初めての投資は投資信託で3年以上、コツコツと

 投資信託(ファンド)を活用した資産形成で重要なのは、今後上がりそうな市場を予想したり、最大瞬間風速的に高いリターンを狙ったりすることではありません。特徴の異なるファンドを組み合わせてポートフォリオを作り、中長期にわたり着実にリターンを積み上げていくことです。

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)といった税制優遇メリットのある制度を利用し、さらに投信積立を活用するなど、買い方を工夫することも重要です。

 そして積み立てを行う場合は、すぐに結果を出そうとせず、最低でも3年は続けるつもりで始めてください。毎月コツコツと積み立てていけば、短期の値動きに振り回されることなく、着実に資産を増やすことができます。

ファンドの選び方は?

 実際にファンドを選ぶときは、国内株式、海外株式などの資産タイプをどう分散させるかに加えて、株価指数などに連動する「インデックス型」と指数を上回る高いリターンを目指す「アクティブ型」の使い分けも重要になります。なぜなら、インデックス型とアクティブ型には、それぞれ資産タイプ別に特徴があるからです。

米国株式はインデックス投資でもリターン期待

 例えば、近年人気の米国株式は、世界中の投資家が参加していて市場全体に自浄作用が働いています。時代ごとに成長性の高い企業が時価総額上位に名を連ね、敗者は自動的に退場していくというサイクルができ上がっているので、インデックス運用でも十分なリターンが期待できます。

 反対に、アクティブ運用で、市場平均(インデックス)を上回る超過リターンを恒常的に獲得することが難しいのもまた米国株式市場の特徴です。

アクティブ投資が「勝てる」余地の大きい国内株式

 かたや日本国内の株式インデックスはというと、時価総額の上位銘柄に米国ほどのダイナミックな変化は見られません。良くも悪くも自浄作用が働いていないため、インデックスを通じて市場全体に投資しても、米国ほど効率よく大きなリターンを期待することは難しいのです。

 だからと言って悲観することはありません。インデックスが万能でないということは、言い換えれば、アクティブ投資が「勝てる」余地が大きく、優良なアクティブファンドが多く存在するということです。日本株は、アクティブファンドや個別株投資を通じて、投資妙味のある銘柄を選別することをおすすめします。

 今回は、こうした投資信託の特徴を踏まえ、合計10本のファンドをご紹介します。

 投資信託は金額を指定し、1銘柄最低100円から購入できますので、まずは少額から始めて、頃合いを見て後から増額しても良いでしょう。

2022年冬版:今買いたい投資信託

投資初心者だけど将来のためにお金を増やしたいなら

 初心者でも、「増やしたい」という明確な目標があるなら、過度にリスク回避的にならず、つみたてNISAを活用するなどして、しっかり増やすための筋肉質なポートフォリオを意識しましょう。

 10年超の長期投資が前提なら、日本や新興国を含む全世界の株式を網羅した「全世界株式」のインデックスファンドが最初の1本としておすすめです。米国株式のみに投資したいなら、より銘柄が分散された「全米株式」も良いでしょう。

 なお、「全世界株式」と「全米株式」はともに人気があり、両者を保有される方も多いのですが、「全世界株式」の約6割は米国で占められているため、分散効果は期待できません。どちらか1本の保有で十分です。

 また、株式のみの投資に抵抗があるという場合は、株式と債券に50%ずつ投資できるバランス型ファンド「楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)」から始めても良いでしょう。

向こう5~10年以内に使い道が決まっているお金なら

 教育資金や住宅購入の頭金など、おおむね10年以内に使う予定があるお金なら、積極的に増やすだけでなく、「守り」の要素も入ったバランス型ファンドがおすすめです。

 使い道がある程度決まっている資金の場合、いざお金を引き出したいとなったとき、資産が大きく目減りしているという事態を避けることが重要です。既にインデックスファンドを保有しているなら、下記のファンドをプラスして、ポートフォリオ全体のリスクが大きくなりすぎないよう工夫すると良いでしょう。

「たわらノーロード 最適化バランス(安定成長型)」は、あらかじめ定められた目標リスク水準(年率標準偏差約7%)を守るべく、市場環境に応じて投資配分比率を変更させながら運用を行う点がポイントです。

 また、「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド」は、ファンド名の通り、株式と債券に加え、金(ゴールド)も取り入れることで、低金利局面と高金利局面の双方でリターンの獲得が期待できます。

つみたてNISAの「次の一手」を探しているなら

 投資信託は、プロの力を借りることで、直接投資することが難しい地域や、自力ではなかなか発掘できない銘柄に投資できるという点に魅力があります。既に投資経験があり、追加の投資先を探している方なら、アクティブファンドのほか、インドなどの新興国株式を取り入れても良いでしょう。

 あるいは、リスク分散の観点で「次の一手」を検討するなら、先行き不透明感漂う足元のような相場環境でもリターンが期待できるファンドに目を向けてみてください。

 相場の上昇時はどうしても上昇している資産に目が行きがちですが、ポートフォリオを作る上でより重要なのはリスク管理です。値動きの異なる資産を組み合わせることで、保有資産全体のリスクを少しずつ調整していけば、自分に合ったポートフォリオを作っていくことができます。

 例えば、「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」は、米国のS&P500種指数のうち、過去25年以上にわたり毎年連続で配当を増やし続けてきた銘柄群に投資を行います。景気低迷期でも底堅いリターンを期待でき、成長株の影響力が大きいS&P500種指数と併せ持つことで、リスク分散効果も図れます。

 投資信託を選ぶ際に重要なのは、「どの分野でプロの力を借りたいか」ということです。インデックスで効率よく分散投資を実現したいのか、それとも市場平均であるインデックスを上回る投資成果に期待したいのか。こうしたニーズの違いによって、選ぶ投資信託も変わってきます。

 まずは資産形成の目的を可能な限り明確にすること。その上で、投信積立を活用したり、アクティブとインデックスを使い分けてみたりすれば、自然と自身のリスク許容度に合った資産形成を実現できます。