【編集注】
■この記事は、2021年11月に初回公開されたものです。トウシル編集チームが、2022年12月20日現在の情報に合わせて修正・編集しています。
■記事の内容は、現行の一般NISA利用者を対象にしています。2024年1月から始まる新NISAでは、ロールオーバーが不要になります。
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■2022年ロールオーバーの申込期限は、金融機関により異なります。楽天証券は2022年12月30日(金)15:00まで。

ロールオーバーとは何か?

 2018年にNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で投資した株式などは、非課税期間が2022年末で終了します。

 これに対応する方法として、以下の三つがあることは前回ご案内しました。

  1. 2022年中の非課税期間内に売却する
  2. 何もしない(2023年以降は通常の口座へ移管)
  3. ロールオーバーする

 今回は、この三つのうち「ロールオーバー」をするべきかどうかの考え方についてお伝えしていきたいと思います。

 ロールオーバーとは、2023年のNISA非課税枠を利用して、2018年にNISAで購入して保有し続けている株を、さらに2023年からの5年間非課税とするための手続きです。

 2023年も新たに120万円の非課税枠があります。通常は、手持ちの金銭を使って、NISA口座にて投資する株を購入するのですが、2023年の非課税枠を用いて、以前からNISA口座で保有している株を非課税のまま持ち続けることができます。

 つまり、今であれば2018年にNISA口座にて投資した株の非課税期間は2022年までですが、ロールオーバーすることにより、さらに5年間延長して2027年まで非課税の恩恵を受けることができるのです。

 一言でいえば、ロールオーバーは「5年間の延長戦」と思ってください。

値上がりしている株をロールオーバーするメリット

 2018年にNISA口座にて購入した株をロールオーバーする際、2023年分の非課税枠に移管するわけですが、この時の価格は「2022年末の株価」となっています。

 ですから、例えば2018年に120万円で購入した株が80万円になっていた場合、2023年の非課税枠のうち、120万円を使うのではなく80万円を使うことになります。

 一方、2018年に120万円で購入した株が200万円になっていた場合、2023年の非課税枠は120万円しかありませんから、200万円のうち120万円分しかロールオーバーできないように思われるかもしれませんが、そうではありません。200万円の全額をロールオーバーすることができます。

 もしこの株を新たに2023年のNISA非課税枠で買おうとしたら120万円分しか買えませんが、ロールオーバーの場合は時価が120万円を超えていたとしても全額を引き続き非課税とすることができるのです。

 ですから、値上がりしている株をロールオーバーすることにより、実質的に2023年の非課税枠120万円を超える額の非課税を享受することができるのが、大きなメリットといえます。

値下がりしている株をロールオーバーするメリット

 買った後値下がりしてしまっている株をロールオーバーするメリットもあります。例えば120万円でNISA口座にて買った株が、80万円に値下がりしている場合を考えてみます。

 ロールオーバーせず通常口座に移管された後、株価が120万円に戻ったので売却したとすると、実際には利益は出ていないはずなのに、120万円-80万円=40万円の利益が出たとして課税されてしまいます。

 これは、NISAの非課税期間満了後通常口座に移管する際、当初の購入価格ではなく、非課税期間満了時(今年なら2022年末の株価)で受け入れるため、値下がりした分の損失はその時点で切り捨てられてしまうからです。

 でも、ロールオーバーをすれば、さらに5年間非課税期間が延長されますので、値下がり分の損失が切り捨てられることはありません。

 上の例で80万円の株価が120万円に戻ったところで売却しても、課税されずに済みます。もちろん、120万円よりさらに株価が上昇したところで売却しても非課税です。

あまりにあいまいな「ロールオーバーすべきかどうか」のアドバイス

 では、実際に2018年のNISA枠で購入した株につき、ロールオーバーするかどうか、どのように判断すればよいのでしょうか。

 ちまたでは、「株価が今後上がる見込みが高いのであればロールオーバーすべきだが、下がる見込みが高いならロールオーバーはしない方が良い」といったアドバイスが目立ちますが、これではあまりにも判断基準があいまいすぎます。

 そもそも個人投資家が、自らの保有している株が今後上がるか下がるかを正確に予想することなど到底無理な話だからです。

 ですから筆者はもっと合理的、客観的な判断基準でスパッと割り切ってしまう方が良いのではないかと思っています。

 それは「購入時の株価より現時点の株価が値上がりしていればロールオーバーし、値下がりしていればロールオーバーしない」というものです。

値上がりしていればロールオーバーし、値下がりしていればしない

 すでに2018年に購入してから5年近くが経過しています。もし良い株を買えていたのだとしたら、この5年の間に株価は上昇していることが多いはずです。

 逆に買った値段から大きく下落しているようであれば、その株を買ったこと自体が「見込み違いだった」と認識すべきだと思います。

 確かにロールオーバーはさらに5年間非課税枠を使うことで「延長戦」をするわけですが、ここまでの5年間で株価が下がった銘柄をさらに5年間持ち続けても、あまりよい結果にはならない可能性が高いのではないかと筆者は感じます。

 それならば、2018年に買ったものの値下がりしている株は売却するなり通常口座に移管するなりして、2023年のNISA枠は投資する銘柄を仕切り直し、業績が良いなど株価が上昇することが期待できるものを選びなおした方が良いのではないでしょうか。

 ちなみに筆者もNISA制度は活用していますが、5年間保有した結果株価が値下がりしているケースもあります。その場合、筆者はロールオーバーせず翌年の非課税枠は新たな銘柄を探して投資するようにしています。

 5年間の延長戦ができるのがロールオーバーの魅力ですが、それが「負け戦」にならないようにしたいものですね。