1月雇用統計の予想

 BLS(米労働省労働統計局)が2月3日に発表する1月の雇用統計は、市場予想によると、失業率は1ポイント上昇して3.6%、NFP(非農業部門雇用者数)は19.0万人増加にとどまり、2021年1月以来の20万人割れとなる可能性があります。

 平均労働賃金は、前月比は+0.3%で横ばい。前年比は+4.3%で、2022年3月の5.6%をピークに緩やかに下降を続ける予想。

「インフレ率を下げるには、雇用市場の熱を冷ます必要がある。」これがFRB(米連邦準備制度理事会)の考えです。ここにきてようやくFRBの利上げ効果が表れ始めました。とはいえ、パウエルFRB議長が「適正」と考える雇用者数は約10万人増程度。1月はその倍近い19万人増の予想なので、FRBの仕事はまだ道半ばということになります。

 しかし、マーケットでは、「利上げは3月で終了、今年後半からは利下げ」との見方が広がりつつあります。FRBは「政策金利の水準は長期間、高い状態を維持する必要がある」と述べて、利下げを否定していますが、今回の雇用統計がよほど強い数字でない限り、利下げ観測が一気に強まることになりそうです。

こんなに求人あるなんて…すごいな! 米雇用市場

 米労働省が発表したJOLT(求人労働移動調査)によると、米国の求人件数は1045.8万件。米国の総失業者数を440万人超上回る状況で、1人の失業者に対して1.74もの求人があることになります。

 しかし、求人倍率は、失業率と比べると高いのですが、就業者数と比べた場合それほど高いわけではありません。求人数が増えているのは、求人総数の増加によるものではなく、転職者の増加が大きな理由です。

 つまり、好景気時におけるようなネットベースでの雇用創出は起きていない可能性が高い。米国の労働市場は「逼迫(ひっぱく)」しているというよりは「流動化」しているのです。

 求人件数が増えている理由の一つに、広告のオンライン化もあります。料金を成功報酬にするケースも増えていて、会社はより安いコストでたくさんの広告を出せるようになりました。

「当社ではいろんな仕事に挑戦できます」は、大概の場合「誰もやりたくない仕事を押しつける」ということですが、実際には募集していない「釣り広告」をばらまいて優秀な人材を手広く獲得しようとする企業もあり、これも見かけの求人数を多くしています。

 インフレが上昇しているのに給料が上がらない「実質賃金のマイナス」がなかなか解消されないことは、求人広告の多さイコール求人総数の多さではないことを示しています。もし企業が本当に人手不足になっているならば、実質賃金はプラスになるはずです。

 日本でも実質賃金の低さが問題となっています。賃金が上がらない理由は多くありますが、その一つに、労働者が「転職したがらない」ことが指摘されています。しかし、日本でも最近はTVやネットで転職サイトや転職エージェントのCMを1日のうち必ず数回は目にするようになりました。日本の終身雇用が制度疲労を起こす中で、転職の需要が高まっています。

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