毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857、東証プライム)、ディスコ(6146、東証プライム)
アドバンテスト
1.2023年3月期2Qは、52.8%増収、営業利益2.0倍
アドバンテストの2023年3月期2Q(2022年7-9月期、以下今2Q)は、売上高1,388.63億円(前年比52.8%増)、営業利益431.33億円(同2.0倍)となりました。今1Q比でも、売上高2.1%増、営業利益3.7%減と高水準を維持しました。
製品別売上高を見ると、SoCテスタが前4Q641億円、今1Q788億円、今2Q798億円と順調に高水準の売上高を実現しました。スマートフォン用半導体向けテスタは今1Q比で減少しましたが、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング。パソコン、サーバー、ゲーム機向け等)用半導体向け、AI関連半導体向けの開発用、量産用テスタが増加しました。
メモリ・テスタ売上高は、SoCテスタに比べ金額は小さいですが、前4Q172億円、今1Q173億円、今2Q190億円と堅調に推移しました。
また、サービスその他の中のシステムレベルテスト(複数の半導体の組み合わせテストに使うテスタを販売。現在は主にスマートフォン向けと思われる)も、前4Q154億円、今1Q150億円、今2Q166億円と堅調でした。
地域別売上高を見ると、中国向けが今1Q236億円→今2Q347億円と大きく増加しましたが、韓国向けは同286億円→286億円と横ばい。台湾向けは同495億円→408億円と減少しました。
アメリカの対中国半導体規制(半導体デバイスと半導体製造装置についての輸出規制)については、アドバンテストがテスタに使っている技術でアメリカ由来のものは少ないため、影響は軽微と会社側は見ています。アメリカの対中国半導体規制によって中国の半導体産業が衰えることがあれば、近い将来アドバンテストが悪い影響を受ける可能性がありますが、アメリカのCHIPS法が引き起こすであろうアメリカ国内の半導体工場建設ブームによって、アドバンテストのSoCテスタ需要がさらに伸びる可能性が大きいため、今後中国向けが減少したとしても、アメリカのテスタ需要増加で補えると思われます。
なお、部材不足は今も厳しい状態が続いている模様です。
表1 アドバンテストの業績
表2 アドバンテストのテスタ売上高
グラフ1 サービス他売上高の内訳
2.2023年3月期、2024年3月期と順調な業績拡大が予想される
足元のテスタ需要を見ると、スマートフォン、パソコン、テレビなどの民生品用半導体向けのSoCテスタで、アドバンテストに対してキャンセルや納期延期の要望がでています。一方で、データセンター、AI、EV用半導体向けのテスタ需要が伸びています。
メモリ・テスタでは、メモリメーカーにおいて在庫調整と設備投資抑制の動きがある一方で、ハイエンドメモリのテスタ需要は堅調に推移すると思われます。
このように、SoCテスタ、メモリ・テスタともに、不調な分野、好調な分野がありますが、総合すれば先端半導体向けが牽引することによって、当面のテスタ需要は高水準で堅調に推移すると予想されます。
このような見方から、会社側の2023年3月期業績予想は前回予想と同じ売上高5,500億円(前年比31.9%増)、営業利益1,700億円(同48.2%増)となっています。楽天証券でも同じ業績予想です。
また、2024年3月期は、1Qまたは1-2Qに半導体デバイス市場の在庫調整、需要の伸び鈍化によってテスタ需要の伸びが鈍化するか減少する可能性がありますが、2Qまたは3Q以降は半導体セクター全体の景気回復によってテスタ需要が回復から再成長に向かうと予想されます。牽引役は3ナノ、5ナノの先端半導体と各種ロジック半導体向けテスタになると思われます。楽天証券の今回の2024年3月期業績予想は、売上高6,200億円(同12.7%増)、営業利益2,000億円(同17.6%増)であり、前回の売上高6,000億円、営業利益1,900億円から上方修正します。来期の5ナノ、3ナノ半導体向け、各種ロジック半導体向けテスタ需要を従来よりも強気に予想しました。来期も堅調な業績が予想されます。
表3 アドバンテストの事業別売上高
表4 アドバンテストの半導体テスタ市場予想
3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の8,200円から1万2,000円に引き上げる。
アドバンテストの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の8,200円から1万2,000円に引き上げます。2024年3月期の楽天証券予想EPS(1株当たり利益)813.8円に、高性能半導体のテスト需要増加、2023年後半からの半導体デバイス市場全体の回復の可能性と足元の景気後退リスクを考慮して、想定PER(株価収益率)15倍前後を当てはめました。
