12月のビットコインイベント

NEW! 12月12日 FTX前CEO、サム・バンクマン・フリード氏、バハマで逮捕
NEW! 12月16日 Mazars、Binanceなど暗号資産関連の監査を停止
NEW! 12月19日 イーロン・マスク氏、Twitter CEO辞任の可能性

*2022年の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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12月の振り返り

12月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

12月のBTC(ビットコイン)相場は続落

 FTXの破綻後、沈黙を続けていたSBF前CEOがイベントで登壇、その後、TVなどにも出演、米下院公聴会にも出席の意向を示した。

 同氏が話した内容についてはさまざまな意見が出回ったが、渦中の本人が自分の言葉で話すことで、市場の不安心理は徐々に後退していった。

 同時にイエレン財務長官やゲイリーSEC委員長、ベーナムCFTC委員長など当局者の指摘により、今回の問題はバハマなどに本社を置き米国などの規制対象外にある交換所だからこそ発生した案件だという認識も広がった。

 WSJ(米紙ウォールストリートジャーナル)やロイターなどの記事やCNBCのインタビューなどをきっかけに、本社の所在を明らかにしていないBinanceに対する風当たりが強くなった。

 これに対し同社のCEO・CZ氏は、SNSで市場参加者の質問に答えるAMA(Ask Me Anything)を開催。本人が自分の声で答えることで市場に安心感が広がり、BTCは一時1万8,000ドルを上抜けた。

 しかし、同社の保有資産の監査を担っていたMazarsが暗号資産に関する監査を停止したことで、市場の不安が再燃、BTCは1万7,000ドルを割り込んだ。

 さらに、イーロン・マスク氏がTwitter社のCEOを辞めるべきかどうか、自身のTwitterで尋ねたところ「辞任に賛成」が過半数を上回り、後任が見つかり次第、辞任する意向を示したことで、同氏が推しているドージコインが下落。BTCも1万6,000ドル台前半に値を下げた。

 その後もソラナなどアルトコインの不振が続いたが、BTCは1万6,000ドル台で下げ渋っている。

 一方、日本銀行が長期金利の変動許容幅(いわゆるYCC:イールドカーブコントロール)を0±0.25%から0.5%に拡大。実質利上げに踏み切ったことで円高が大きく進み、円建てBTC価格は下落、年初来最安値水準での越年となった。

1月の相場見通し

BTC相場の変動要因

 新年の相場を見通すにあたり、まずBTC相場の変動要因から説明したい。売買取引において売りと買いは常に同数になる。ここで価格が一定だと、売れ残りや売り切れが発生する。

 そこで、価格を変動することによって、売りと買いの数を同数とする仕組み、これが市場の機能だ。最近の言葉で言えば、ダイナミックプライシングといったところか。そうするとおのずと、BTCに限らず市場における価格の決定要因は「需給」だということが分かる。

供給面で見たBTC相場

 BTC市場における需給を考えると、実はBTCの供給であるマイニング報酬は一定だということに気づく(もちろん、そのマイナーが手放すタイミングで短期的には乱高下する)。

 そして、そのマイニング報酬は4年ごとに半分になる。その結果、BTC相場は4年サイクルで上下を繰り返す傾向が出てくる。

 具体的には、半減期直後はマイナーの採算が悪化、投げ売りや混乱が生じ価格は低迷するが、徐々に供給減が効いてきて急騰を始め、半減期から1年~1年半後にピークを迎える。

 そしてバブルが弾けて急落、半減期から2年~2年半後にボトムを付ける。そこから次の半減期に向けてじりじりと値を戻していく。

半減期を起点にしたBTC/USD推移

注:ピークを合わせるため2016年は2020年の1/4.3、2012年は2020年の1/13.5にスケールダウン
出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 上図は過去3回の半減期(2012年、2016年、2020年)を1としてBTCがその後、何倍になったかの推移。ただし、ピークを2020年の半減期後の動きに合わせるように、2012年と2016年とはスケール調整している。

