11月のビットコインイベント

NEW! 11月7日 Binance CZ氏、FTT売却予告
NEW! 11月9日 Binance、FTX買収合意も翌日撤回
NEW! 11月11日 FTX、チャプター11申請
NEW! 11月28日 BlockFi、チャプター11申請

*2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
楽天ウォレットで毎日の仮想通貨マーケット情報をチェック!>>

11月の振り返り

11月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

11月のBTC(ビットコイン)相場は大幅下落

 Binanceに次ぐ業界No.2と目されていたFTXの破綻でBTCは急落、6月に付けた年初来安値を更新した。これにより、11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げペース鈍化議論を機にBTC相場が反転するとのシナリオは否定された格好。

 これまで相場の重しとなっていた一目均衡表の雲を上抜け、テクニカル的にも半減期を巡るサイクル的にもアノマリー的にもトレンド転換を予想していたが、想定外の事態にシナリオの修正を余儀なくされた格好だ。以下ではまずは、11月に発生したFTX破綻を巡る想定外の事態の内容とその影響、そしてこの低迷から脱する道筋を考えたい。

FTX破綻を巡る想定外の事態と、この低迷から脱する道筋

FTX破綻に至る経緯

 FTXとは弱冠30歳で億万長者となったサム・バンクマン・フリード(SBF)氏が創設した暗号資産交換所だ。2019年に創立後、瞬く間にBinanceに次ぐ世界No.2の地位に上りつめた。その様子は2017年創業後、瞬く間に世界No.1に上り詰めたBinanceと似ている。

 ビジネスモデルを見ても、豊富な品ぞろえと100倍を超えるレバレッジ、独自トークン発行による資金調達など類似点は多い。

 AML・CFT対策強化と本人確認強化が進み各国が暗号資産交換業に免許・登録制を敷き規制を強化する中、セーシェルやケイマン、バハマなどに本社を置くことでそうした規制から逃れ、最近でこそ厳しくなったが当初はメールアドレスだけで口座開設できる手軽さでユーザーを増やしていった。

 加えて米株市場のマーケットメーク業者出身のSBF氏は当初暗号資産市場でのアービトラージやマーケットメークを行うアラメダ社を設立、その後立ち上げたFTXにアラメダ社が流動性を供給するビジネスモデルで人気を博した。

 BinanceのCEO、CZ氏も当初はFTXに出資していたが、FTXが急成長してBinanceのライバルに躍り出ると資本関係を解消、その代金の一部としてFTXが発行する多額の交換所トークンFTTを受け取った。

 この両者の対立が表面化したのは11月7日、CZ氏のツイートがきっかけだった。

 Liquidating our FTT is just post-exit risk management, learning from LUNA. We gave support before, but we won't pretend to make love after divorce. We are not against anyone. But we won't support people who lobby against other industry players behind their backs. Onwards.

[私たちの FTT を売却することは、LUNA から学ぶ、(FTX投資の)出口後のリスク管理にすぎません。以前はサポートしていましたが、離婚後は愛し合うふりはしません。私たちは誰にも反対していません。しかし、陰で他の業界関係者に対してロビー活動を行う人々をサポートすることはありません。]

 同時に同氏は5億8,400万ドル分のFTTを売却のために移動したことを明らかにした。

 CoinMarketCapによれば、これはFTTの流通量の1割強にあたる。あるトークンの1割以上保有している投資家が全部売りますよと宣言したわけで、これで価格が暴落しない方が不思議だ。

 かくして11月7日、FTTは3割暴落、FTTを担保に資金を調達していたアラメダ社の資金繰りが急速に悪化、FTXに取付騒ぎが発生、同社の求めに応じる形でBinanceが救済買収の合意を発表した。

 しかし、この合意がBinance側からいつでも破棄できる内容と判明するとFTTの下落が再開、遂には元の水準から9割近く暴落、FTXの財務状況を見たBinanceは市場が懸念した通り買収を白紙撤回、FTXは日本でいう民事再生法にあたるチャプター11を申請、BTCは6月に付けた年初来安値を更新し、1万5,500ドルまで下落した。

FTT/USD価格推移

出典:Trading View

FTX破綻後

 この後、BTC相場はいったん上昇に転じる。最悪の結果となったにせよ、FTXが待つか待たないかという最大の売り材料が終わったことによるBuy the FactとFTXのように本拠地をカリブ海などに置き、グローバルに展開する交換所の破綻処理をどうするのかという問題を米裁判所があっさり引き受けたことによる安心感だろう。

 これが同社が本社を置くバハマや法人格を登録しているといわれるバミューダ諸島で破産処理が行われるとしたら、さらにパニックが大きくなったかもしれない。

 その後、米CPI(消費者物価指数)が弱く出たことによる急速な円高で円建てのBTC価格は下落したが、ドル建てのBTC価格はしばらく底堅く推移した。するとFTXの乱脈経営が明らかになる。

 グループ内での不透明な資金のやり取りや顧客資金の流用などが報じられ、ついには広告塔だった大谷選手や大坂選手に対する訴訟まで提起された。あたかも、FTTの暴落やFTXの破綻は同社の乱脈経営による特殊なケースで他の暗号資産や交換所は大丈夫だと言わんがごとくだった。