中長期で投資妙味を感じます。
ディスコ
1.2023年3月期2Qは、17.3%増収、35.8%営業増益
ディスコの2023年3月期2Q(2022年7-9月期、以下今2Q)は、売上高795.32億円(前年比17.3%増)、営業利益332.78億円(同35.8%増)となりました。
全社出荷額は、ダイサ(回路を書き込んだウェハを四角いチップに切り出す)、グラインダ(ウェハの底面を削り薄くする)需要の増加に沿って、前4Q693.88億円、今1Q716.91億円、今2Q724.68億円と順調に伸びました。2022年3月末から5月までの上海ロックダウンに伴い、顧客工場での検収と収益認識が遅れたため、今1Qの売上高と利益は低水準になりましたが、今2Qは検収が進んだため、前年比、前期比ともに売上高と利益は大きく伸びました。今2Qは四半期ベースでは過去最高の業績となりました。
製品分野別に出荷額を見ると、ダイサはパワー半導体向け、非半導体向け(電子部品向けなど)が伸びたものの、集積回路向け、パッケージシンギュレーション(パッケージの個片化)向けが減少したため、全体では今1Q比で減少しました。グラインダは、パワー半導体向け、光半導体(LED)向けが伸び、集積回路向けの減少が軽微だったため、今1Q比で微増でした。
また、計上レートは今1Q1ドル=131.3円に対して、今2Qは1ドル=139.3円となりました。円安メリットは1ドル1円の円安で年間約12億円なので、今2Qは今1Qに対して約24億円の営業利益に対するプラス寄与があったと試算されます。
なお、半導体を含む部材不足は全般的に改善されてきた模様です。
表5 ディスコの業績
グラフ2 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)
表6 ディスコ:連結受注高、売上高、出荷額
2.2023年3月期、2024年3月期とも業績順調が予想される
会社側の今3Q業績予想は、売上高673億円(前年比4.9%増)、営業利益249億円(同6.9%増)です。会社業績のトレンドをよく表す出荷額は、今1Q716.91億円→今2Q724.68億円→今3Q会社予想763億円と順調に伸びる予想なので、今3Qの会社側業績予想は保守的と言えます。楽天証券では、今3Q業績を売上高730億円(同13.7%増)、営業利益300億円(同28.8%増)と予想します。
半導体設備投資は足元では、前工程、後工程ともに、スマートフォン向け、パソコン向け等の民生品向け半導体の設備投資が、この方面の半導体デバイス需要の減少とともに軟化している模様です。一方で、最先端ロジックやパワー半導体は需要が多く、生産量も増えているため、この分野の設備投資は計画通り実施されている模様です。ダイサ、グラインダは需要が半導体デバイスの生産数量に沿って動く傾向があるため、総合してみると、ダイサ、グラインダの需要は当面は堅調に推移すると思われます。
楽天証券ではディスコの2023年3月期を、売上高2,900億円(同14.3%増)、営業利益1,170億円(同27.9%増)、2024年3月期を、売上高3,200億円(同10.3%増)、営業利益1,320億円(同12.8%増)と予想します。営業利益予想は前回予想に比べ2023年3月期は若干下方修正、2024年3月期は若干上方修正します。これまでにOSAT(半導体後工程専門業者)などがダイサ、グラインダに対して相当量の投資を実行したと思われるため、2024年3月期については大きな業績の伸びは期待しにくいと思われますが、堅調な業績が予想されます。
3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3万7,000円から4万7,000円に引き上げる。
ディスコの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3万7,000円から4万7,000円に引き上げます。楽天証券の2024年3月期予想EPS2,579.3円に、想定PER15~20倍を当てはめました。足元の景気後退リスクと、最先端ロジック半導体向けとパワー半導体向けの伸び、遅くとも来年後半からの半導体デバイス市場の回復の可能性を考慮しました。
中長期で一定の投資妙味があると思われます。
本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857、東証プライム)、ディスコ(6146、東証プライム)
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