以前本欄で、「『バブル』を中心とする経済のサイクル」(第134回、2010年9月17日)という経済循環を一回転する円運動の図で説明したことがある。このたび、あの図をもう少し詳しく書き換えたので、ご覧に入れたい。以下の図1がその図解だ。

山崎式バブルとボトムの経済時計


(図1)

時間を追って、大まかにご説明しよう。
先ず、経済は、景気と資産価格を引き連れて循環する。

12時から始めると、先ずバブルのピークの時期には、株価は「高値波乱」的なボラティリティーの高い状況で取引されることが多い。この段階では、金融の引き締めが徐々に始まっていることが多く、中央銀行は何度か政策金利を上げていることが多い。

12時~1時の段階ではまだバブルが過ぎ去ったのかどうか、あるいはそれまでの上昇相場がバブルだったのか分からないことが多く、一時的な「調整局面」だと言われることが多い。

1時~2時の段階に至ると、多くの人が高値の回復が難しいと思うようになり、株式、不動産などの投げ売りが始まる。この時点では「高すぎる資産価格自体が最大の悪材料だ」と見なされるようになる。尚、時計には万有引力が働いていて、右半分の方が回転が早く、左半分を回すには金融政策のサポートが必要だ。

2時~4時は、資産価格が下落中だが、この間に金融システムに不良債権(多くの場合不動産などの担保割れが起こる)が発生する。

4時~5時の段階ではまだ底が見えていないが、金融機関のバランスシートが悪化して、最悪の場合は大手金融機関の破綻が起こる。この段階では、流動性の低下、つまり金融機関同士の資金の融通が悪化する現象が起こる場合があり、中央銀行は「最後の貸し手」として行動する。

5時~6時の段階では、バランスシートが完全には修復されていないので、「貸し渋り」つまり信用収縮から不況が起こり経済循環のボトムに至る。

6時の段階では、ファンドの解約による売りなど、ファンダメンタルな判断に基づかないやむをえない売りの影響で株価や不動産価格は下がりすぎていることが多く、これが修正される「リバウンド」相場の時期が6時~7時だ。

この時期には金融が緩和されているので、徐々に消費や投資が復活してくる。7時09時はこうした「自律回復」の時期だ。

ここで経済時計の針が9時を超えるためには、十分な金融緩和を行うことが重要であり、バブル崩壊後長きにわたってデフレに苦しむ日本は、この段階が十分機能しないので、針が9時を回ることが出来ずにこの手前で前後している状況だと考えられる。

経済時計の針が9時を回ると、資産価格の回復が、一つには消費や投資の余力を生み、また、金融機関でも資産内容が改善することによって融資余力が発生して信用拡大が起こりやすくなる。これが、9時~11時の状況で、景気的にはブームが起こる。

信用拡大が行われる時期に、これが11時を超えてバブルに至る理由は、人間の欲望や付和雷同的な集団行動の他に、金融機関及び金融マンが他人にリスクを取らせてビジネスを作り、自分の収益やボーナスを稼ごうとする「リスクの拡大装置」が金融ビジネスに組み込まれているからだ。

かくして、時計はまた12時に至る。

経済時計のそれぞれの時間帯で、「これがベスト」あるいは「セカンドベスト」と言うべき投資対象は変化する。

次回は、時間帯別の投資対象の選択について書いてみたい。