先週は、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が23日(水)にFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録を公開しましたが、利上げペースの緩和が議論されていたことが分かり、日本株はジリ高(株がじわじわ上がること)の展開でした。

 今週11月28日(月)から12月2日(金)は米国のインフレや雇用関連の指標に注意が必要です。

先週:利上げペース緩和期待で上昇!商社など日本株の強さ、光る!

 先週25日(金)の日経平均株価(225種)の終値は前週比383円高の2万8,283円まで上昇。9月の取引時間での高値2万8,659円が射程圏内に入りました。

 1月5日の取引時間中につけた今年の最高値2万9,388円まで上昇すれば、下げ相場といわれた2022年を横ばいで乗り切ったことになり、来年2023年の株価上昇に期待が持てそうです。

 先週の株価上昇の原動力は、23日(水)に公開されたFOMCの議事録でした。多くの参加者が、利上げペースの鈍化がまもなく適切になるという見解だったことが判明し、米国の長期金利の指標となる10年国債の金利は3.8%台から3.6%台まで一時下落。

 市場の雰囲気がかなり明るくなりました。

 一方、中国では新型コロナウイルス感染者が過去最高の3万人台を連日更新。感染の封じ込めを図る厳格な「ゼロコロナ政策」で中国の成長鈍化に対する懸念が広がっています。

 先週、カタールで開幕したサッカーのワールドカップ(W杯)では、23日(水)、日本が強豪ドイツを撃破。

 全試合をネットテレビ「ABEMA(アベマ)」で無料配信するサイバーエージェント(4751)やサッカー用具も販売するミズノ(8022)がともに前週比8.1%も上昇。

 サッカー日本代表の話題が続けば、今週以降もW杯相場が盛り上がる可能性が高そうです。

 21日(月)には、「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が大手商社5社の株を買い増していたことが判明。各社の株価は週間で4~8%上昇しました。

 11月に入って三井物産(8031)丸紅(8002)などが上場来の最高値を更新するなど、商社株は絶好調です。

 また、海外での鉄道事業受注を発表した日立製作所(6501)も年初来高値を更新。同社の株はここ2年で倍増し、約20年ぶりの高値圏まで上昇しています。

 金利上昇に弱いハイテク株の下落で世界的に株価が低迷する一方で、成熟企業の勝ち組といえる日本の重工業、電気機器、商社、海運、資源関連企業の株価は2022年も力強く上昇しています。

 これまでは米国株への投資がブームになってきました。

 これから先、数年は日本株への投資が、米国株以上のパフォーマンスにつながるかもしれません。

今週:パウエル議長発言や雇用統計に注目!NISA恒久化の効果は?

 波乱に満ちた2022年も最終月の12月に入ります。

 今週、注目されるのは米国のFRBのパウエル議長の民間講演です。30日(水)、株式市場の争点となっているインフレや雇用市場をテーマに発言する予定です。もし、大幅利上げ継続を示唆するようなタカ派的な発言があると株価が急落するかもしれません。

 12月1日(木)には米国の10月個人消費支出やその価格指数(PCEデフレーター)も発表。

 食品やエネルギーを除くコアPCEデフレーターの前回9月分は、前月比0.5%の伸びと物価上昇が高止まりしました。

 今回発表の10月は前月比0.3%上昇に鈍化する予想ですが、予想を上回る伸びが続くと、インフレ懸念再燃で株価に悪影響をもたらすかもしれません。

 そして2日(金)には、11月の米国の雇用統計が発表されます。

 前回10月の非農業部門雇用者数は、前月比26.1万人増と予想を大きく上回りました。

 平均時給も前月比0.4%増となったことでインフレ継続への警戒が広がり、米国株は下落しました。

 今回、11月の雇用者数は20万人増の予想です。

 活況すぎる労働市場が多少、沈静化するようなら株高に振れる可能性もあるでしょう。

 日本では先週25日(金)に岸田政権が新しい資本主義実現会議でNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の恒久化と非課税枠拡大を発表しました。

 今後5年間で総投資額を56兆円、総口座数を3,400万口座に倍増させる具体的な数値目標も設定されました。

 「国策に売りなし」という投資格言に従うなら、日本の個別株投資を始めるいい機会になるでしょう。

 ただし、政府・財務省が富裕層への金融所得課税を強化する増税もセットで進める可能性があります。

 現状の所得税の負担率は、所得1億円をピークに下がっています。この「1億円の壁」という現象が起こる理由は、株式譲渡益などの金融所得にかかる税率は住民税と合わせて一律20.315%に固定されているからです。

 一方で勤労で得られる給与にかかる所得税率は高額になればなるほど段階的に上がっていく累進課税の仕組みとなっています。

 富裕層になればなるほど所得全体に占める給与所得の比率が低く、金融所得の比率が高いため、結果として税負担率が軽くなっていきます。

 富裕層の課税強化は確かに金額的にも大きく、日本株にとっては痛手になります。

 ただ長期的な目で見ればNISAの制度拡大がもたらす好影響のほうが大きいかもしれません。

 金融庁によると2022年6月現在のNISA買付額は総額28兆円。これは2014~2022年の約9年間の累計額なので、年間ではおよそ3兆円。

 最近のつみたてNISAの盛り上がりを考えると、今後はそれをはるかに上回る資金が株や投資信託に流入する効果は絶大でしょう。

 むろん、その資金の大半が米国株など海外の金融資産に向けられると、円安が進んだり、国富が海外に流出したりするリスクも高まります。

 サッカー日本代表と同様、NISA経由で日本を代表する日本企業の株への投資が活発化し、日本の株式市場が大いに盛り上がることに期待したいものです。