円安は終わり?11月以降円高が進んだ理由

 ドル/円が激しく乱高下しています。2022年8~10月は急激な円安(ドル高)が進み驚かれました。

 ところが、10月20日に一時1ドル=150.27円をつけた後は、円高(ドル安)に転じました。12月2日に一時134円台をつけ、13日には135円台で推移しています。

ドル/円為替レートの動き:2022年7月1日~12月13日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 何が、ドル/円の為替を動かしているのでしょう。為替を動かす要因は無数にあって説明が難しいですが、もっとも重要な要因二つに絞れば、極めてシンプルです。以下二つで動いていると言えます。

【1】日米金利差

 日本の金利はほぼゼロなので、米金利がそのまま日米金利差となっています。

【2】日米金利差、先行きの思惑

 日米の金融政策のスタンスの差が影響します。

 これまで、日米金利差の拡大(米国金利の上昇)によって円安(ドル高)が進んできました。ところが、11~12月は大幅な円高に転換しました。

 米国2年・10年金利の上昇が終わり、低下に転じたことが、円高転換の理由です。

2年金利差の拡大縮小にドル/円が反応

 ドル/円の動きを最もよく表しているのは、日米の2年金利差(米国と日本の2年国債利回りの差)です。

 日米2年金利差の、現在の値・先行きの思惑が、どのように為替を動かしているか説明すると以下の通りです。

【1】日米金利差

 金利差が拡大するとドル高(円安)が進む。金利差が縮小するとドル安(円高)が進む。

【2】日米金利差、先行きの思惑

 先行きさらに金利差が拡大する思惑が広がるとドル高(円安)が進み、先行き金利差が縮小する思惑が広がるとドル安(円高)が進みます。

 先行きの思惑に影響するもっとも重要な要因は、日米金融当局の政策スタンスの差です。つまり、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長、日本銀行の黒田東彦総裁、両者の発言が影響します。

 パウエル議長は「景気を犠牲にしても金融引き締めをやり遂げる」という発言からわかる通り、強烈なタカ派でした。

 一方、黒田総裁は、強烈なハト派です。世界中の中央銀行が引き締めに転じる中、ぶれることなくハト派発言を徹底しています。

 したがって、現時点では日米金利差は先行きさらに拡大する思惑が続いています。

 ただし、パウエル議長は最近利上げ鈍化の可能性を示唆しており、タカ派色が少し低下しているので、金利差拡大もそろそろ終盤という思惑が出ているところです。

 日本の金利は近年ほぼゼロ近辺で固定されていますので、米国の2年金利の動きだけ見れば、日米金利差の変化がわかります。

米国と日本の2年金利と、日米2年金利差の推移:2022年7月~2022年12月(13日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ドル/円為替レートに2年金利差を重ねたのが、以下のチャートです。

ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2022年12月(13日)

(出所:QUICKより作成)

 2008年以降の動きを見ると、おおむね日米2年金利差の変化に、ドル/円は連動していることがわかります。

 ただし、よく見ると、金利差の拡大縮小と、ドル/円の動きがあっていないところもあります。2015~2018年がそうです。

 ここでは日米金利差が拡大する中で円高が進んでいます。金利差で説明できないところは、政治圧力や金利差の先行きに対する思惑の変化で説明できます。以下、説明をご覧ください。

【1】2008~2012年

 日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。

【2】2013~2014年

 日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安(ドル高)が進みました。金利の差拡大だけでは説明できない程の大幅な円安となりました。

 日銀が異次元緩和を実施する中、FRBが金融引き締めに動いていたことが、急激な円安を招きました。今と似た環境です。

【3】2015~2018年

 日米金利差が拡大する中で、円高が進みました。2013~14年の行き過ぎた円安に修正が起こったと見ることができます。

 2016年に、米大統領選キャンペーンで共和党候補だったドナルド・トランプ氏(前大統領)と民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことも円高材料となりました。

 トランプ前大統領が当選した後も、日本の対米黒字を問題視し続けたため、潜在的な円高圧力が続きました。

【4】2019~2020年

 日米金利差が縮小するにしたがって、円高が進みました。

【5】2021~2022年

 日米金利差が拡大にしたがって、円安が進んでいます。ただし、11、12月は円高に反転しています。米国の利上げが鈍化する思惑が出ていることによります。

 以上の説明を踏まえた上で、もう一度、金利差とドル/円のチャートをご覧ください。

(再掲)ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2022年12月(13日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

2023年が円高の年となるための二つ条件

 2022年のドル/円は大荒れでした。それでは、ここから来年のドル/円を展望してみます。

 2023年は、円高圧力が発生しやすくなると思っています。以下二つの条件のどちらか一つ、あるいは両方そろえば、円高トレンドに転換すると予想しています。

【1】日米2年金利差が縮小する思惑が広がること
【2】日米2年金利差が実際に縮小していくこと

 先に実現するとしたら、【1】思惑の変化です。これまで、あらゆる材料があり、日米金利差が開き続ける思惑を生んでいました。

 来年にかけて、少しずつ思惑が変わる可能性があります。以下があれば、思惑は変化します。

(1)パウエル議長のタカ派姿勢が緩むこと。先行き利上げペースを鈍化する、あるいは利上げを停止することを示唆する発言が出るかどうか(12月14日FOMC[米連邦公開市場委員会]後の記者会見に注目)

(2)黒田日銀総裁のハト派姿勢に変化が出ること。ほんのわずかでも、日本の長期金利上昇を容認する姿勢を見せると、市場のイメージは変わる可能性があります。ただ、私は、黒田総裁がそのように変化する可能性は、ほとんど無いと予想しています。

(3)米国のインフレ率が大きく低下すること

(4)米国の株価が一段と下落すること

(5)米国の景気が目に見えて悪化してくること

 上記にあげるいずれかが起こると、日米金利差が開き続ける思惑は消える可能性があります。そうなると、円安は止まり、徐々に円高に転じる可能性が生じます。

 ただし、2023年に上記2条件のどちらも実現しなければ、2023年も円安が続く可能性もあります。

 2023年も米景気・株価ともしっかり、米インフレは高止まり、米金利の上昇が続けば、2023年も円安が続く可能性はあります。私は、その可能性は低いと思っています。

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