 これで見ると、2012年は半減期から777日、2016年は888日でボトムを迎えており、今回は昨年11月の安値時点で924日。

 昨年はこの2年~2年半というパターンから前がかりに、半減期~2年後の6月の安値をボトムと考えてしまったが、その半年後、FTXショックで11月にもう一度安値を更新した。

 これが今回の大底かどうかはまだ断定はできないが、日数的に大底だった可能性が高く、そうでなくともこの1月か2月には大底を迎えると考えている。

需要面で見たBTC相場

 一方で需要面ではどうか? BTCの需要はさまざまだが、最も大きな要因は米投資家を中心としたヘッジ需要だろう。

 2020年の新型コロナショック後の、史上最大の財政支出と金融緩和に不安を覚えた投資家が、インフレヘッジとしてポートフォリオの一部にBTCを組み込み始め、2021年のブームをひき起こした。

 そして、2021年11月のテーパリングによる金融政策の正常化によりヘッジ需要が後退し、相場は下落に転じた。そして2022年12月の利上げペース鈍化で下げ止まっている状況だ。

 年央に利上げが打ち止めになれば徐々に反発を始め、年末に利下げが見えてくれば一段と上昇するイメージだ。

FRB利上げパターン

出典:楽天ウォレット作成

 このFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策で言えば、日本時間2月2日に結果が発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅が、25bpとなるか50bpとなるかが今来月の大きな材料となる。

 なぜなら、FRBが利上げを打ち止めする水準、いわゆるターミナルレートがどの水準になるかが、今回のFOMCである程度見えてくるからだ。

 現時点のFF金利が4.375%(4.25~4.5%)。これに対し、カシュカリ・ミネアポリス連邦準備銀行など、あと100bpの利上げを見る人や、ブラード・セントルイス連銀総裁など、あと75bpの利上げを見る人、FF先物市場など、あと50bpの利上げを見る人たち(若干、上昇中)などに分かれている。

 想定されるそれぞれの利上げのパターンは上記の通り。今回50bpであれば、最終的に75bp以上の利上げがほぼ確定し、BTCには逆風になる。逆に25bpであれば、最終的にどうなるかは分からないが、2回連続の利上げ幅縮小ということを好感し、BTCは上昇する可能性がある。

FTX破綻の余波

 もう一つ需給面で大きな影響をもたらすのがFTX破綻の余波だ。先月も申し上げたように、問題の一つがバハマなどに本社を置くグローバルな交換所が、G20やFATF(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)加盟国に課せられた規制の対象外となっている点だ。

 これに対しBinanceが中心となって、顧客の預かり資産をきちんと管理していることを示す「Proof of Reserve」と呼んでいる残高証明を提示する動きが出たが、法的に何のひもづけもない暗号資産の残高の監査証明が独り歩きすることを恐れてか、同社の監査法人が暗号資産の監査を停止、信用不安が再燃した。

 結局、我々の社会秩序は公権力による強制力によって守られており、そうした縛りがなければ自発的にどんな安心材料を提示しても100%懸念を払しょくすることは難しいわけだ。

 言い方を変えると、BTCは非中央集権を実現したが、暗号資産業界はそのような奇跡のエコシステムを持っているわけではない。FTXの突然の破綻でその事実を目の当たりにした。

 ただし、米当局がバハマ当局に依頼して、バハマに本社があるFTXのSBF前CEOを逮捕し、米国の法律で訴追したことは、そうしたグローバルな交換所も米国人と取引する限りにおいては米国の規制の対象であるという前例を作ったという見方もできる。

 ただ、中央銀行という最後の貸し手が存在せず、金融当局による事態収拾も期待できない暗号資産市場においては、こうした信用不安が長引く可能性が高い。

資金流出

 こうした市場心理への影響に加えて、グローバルな交換所やその余波を受けたDeFiからの資金流出も需給の悪化要因となる。BTCはアルトコインの取引やグローバルな交換所やDeFiへの証拠金差し入れによく使用される。

 すなわち、暗号資産業界内での決済に使用されている。しかし、FTXの破綻により、そうしたグローバルな交換所からの出金が相次ぎ、デリバティブ取引の出来高も減少している。

