日銀後任人事と政策修正、想定すべき三つのシナリオ

 日本銀行が昨年12月19~20日の金融政策決定会合で大規模金融緩和の一部修正を行って以降、東京株式市場では日銀の動向が注目点となっています。

 政策修正による金利上昇から「グロース(成長)株売り、銀行株買い」の動きが強まりました。

 さらに1月17~18日開催の政策決定会合では金融政策再修正の有無が市場の大きな関心の的となりました。

 18日に公表された会合結果は、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を軸とした大規模な金融緩和策について現状維持をするとの内容でした。

 これを受けて、18日の日経平均株価(225種)は、後場に買い戻しとみられる動きから急伸し、終値は前日比652円44銭高(+2.50%)の2万6,791円12銭となりました。

 日経平均株価は18日時点で年明けからの騰落は終値ベースで「7勝3敗(10営業日)」となりました。昨年末の終値2万6,094円50銭から700円近く値上がりし、比較的強い動きを示しました。

 しかし、投資家の先行きに対する見方は日銀の緩和修正による相場下落への不安感が強いものと思われます。

 次の政策決定会合は3月9~10日です。近づくにつれ、再び緩和政策再修正の有無が注目を浴びる可能性があります。

 もう一つの日銀に関する注目ポイントは「正副総裁の後任人事」です。

 黒田東彦総裁は4月8日に、雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は3月19日にそれぞれ任期満了を迎えます。政府は2月10日を軸に国会に後任候補を提示する方向で調整していると報道されました。

 後任の正副総裁は今後の金融政策のかじ取りを担うことになります。候補者が判明するやいなや、株式市場では「後任はタカ派か?ハト派か?」、過去の発言や功績などから正体を探ることになるでしょう。

 日銀が株式市場を動かす要因となる局面は続くと考えるのが正解に近い印象です。日銀の金融政策は総裁や副総裁のパーソナリティに左右されるわけではないものの、それでも市況に激しい渦を巻き起こすことはほぼ確実です。

 ここ数年はこれほど日銀が株式市場を左右する要因となったことはなく、不確実要因が一つ増えたと言っても過言ではないでしょう。

 外部環境についてもドル/円相場の動きが急になると、個別銘柄にかなりの影響を及ぼします。3月の日銀金融政策決定会合に向けて、いくつかのシナリオを想定しておきます。

(シナリオ1)ハト派後任総裁候補 & 3月会合で「政策変更なし」
→ 急な変化はないとされ、ここまでの「グロース株売り、銀行株買い」と正反対の動きに

(シナリオ2)タカ派後任総裁候補 & 3月会合で「政策変更なし」
→ 「今後政策変更必至」と理解され、株式市場は全般リスクオフに

(シナリオ3)後任がタカ派ハト派にかかわらず、3月会合で「金利上限の引き上げ」など政策変更
→ 「グロース(成長)株売り、銀行株買い」の動きが再び強まる

配当取りは保守的な物色に、地味な建設株に脚光

 例年1-3月は期末配当を受け取るために株式を買う動きが多くなるため特に高配当銘柄への物色が強まります。

 しかし、今年は日銀人事と日銀金融政策決定会合が年度末にあるため(3月期末配当権利付き最終売買日は3月29日)、例年と少し異なる動きが見られるかもしれません。

 今年は日銀イベントによる急な株価の変動を嫌い、配当取りだけを狙う保守的な物色に傾く可能性があります。

 そうした中で、注目したいのはこれまで価格変動が少ない一方で、それなりに流動性があって売買が容易、高配当の銘柄です。ドル/円相場が変動しても影響は少ないと思われます。

 東証33業種を見回すと、その条件の多くに「建設株」が合致している印象です。今回は建設株セクターから比較的高配当で、10万円で投資可能な銘柄を選別します。

10万円で投資できる高配当建設5銘柄

*予想配当利回りは1月18日終値で計算

安藤ハザマ(1719・プライム)

 ダム、トンネルなど大型土木を得意とする準大手ゼネコンです。予想配当利回り4.7%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三井住友建設(1821・プライム)

 超高層マンションに強みを持つ準大手ゼネコンです。予想配当利回り4.3%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 東急建設(1720・プライム)

 東急系の中堅ゼネコンで渋谷駅前や東急沿線開発案件に強みを持ちます。予想配当利回り5.6%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 戸田建設(1860・プライム)

 病院、学校の建築に強い準大手ゼネコンです。予想配当利回り3.9%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ピーエス三菱(1871・プライム)

 大型橋梁(きょうりょう)、都市立体交差化工事を得意とする中堅ゼネコンです。予想配当利回り4.9%

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)