先週の日経平均株価(225種)は前週比505円安と大幅に反落。新型コロナウイルス感染の封じ込めを図る「ゼロコロナ政策」を巡る中国国内の混乱に加え、一時1ドル=133円台まで進んだ円高が大きな下げ要因になりました。
今週12月5日(月)から9日(金)は為替相場次第で、さらに下げが加速する恐れもあります。
先週:米国株は引き締め様子見発言で上昇、日本株は円高で変調
先週の日本株市場は、中国の厳格なゼロコロナ政策に対して、上海や北京など各地で市民の抗議活動が広がった影響を受け、下落して始まりました。
その後、中国政府がゼロコロナ政策を軟化させる方向を示したことで、中国市場で利益を上げる資生堂(4911)などは週後半に大きく反発上昇。
ただ、11月30日(水)には経済開放を進めた江沢民(ジャン・ザーミン)元国家主席が死去しました。江氏の死を悼む動きが強権体制を敷く習近平(シー・ジンピン)指導部への抗議活動に転じる可能性もあり、指導部への反発が一層強まることもあり得ます。
一方、米国では30日(水)、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が民間講演。
パウエル氏は「早ければ12月にも利上げペースを減速する」と発言し、ついにFRBが強硬な金融引き締めから様子見に政策転換するのでは、という期待感から日米で株価が急騰しました。
しかし、多くの機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数が30日、3%以上も上昇したのに対し、翌12月1日(木)の日経平均株価は1%に満たない上げ幅に終わりました。
株価の反応に差が出た原因は、パウエル発言を受けて為替相場が大きく円高に振れたためです。
週初1ドル=139円前後で推移していた為替レートは2日(金)のロンドン外国為替市場で一時133円台をつけた後、ニューヨーク外国為替市場では134円台で2日の取引を終えました。先週1週間で5円も円高が進みました。
12月1日(木)にはISM(全米供給管理協会)が発表した11月の製造業景況指数が49.0となり、約2年半ぶりに好不況の境目となる50を割り込みました。
同日発表の10月の米国PCE(個人消費支出)は前月比0.8%増で堅調。一方、PCEの価格指数(PCEデフレーター)は前年同月比6.0%と伸びが鈍化。
さらに2日(金)発表の11月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比26万3,000人増と予想を大きく上回りました。
物価上昇に強い影響がある平均時給は、前年同月比5.1%増と10月よりも伸びが加速。
良好な雇用統計でFRBによる強硬利上げが続くのではないかとの懸念から2日の米国株は一時急落したものの、大きく反転上昇して小幅安で終わりました。
S&P500種指数は前週比1.1%のプラス。
それに比べて、急速な円高で前週比1.8%のマイナスに終わった日経平均株価の弱さが際立つ1週間でした。
それは先週の日本株の33業種別騰落率で、不動産や電気・ガスといった内需セクター、輸送機器や精密機器といった外需セクターがともに3~5%の下落率となり、海運株を除いて全ての業種がマイナスだったことでも明らかです。
今週:来週のFOMC待ちで小動き!?日本の12月新規株式公開は?
今週は米国であまり注目すべき経済指標の発表はなく、指標がらみで大きく動く相場にはなりにくいでしょう。
米国の主だった経済指標としては、5日(月)に11月ISM非製造業指数。
9日(金)には11月CPI(消費者物価指数)の発表(13日)に先駆けて、11月PPI(卸売物価指数)が公表されます。
前回発表の10月分は前年同月比8.0%と予想以上に伸びが鈍化しましたが、今回11月分はさらに低下して、前年同月比7.2%の伸びが予想されています。
同じ9日には、消費者心理の先行指標として知られる12月のミシガン大学消費者態度指数の速報値も発表されます。
米国の景気指標は現状、強いものと弱いものが混在しており、経済指標の発表で株価がどちらに振れるか予測するのが難しい面があります。
ただFRBの利上げ緩和が現実化しそうな今後は、これまでの強硬利上げが景気をハードランディング(急激に悪化)させてしまうことを示唆する弱い指標に、市場は最も警戒感を抱いているようです。
一方、日本株は今週も為替市場の動向に注意が必要です。
現状の日米の金利差からすれば、1ドル=130円割れは起こりにくいでしょう。
しかし、これまで円売りポジションを大量に積み上げた投資家の利益確定売りもあり、為替相場が急変動して日本株にダメージを与える恐れもあります。
また、日本市場の12月は新規上場銘柄が多い月として知られ、現状26銘柄のIPO(新規株式公開)が予定されています。
主だったところでは、再上場となる格安航空会社のスカイマーク(9204 12月14日再上場)やウェブメディアのnote(5243 12月21日上場)など。
12月1日(木)に先陣を切って上場したバイオ創薬関連のサイフューズ(4892)は上場2日目の2日(金)にストップ高。
今後のIPO銘柄にとっても幸先のいいスタートになりました。
FRBパウエル議長の利上げペース鈍化発言が飛び出した先週の流れを引き継いで、今週も世界の株式市場は上昇含みで推移しそうです。
ただ、米国の利上げ鈍化は日本株にとって、世界的なお金の巡りがこれ以上悪くならない好材料と円高という悪材料が一体化した、もろ刃の剣になりかねません。
来週はいよいよ13日(火)に米国の11月CPIの公表があるほか、FRBが13日(火)~14日(水)に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を決定します。
今週の株式市場は来週の大きなイベントに向け、様子見の小動きが続きそうな予感です。
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