 ただし、いずれそうした出金は一巡し、NFTなどWeb3関連での決済需要が盛り上がることが期待されるが、年前半はそうした資金流出が需給悪化要因となりかねない。

 このように需給面で見ると、BTCはそろそろ底を打っていそうだが、まだ上昇はおぼつかず、安値圏でのもみ合いが予想される。

 2月のFOMCでの利上げ幅が50bpとなったり、さらなる信用不安が拡大したりすれば、一段の安値もあり得る状況だ。ただし、仮に11月の安値を更新しても、その辺りが相場の大底となりそうだ。

テクニカル面で見たBTC相場

BTC/USD一目均衡表

出典:Trading View

 テクニカル面で見ると、BTC市場は2021年11月にピークアウトして以降、一目均衡表(昭和初期に細田悟一氏:ペンネーム:一目山人氏が完成させた相場分析手法の一つ)の雲の下で低迷してきた。このFRBの金融緩和からの転換から始まった下降トレンドから抜け出そうと何度もチャレンジし、一時的に雲を突き抜けるものの、何度も跳ね返されている。

 昨年11月もFRBが利上げ幅を縮小する意向を示し、金融引き締めフェーズからの脱却をテーマに、一目の雲を一時突き抜けたが、FTXの破綻で再び雲の下に落とされた。

 12月に入り、そのFTXショックが落ち着き、再び雲の中に入るとも、今度はBinanceを巡る不安から雲の下に落とされている。

 この雲を上抜けすることがBTC相場が下降トレンドから脱する第一歩となるのだが、昨年の相場を見ると、雲の上抜けをトライしては失敗し、レンジを切り下げる展開が続いている。

 その後、しばらくその水準で値を固めて再度上抜けをトライするパターンだ。1月に入り雲の下限を若干上回っており、最終的に跳ね返されるかは不明だが、まずは再度上抜けをトライしそうだ。

アノマリー

BTC/USD月次騰落一覧

 上図は月次のBTCの騰落図だ。赤が陰線、青が陽線で、先月は陰線(9月)から陽線(10月)に転じ再び陰線(11月)に転じた場合、もう1カ月陰線が続くパターンが多いと紹介した。

 今月は、陰線が2カ月続いた過去15回中、翌月陽線に転じたのは5回で、陰線が続いたのは10回。また1月は過去12年で陽線6回、陰線6回と五分五分。アノマリー的には1月もあまり強気になれない。

結論

 総合すると1月のBTC相場は引き続き安値圏でのもみ合い推移を続けそうだ。11月の安値を更新するかしないかは微妙だが、安値を付けるにしても1月か2月には大底を付け下げ止まると考える。

 ポイントは日本時間2月2日のFOMCで、利上げ幅が25bpならBTCは反発、50bpならもう一段の安値もあり得る。また、信用不安がくすぶる中、上値余地は限定的か。

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

11月28日 BlockFi、チャプター11申請
11月11日 FTX、チャプター11申請
11月9日 Binance、FTX買収合意も翌日撤回
11月7日 Binance CZ氏、FTT売却予告
10月19日 リブラの流れをくむAptos取引開始
10月4日 イーロン・マスク氏、Twitter社買収再開
9月21日 ソシエテ・ジェネラル、BTCカストディ参入
9月15日 イーサリアム「マージ」無事通過
9月12日 フィデリティ、BTCリテール参入
8月24日 イーサリアム「マージ」正式決定、9月15日に決まる
8月12日 ミキシングサービス・トルネードキャッシュ開発者、蘭当局が逮捕
8月11日 BlackRock、BTC私募投信提供開始
8月2日 MicroStrategy、マイケル・セイラーCEO退任、会長に
7月20日 テスラ社、保有ビットコインの3/4を売却済
7月14日 レンディング大手Celsius Network、破産申請
イーサリアム、アップデート「マージ」予定日9月19日に決まる
7月6日 取引アプリVoyager Digital、破産申請
7月1日 交換所大手FTX、レンディング大手BlockFi救済で合意
ヘッジファンドThree Arrows Capital、破産申請
6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ
6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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