不安心理の拡大

 しかし、市場参加者はもっと複雑な反応を示した。すなわち、FTTの暴落とFTXの破綻は暗号資産市場に二つの懸念を巻き起こした。「他の暗号資産業者は大丈夫なのか?」と「他の暗号資産は大丈夫なのか?」の二つだ。

 真っ先に売られたのは他の暗号資産交換業者発行のトークンだ。この交換所トークンとは交換所が発行するトークンで、保有すると手数料が割引になるなどの特典がある。BinanceがBNBを発行したのが始まりで、グローバルな交換所の多くで発行されている。

 自社株に似た資金調達方法だが、株などと異なり保有者の権利は定かではない。そのうち世界No.2とも評されていたFTXのトークンが一夜にして1/10になれば、他の交換所トークンの保有者が焦らないわけがない。

 特に、システム改修などの理由でCrypto.comが出金を一時停止すると同社のトークンCronos(CRO)が急落したが、その後、出金を再開すると下げ止まり始めた。BNBやHuobiのHTなども反発し始めた。

 またそれ以外のアルトコインについても月末にかけてLitecoinやDogecoinなど個別銘柄を物色買いする動きも見られ始め、「他の暗号資産は大丈夫なのか?」という不安は後退した。

交換所トークン価格推移

出典:Tradingviewより楽天ウォレット作成

 FTX破綻の一因は出金ラッシュによる取付騒ぎだ。暗号資産市場には最後の貸し手となるべき中央銀行制度がないため、取付騒ぎによる信用不安の連鎖が収まり難いという弱点を持っている。CointelegraphなどはFTX破綻直後はグローバルな交換所からの資金流出が増えたと報じている。

 そうした中、大手暗号資産企業グループのDCG傘下のGenesis Tradingがレンディング部門の不振により破産申請する可能性をBloombergが報じるとBTCは年初来安値を更新した。

 さらに28日にはFTXから救済を受けていたレンディング大手BlockFiが破産を申請したが、FTX破綻の直接の影響を受けた企業の不振は伝わるものの、信用不安による破綻の連鎖にまでは及ばず、「他の暗号資産業者は大丈夫なのか?」という不安も後退、市場は徐々に落ち着きを取り戻していった。

原因を探る動き

 FTX破綻原因を巡る不安心理にも落ち着きが見られ始めた。当初は業界No.2と目されJPモルガンの再来とまで言われたFTXが一夜にして破綻したことで市場はパニックに陥りかけた。次にこの破綻はFTXの乱脈経営によるものとの報道が相次いだ。

 あたかも、破綻は個別企業の特殊なケースで他の暗号資産業者に問題はないと言わんばかりだったが、市場の不安心理は払しょくしきれなかった。しかし、月末にかけてSBF氏がNY Timesのイベントに登壇し、FTXに関する米上院公聴会でCFTC委員長がコメントする中で、徐々に問題点が明らかになってきた。

 SBF氏はFTXが預かった証拠金を兄弟会社アラメダ社の借入の担保として融通したことを認めたが、NY Timesの記者は、この行為は米国の証券法で禁じられているが、FTXの本社がバハマにあることが問題を複雑にしているとコメントした。

 公聴会で委員長はFTX傘下のデリバティブ交換所でCFTCの監督下にあるLedgerXの顧客資産は守られていることを例に挙げ、CFTCの監督権限の拡大を議会に訴えた。

 すなわち、暗号資産業界にはFATFの要請に従い各国当局の免許なし登録を受けた交換所とFTXのようなカリブ海などに本拠を置くグローバルな交換所があり、後者に利用者保護などの規制がかかっていないことが根本的な問題にあるという見方だ。

 一方、各交換所は自主的に預かり資産の残高証明(Proof of Reserves)を示す動きやBinanceなど交換所主導で事業再建基金を立ち上げる動きなども見られ始めた。

不安心理の後退

 もう一つ市場心理の改善につながる動きも見られた。米国の有名投資家Ark InvestmentのウッドCEOはFTX破綻後、Coinbase株とビットコイン・ファンドを追加購入した。

 破綻したのは規制の及ばないFTXで、米国の規制を受けナスダック総合指数に上場までしているCoinbaseと同じに見るべきでなく、同社はFTXという最大のライバルがいなくなりチャンスと見るべきで、混乱は暗号資産業界の問題で、ビットコインそのものに問題が生じたわけではないことなどを理由に挙げた。

 まだ一部だが、こうした冷静な見方が広がるにつけ、市場は下げ渋るようになっていった。

 つまり、FTXの破綻は市場に大きな混乱をもたらしたが、どうやら原因は証拠金取引会社が証拠金でレバレッジ投資をして大損を出したという古くからよくある話で暗号資産に限った話ではないということが徐々に分かってきた。

 また、他の金融市場では各国の金融当局が規制をかけ、そうしたことで投資家が損をしないように保護しているが、暗号資産市場にはカリブ海などに本拠を置き規制の対象外となっている業者がいくつもあるため、こうした問題が発生したという見方が、当局などを中心に浮上した。

