朝食のパン、行きつけの定食屋、毎月の電気代…身の回りのモノやサービスの価格が上がり、家計を圧迫している。食品値上げを中心に、この1年の動きを振り返ってみよう。

「記録的な値上げ」が続いた2022年

 2022年は、記録的な値上げが続いた1年だった。帝国データバンクがまとめた食品メーカーの価格改定動向調査によると、ほぼ毎月1,000品目以上の食品が値上げし、10月には約6,700品目とピークを記録。1年間で値上げした食品の合計は、2万822品目に上った。

値上げの理由は、大きく三つ

 値上げの主な理由は、原材料高、原油高、円安の三つ。

 2022年4月から原材料価格の高止まりが続き、8月以降は原油高が物流費やエネルギーなどさまざまなコスト増につながった。さらに、急激な円安進行が決定打となり、年後半は2度目・3度目の値上げに踏み切る企業もあった。

 

どんな商品が値上げした?

 ピークの10月に値上げした主な食品は、ハムやソーセージ、マヨネーズ、ビールなど。

 

 年末にかけては購入頻度が高く日持ちがしない乳製品の値上げが多かった。生活費がぐっと高くなったことを実感した人も多いのでは。

2023年は、より大きな値上げの波がやってくる

 帝国データバンクによると、2023年1~4月に値上げ予定の食品は、前年同期比1.6倍の約7,400品目。値上げラッシュの波は収まることなく、前年以上に大きくなる見込み。 

 帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏は「企業が価格に転嫁しきれていないコストはまだ多い」と指摘。「企業努力で吸収しきれない分が、再値上げ、再再値上げといった形でずるずると続きそうだ」とみている。

日本マクドナルドは、1年間で3回ハンバーガーの値上げを実施した。

 足元では、菓子やパンなどで価格を据え置き容量を減らす「実質値上げ」も増えている。4月以降は全国で電気料金の大幅な引き上げも予定されており、家計が物価上昇を実感しやすい年となりそうだ。

今後の焦点は賃上げ

 値上げ要因が解消されない中、注目したいのは賃上げの動向だ。物価上昇とともに賃上げが進めば、経済が活性化し良い循環が生まれるもの。現状はそうならず、急速な物価上昇に賃上げが追いついていない。実質賃金が目減りしている点が課題といえる。

 こうした課題を解決するため、政府は企業に積極的な賃上げを要請。これに応える企業も相次いでいる。

報道を基に編集チーム制作

 焦点は、3月に山場を迎える春闘(春季労使交渉)。大手企業トップから賃上げに前向きな発言が相次ぐなど機運は高まっているものの、先行き不透明な環境は続く。

 コスト上昇分を価格に転嫁しきれていない中小企業にとっても、原資の確保は大きなハードルとなる。「インフレ率を超える賃上げ」で、経済の好循環を実現できるか。その行方に注目が集まっている。

投資家目線で賃上げを考える

 賃上げを投資家目線でみてみると、銘柄選びの参考にもなる。賃上げが報じられた1月11日、ファーストリテイリングの株価は一時1.8%高まで上昇した。

 同社は、海外に比べて見劣りする国内賃金を引き上げることで、優秀なグローバル人材を確保する狙い。さらに、昨年は主力商品の値上げを実施しており、戦略的な「値上げと賃上げ」で競争力を高めようとする姿勢が好感されたとみられる。

 企業が環境変化にいち早く対応できているか、経営陣が人材という経営資源をどのように捉えているかを知ることも、投資家として大事な視点だ。色々な角度から、値上げラッシュについて考えてみよう。