以上に。
円安や原材料高の影響を正面から逆風で受ける業種でもありますが、値引き販売を抑制したりしたことで、利益率も改善しています。コスト高は引き続き注視する必要がありますが、ロサンゼルス発の大型ブランド「フォーエバー21」を日本向けにローカライズして展開し始めるなど、商品の高付加価値化にも力を入れ続けています。
今後もファッションブランドの大手として成長し続けていくことが予想されます。
5. ウエルシアHD(3141)─2月優待人気ランキング24位
銘柄名 | ウエルシアHD | 銘柄コード | 3141 | ||
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株価(円) | 3,075 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
307,500 | 配当利回り | 1.01% | ||
優待内容 | (1)自社グループ買物券(2)新潟県産コシヒカリ(3)選べるグルメ(4)Tポイント付与のいずれかから選択。買物券とグルメとTポイントは100株以上、500株以上、1,000株以上でそれぞれ3,000円、5,000円、1万円相当。コシヒカリは順に5kg、10kg、20kg。 |
ドラッグチェーン最大手として「ウエルシア」を中心に数多く店舗を展開する銘柄。優待はいくつかの選択肢から選べるもので、自社グループ買物券や新潟県産コシヒカリ、さらには「Tポイント」の付与まで選べます。
QUOカードも使い道の広さで人気の優待ですが、Tポイントも使える場面は広いので、普段ウエルシアを利用しない方でも得する内容です。業績も業界最大手の経営体力を生かして、うまくコスト高をこなしながら増収増益を続けています。
コロナ以降も売上と利益を伸ばし続け、水道光熱費の増加のほか、薬価報酬改定の影響で利益率に押し下げ圧力がかかったものの、自動発注の推進など店舗業務の効率化により、費用の膨らみは最小限で持ちこたえています。
売上をけん引していたのは、コロナ第7波の感染拡大で需要が急激に増えた医薬品部門でしたが、これからコロナが退潮しても、2022年10月の決算短信時点で医薬品の売上の3分の2の売上を誇る化粧品が医薬品に代わり売上を伸ばす見込みなので、全体としてバランスの良い伸びを期待できます。
その上でウエルシアの最大の強みは、やはり業界最大手ゆえの経営体力です。近年は薬価改定で薬価が下がり続ける傾向のため、多くの薬局の経営が厳しくなってきています。その中で中小薬局の窮余の一策が、大手薬局の傘下に入ることであり、わけてもウエルシアは競合他社の取り込みを活発に続けています。
2022年も「コクミン」や「フレンチ」などの薬局を子会社化して、業界最大手の地位をさらに強固にしています。今後ドラッグストア業界で経営統合が進んでいけば、ますますウエルシアの安定した成長が続いていくと思われます。
直近1年で株主優待が新設された3銘柄
最後に、新たに株主優待を始めた銘柄をご紹介します。前述の視点とは若干異なりますが、株主優待新設銘柄であれば、「優待目的で投資したのにすぐ廃止されてしまった…」という可能性はかなり低くなります。
また、株主を増やしたいという企業側の意思表示ともいえるので、一考の価値はあると思われます。2月優待銘柄は2022年12月時点で129銘柄(楽天証券HPの株主優待検索より)あるのですが、その中で、ここ1年で2月優待に仲間入りしたのは下記の3銘柄です。
銘柄名 | 買取王国 | 銘柄コード | 3181 | ||
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株価(円) | 1,573 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
157,300 | 配当利回り | 0.76% | ||
優待内容 | 100株以上で自社買取30%アップ券。加えて100株以上なら自社会員スマホアプリに1,000ポイント付与、500株以上なら3,000ポイント付与。 |
銘柄名 | エルテス | 銘柄コード | 3967 | ||
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株価(円) | 817 | 権利発生株数 | 500 | ||
優待取得 最低金額(円) |
408,500 | 配当利回り | 0.00% | ||
優待内容 | 株主専用Webサイトでの株主優待ポイント付与。500株で3,000ポイントから。保有株数に応じてポイント数が変動。 |
銘柄名 | 東名 | 銘柄コード | 4439 | ||
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株価(円) | 1,726 | 権利発生株数 | 100 | ||
優待取得 最低金額(円) |
172,600 | 配当利回り | 0.41% | ||
優待内容 | 100株以上でQUOカード(500円分) |
いかがでしたでしょうか? 楽天証券のHPでは銘柄詳細のページの「業績」ボタンから、大まかに近年の売上や利益の推移をグラフで確認できます。なお、株式投資では将来の利益見通しが最も重要なのですが、この「業績」情報では外部アナリストの予想の平均値がコンセンサスとして出ています。
コンセンサスが会社予想の先(2024年2月期)まで出ている場合は、売上や営業/当期利益が極端に右下がりの銘柄は購入を控えるなど、買い注文を入れる前に簡単に業績予想をチェックして、株主優待銘柄選びにお役立てください。
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