投資の教科書通りに行動してもうまくいかないという実態

 株式投資では、言うまでもなく銘柄選定が必要となります。日本株であれば、4,000社近くの個別銘柄の中から投資対象とするものを見つけなければいけません。

 投資対象銘柄をやみくもに見つけようとしても途方に暮れるだけですので、何かしらの指標なりマイルールなりを用いて見つけることになります。

 多くの株式投資初心者が実際に取っている行動として、初心者向け教科書に書いてある「PBR(株価純資産倍率)」や「PER(株価収益率)」、「配当利回り」などの投資指標を用いて、割安と思われる銘柄を選択するというものがあります。

 ところが、その方法を用いた結果、全くうまくいかないという声をよく聞きます。それはいったいなぜなのでしょうか?

PERが低い株を見つけたらどう思いますか?

 皆さんは、PERが低い株を見つけたらどう思いますか? おそらく多くの方は「割安だ」とか「買い時だ」と思うのではないでしょうか。そして実際その銘柄を買う方もいることでしょう。

 でも実は、その考え方自体が失敗につながる可能性のある思考であると理解しておかないと、いずれ大きな損失を被ってしまいかねないのです。

 筆者がPERの低い株を見つけたら、まず「なぜこんな低いPERに放置されているのだろう」と疑問に思います。少なくとも、割安だとかお得だとは思いません。

 株式マーケットは、プロ投資家と個人投資家(いわば素人)とが同じ土俵で戦う場所です。もし低いPERに放置されている銘柄が本当に割安だとしたら、プロ投資家が放っておくはずがないのです。

 ですから、個人投資家が「割安だ」「お買い得だ」と感じる銘柄は、実際は割安でもお買い得でも何でもない可能性が高いと考えるべきなのです。

なぜ低PERに放置されているのか?

 もう少し突っ込んで考えてみると、なぜ低PERに放置されているのかを理解することができます。

 PERは、当期の予想利益と現在の株価をベースにして計算されます。来期以降の利益については一切考慮されません。

 例えば、PER2倍の銘柄があるとします。当期は特需があって絶好調でも来期以降は急速に業績が悪化し、2年後には利益が今の10分の1に落ち込むのではないか、とプロ投資家が予想しているのであれば、現時点でPER2倍でも、2年後にはPERが20倍にまで上昇することになります。

 つまりこの銘柄のPERは実質的には20倍であるというのがプロ投資家の目線です。このことは、PERの特性を考えれば分かることなのですが、初心者向けの株式投資の教科書にはそこまで書いていませんので、足元の、絶好調の業績をベースに計算されたPERが低いことだけをみて短絡的に「割安だ」と勘違いしてしまうのです。

「割安だ!」ではなく「なぜ?」「おかしいなあ?」と考える習慣を

 足元の数値だけをみて「割安だ」と考えてはいけないのは、PBRや配当利回りでも同じです。

 PBRが1倍を割り込んでいる銘柄は教科書的に言えば割安ですが、実際現時点でPBR1倍割れの銘柄は1,900銘柄を超えていて、実に全上場銘柄の半数に上ります。PBRが0.5倍を割っている、教科書的にみれば極めて割安となる銘柄は700銘柄もあるのです。

 ですから現状は、教科書的に見てお買い得の銘柄がゴロゴロしているのです。では、それらPBR1倍割れの銘柄の株価が上昇しているかと言えば、そうでないケースが多いのです。

 確かに、理屈で考えればPBRが1倍を割り込んでいる銘柄が割安であるのは確かです。でも理屈では語れないのが株式投資です。

 PBR1倍割れの銘柄が多数存在しているということは、少なくともプロ投資家はPBRが低いというだけでは投資対象としていないと考えるべきでしょう。

 筆者なら、逆にPBRが1倍を大きく割り込んでいて、個人投資家からみたらどこからどう見ても割安にしか映らない銘柄であっても、「何か悪材料が隠れているのではないか」と警戒したくなります。

 PBR1倍割れの銘柄がゴロゴロしている事実から私たち個人投資家が感じないといけないのは「割安な銘柄にあふれている!」ではなく「なぜ割安な状態に放置されているのか?」「こんなにPBRが低い状態で放置されているなんておかしいなあ。何か悪材料があるのかも。」なのです。

最後は「株価」に聞け!

 もちろん、PERやPBRが低かったり、配当利回りが高い銘柄の中には、本当に割安なものもあります。でも、数ある低PER銘柄や低PBR銘柄の中から、本物の割安株を個人投資家が見つけるのは至難の業です。

 そして、仮に本物の割安株を見つけることができたとして、他の投資家、特にプロ投資家がその銘柄を買い上げてくれてなければ、株価が上昇せず、利益を得ることができないのです。

 では実践的な対処法としてどうすればよいかですが、やはり「株価に聞く」のがよいと思います。

 株価とは、マーケット参加者全員の行動の結果動くものです。

 もし自分が割安だと確信しているとしても、株価が全然上昇しない、上昇トレンドにならないのであれば、プロ投資家がその銘柄に魅力を感じないので買われないのだ、と判断できます。ですからそのような銘柄は手を出さなければよいのです。

 一方、自分が割安だと確信していて、かつ株価も上昇トレンドになっているのであれば、プロ投資家も買っていると推測できるので自分も買っていけばよいでしょう。

 くれぐれも、自分だけの独りよがりで「割安だ」と勘違いして、大きな失敗をしてしまうことのないようにしてくださいね。

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