年初の取引に投資家の思い表れる?

 新年最初の取引となる大発会にはその年の投資家の思いが表れるとされます。1月4日(水)の大発会を迎えた東京株式市場の日経平均株価(225種)終値は前年末比377円64銭安の2万5,716円86銭でした。

 4日は、昨年最後の取引、12月30日の大納会終値から大幅に下落して始まりました。多くの投資家を失望させ、東証プライム市場の売買高・売買代金上位銘柄を見ても値を下げた銘柄が大半でした。

日銀事実上の利上げで、銀行株跳ねる

 その中で気を吐いたのが「銀行株」です。日本を代表するメガバンク3社の株価は文字通り逆行高となりました(三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は前年末比4.2%上昇、三井住友フィナンシャルグループ(8316)は1.5%上昇、みずほフィナンシャルグループ(8411)は3.0%上昇)。

 メガバンクだけでなく、他大手行、地方銀行株にも上昇するものが多く見られ、昨年来高値を更新する銘柄もありました。

 銀行株が動意づいたのは、日本銀行が昨年12月20日に大規模金融緩和策を一部修正したことがきっかけです。

 日銀はイールドカーブ・コントロール(政策金利となる短期金利の誘導目標に加え、長期金利でも誘導目標を定め、国債買入れを実施すること)の運用見直しを行い、長期金利の変動幅を従来の「プラスマイナス0.25%程度」から「プラスマイナス0.5%程度」に拡大することを決めました。

 市場では、長期金利が変動する上限を引き上げたことが事実上の利上げと捉えられました。低金利で収益が圧迫されていた銀行株にとっては、長期金利の上昇が運用環境の改善や貸し出しでの利ざや拡大につながるとして買われた格好です。

 この先も日銀のスタンスが「大規模緩和修正」に傾くのかどうかが関心の的となるでしょう。米欧の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)やECB(欧州中央銀行)理事会のたびに利上げや保有する資産の圧縮の動向が昨年、注目されたように、今年は日銀の金融政策決定会合が大きな話題になり、銀行の株価動向に影響を与える可能性があります。

【日銀金融政策決定会合スケジュール(2023年前半)】
1月17~18日
3月9~10日
4月27~28日
6月15~16日

メガバンクなど銀行5銘柄

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306・プライム)

 国内最大の金融グループ。タイのアユタヤ銀行などを傘下に持ち、東南アジアで個人向け金融事業を強化している。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三井住友フィナンシャルグループ(8316・プライム)

 三井住友銀行、SMBC日興証券、消費者金融「プロミス」を展開するSMBCコンシューマーファイナンスなどを擁する3メガバンクの一角です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

みずほフィナンシャルグループ(8411・プライム)

 富士、第一勧業、日本興業の旧3行が前身。傘下のみずほ証券を通じて、楽天証券に出資。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

りそなホールディングス(8308・プライム)

 首都圏と関西に基盤を持ち、傘下にりそな、埼玉りそな、関西みらい、みなとの4行。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コンコルディア・フィナンシャルグループ(7186・プライム)

 地銀首位級の横浜銀行と東日本銀行を擁しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

EV急速充電器関連も買い集まる

 1月4日付の日本経済新聞に「EV急速充電器 規制緩和」の見出しが躍りました。政府が小型EV(電気自動車)を数分で充電可能な高出力の充電器の普及を目指し、年内をめどに高出力機器などに対する規制を大きく緩めるとの内容です。

 記事ではさらに、新車販売に占めるEVの比率は日本が低水準である一方、先行する中国やドイツ、韓国は日本より普及がかなり進んでいることも指摘していました。日本でEVの普及が遅れた背景には充電インフラの脆弱(ぜいじゃく)さがあると言われ、政府がEV産業の競争力を高めるため環境整備にようやく動き出したということになります。

 このニュースは関連銘柄の株価動向に反応があり、EV用急速充電器を手掛ける「東光高岳(6617)」の株価は4日、前年末から11%超の値上がりとなったほか、EV充電スタンドに注力する「モリテックスチール(5986)」がストップ高まで買われました。

 全体相場が軟調に推移する中でも、報道をきっかけにEV急速充電器関連の株価が伸びたのは投資家の買い意欲が根強いことを示したとも理解できます。EVの普及を疑問視する向きはほぼなく、国策に乗る形で材料株として注目されそうです。

EV急速充電器の5銘柄

東光高岳(6617・プライム)

 計量事業と電力機器事業が2本柱で、EV用充電インフラ製品を手掛けています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

新電元工業(6844・プライム)

 電源メーカー大手の一角です。数多く急速充電器を展開。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

モリテックスチール(5986・スタンダード)

 特殊帯鋼販売と板金加工などが主力です。EV充電スタンドを製造しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日東工業(6651・プライム)

 電設資材大手。EV充電設備事業の強化を進めています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ニチコン(6996・プライム)

 車・家電用コンデンサー製販が主力。成長戦略としてEV用急速充電器など充電インフラ拡充を図る。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)