 その結果、暗号資産業界にはまだまだ激震が走る可能性はあるが、業界の問題と暗号資産そのものとは別という考え方が広がりつつある。

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

2018年との類似性

 今回の騒動とビットコイン相場の状況は2018年11月から12月の動きと似ている、と考える。2018年11月、ビットコインキャッシュのアップデートに際し、ウー氏らとライト氏(のちのBSV派)とが対立しブロックチェーンが二つに分岐することになった。

 ブロックチェーンには長く続いた方を正当とみなすというルールがあったため、この両者の対立とブロック生成競争が激化し、遂にはBSV側が相手チェーンへの攻撃予告をするといった事態にまでエスカレートした。

 この事件でブロックチェーンという仕組みが存続できるのかというビットコインに対する「信用」が傷ついた結果、ビットコインは2017年のピークから下落後、しばらくサポートとなっていた6,000ドルを割り込み、3,000ドル台に下落した。新しい「お金」として誕生したビットコインや暗号資産の価値の源泉は「信用」であり、それが傷つくと価値が不安定となるからだ。

 そうして、どちらの陣営がより長いチェーンを作れるかといった競争をしばらく続けていたのだが、翌12月になると、実はこの勝負の勝者はビットコインキャッシュという名前を使えるだけで、両チェーンとも存続できることが徐々に判明していき、ついにはBSV側が名前を変えることで決着がついた。その結果、ビットコイン相場も12月に大底を付けている。

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

 今回の場合、FTTの急落で暗号資産には価値があるという「信用」が傷ついた結果、市場全体が全面安となった形か。ただ、ビットコインから派生、同じプログラムを使っているビットコインキャッシュと比べ、ビットコインとFTTとはかなり異なるため、影響は小さかったのかもしれないが、それでも業界No.2の交換所が一夜にして破綻に追い込まれたのはショックだった。

 しかし時間の経過とともに、問題は暗号資産業界内の話だが、実は金融界では昔からよくあった話で、今回は暗号資産業界の歴史が浅く投資家を保護する規制の整備が不十分なために起こった話だということが徐々に明らかになり、投資対象であるビットコインそのものとは別の話だという考えが広まりつつある。こうした意味では、大底は近いと考えている。

テクニカルで見た12月の見通し

再び雲の下へ

一目均衡表で見た11月のBTC/USD相場

出典:Trading View

 一目均衡表で見るとBTC相場は雲の上限を上抜け、3役好転の買いシグナルが点灯した。しかし、その直後にこのFTX破綻という想定外の事態が発生し、雲の下に下がってしまった。これで6月大底、11月反転シナリオは否定され、下降トレンドの継続が確認された。

 しかし12月半ばには雲の下限が1万8,000ドル近辺まで下がって来るので、再び雲の中へ突入するか、もう一段下げていくのかの分岐点を迎える。

アノマリー的にも微妙

ビットコイン相場 月別騰落一覧

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 アノマリー的に強いと思われた11月は陰線となった。12月の騰落は6勝5敗とやや落ちる。今回の様に陰線から陽線に転じたが翌月陰線に転じた(陰-陽-陰)過去7回中6回がその翌月は陰線になっている。12月の相場は強気になり難い。

サイクル的にはボトムは近そう

 BTC相場は半減期を基準にした4年サイクルを描く傾向がある。半減期後のピークからボトムまでの経過日数と下落率をみると、日数的には先月21日に付けた1万5,481ドルがボトムでも不思議はない。ただ下落率的には近いうちにもう少し1万ドル近くまでの下落の可能性を示している。

 両者を総合すると、12月にもう一度下値をトライして、前回安値を更新するか、その直前にサポートされて、そこが大底になるというイメージか。

結論

 上記を総合して、12月のBTC相場は底値を探る展開を予想する。11月の安値を更新するかしないかは微妙だが、いずれにせよ、12月か翌1月に今回のサイクルの大底を迎えると考える。

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

10月19日 リブラの流れをくむAptos取引開始
10月4日 イーロン・マスク氏、Twitter社買収再開
9月21日 ソシエテ・ジェネラル、BTCカストディ参入
9月15日 イーサリアム「マージ」無事通過
9月12日 フィデリティ、BTCリテール参入
8月24日 イーサリアム「マージ」正式決定、9月15日に決まる
8月12日 ミキシングサービス・トルネードキャッシュ開発者、蘭当局が逮捕
8月11日 BlackRock、BTC私募投信提供開始
8月2日 MicroStrategy、マイケル・セイラーCEO退任、会長に
7月20日 テスラ社、保有ビットコインの3/4を売却済
7月14日 レンディング大手Celsius Network、破産申請
イーサリアム、アップデート「マージ」予定日9月19日に決まる
7月6日 取引アプリVoyager Digital、破産申請
7月1日 交換所大手FTX、レンディング大手BlockFi救済で合意
ヘッジファンドThree Arrows Capital、破産申請
6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ
6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

楽天ウォレットで毎日の仮想通貨マーケット情報をチェック!>>

一目で分かる!暗号資産擬人化図鑑はこちらから!