先週の株式市場は米国の物価高の鈍化を示すCPI(消費者物価指数)サプライズで全面高となりました。日経平均株価は前週比1,000円以上も急騰。今週11月14日(月)~18日(金)は急騰後の反落に注意が必要なものの、上昇基調が続きそうです。

先週:CPIサプライズで全面高!日本株の物色動向に変化も

 待ちに待った朗報が株式市場に届きました。

 それが10日(木)に発表された米国の10月CPIの伸び率が鈍化したことです。

 市場では前年同月比8.0%の高い伸びが予想されていましたが、7.7%にとどまりました。前月比も0.4%の上昇に抑えられ、市場予想を下回りました。

 変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数も前年同月比6.3%の上昇で、伸びが鈍化。

 サプライズの要因になったのは、中古車価格が前月比で低下に転じるなど、モノの価格上昇の勢いが弱まったことです。

 これまでCPIが発表されるたびに予想以上の物価高で急落を続けてきた米国株ですが、今回はポジティブ・サプライズに沸きかえりました。

 機関投資家が運用の指針にするS&P500種指数は前週比5.9%上昇。

 金利が低下すると買われやすいハイテク成長株が集まるナスダック総合指数は8.1%の大幅高となりました。

 CPIの伸びが鈍化したことを受けて、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の利上げは12月に0.5%、2023年2月に0.25%の引き上げで打ち止めになる、という楽観論が台頭しています。

 米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りも週初の4.2%台から3.8%台まで急降下しました。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 先週は8日(火)に投開票が行われた米国の中間選挙でも、共和党が圧勝と予想されていましたが議席を伸ばせず、現職のバイデン大統領が率いる民主党が善戦するという、思わぬ展開となりました。

 空前の物価高にもかかわらず、雇用情勢も良好で、好景気が続く米国経済に対する米国民の評価も、民主党善戦の一因でしょう。

 一方、市場にネガティブな影響を与えたのは、暗号資産(仮想通貨)を扱う交換業大手「FTXトレーディング」が11日(金)に日本の民事再生法にあたる米連邦破産法第11条の適用を裁判所に申請したと発表したことです。

 FTX破綻前から信用不安が広がり、代表的な通貨であるビットコインの価格は低迷。持ち直す場面もありましたが、破産申請を受けて、一時1万5,000ドル台まで急落しました。ピークだった昨年11月の4分の1程度に縮小したことになります。

 仮想通貨業界での連鎖倒産が懸念されますが、株式市場まで影響が波及するかどうかはまだわかりません。

 日本株もCPIサプライズで急騰しました。

 金利低下で恩恵を受けやすいハイテク株では、業績好調の半導体検査装置メーカー・レーザーテック(6920)が前週比30%近く上昇。

 円安によるコスト増加懸念で売られてきた家具・日用品販売大手ニトリホールディングス(9843)が急速な円高を好感して、前週比18%超も上昇しました。

 その一方、円安によるインバウンド(訪日客)消費の期待感で上昇してきた百貨店、旅行、ホテル関連株が下落。三越伊勢丹ホールディングス(3099)は前週比7%以上、値下がりしました。

 今後は自動車関連など、円安が収益増加につながる外需銘柄の株価の伸びが鈍くなるなど、物色動向に変化が起こりそうです。

今週:米PPI鈍化なら再び急騰!?日本株は急速な円高が心配

 今週はさらなる株価上昇エネルギーを蓄える値固めの時期になりそうです。

 14日(月)には、インドネシアで行われる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて、米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が初の対面会談を予定しています。

 8月に米国のペロシ下院議長が台湾を訪問し、中国と台湾の軍事的な緊張が高まったことは記憶に新しいですが、米中の対話チャンネルが確保されることは株価にとってもポジティブでしょう。

 15日(火)には、日本の2022年7-9月期のGDP(国内総生産)速報値が発表されます。

 ちょうど新型コロナウイルス感染の第7波がピークを迎えていた時期で、市場予想では前期比の伸びを年率換算した成長率は1.2%のプラスと、鈍化が想定されています。

 米国では、15日(火)に10月のPPI(卸売物価指数)が発表されます。

 PPIは企業間で取引されるモノの価格動向を示した指標。先週のCPI同様、伸び率鈍化が確認されれば、株価にとって非常にポジティブです。

 ただ、10月CPIでもガソリン価格が前月比で上昇に転じており、PPIの上昇率が高いままだと、「物価の下落はまだまだ先の話」といった悲観論が台頭する恐れもあります。

 16日(水)には10月の米小売売上高も発表されます。米国のGDPの7割を占める個人消費が活発すぎると物価高止まりに対する警戒感が生まれるかもしれません。

 気がかりなのは、日米金利差の縮小が意識され、猛烈なドル安・円高に振れたことです。

 11日(金)の外国為替市場では、一時1ドル=138円台まで円高ドル安が進み、1週間で約10円もドルが急落しました。

 日本株が米国株に比べてこれまで底堅かった一因は、急速に進んだ円安の効果ですが、円高トレンドに転換すると日本株の上値が重くなる恐れもあります。

 ただ、日米の政策金利の差は、まだ実際に縮小したわけではありません。

 高金利や物価高のせいで米国経済が景気後退に陥らない限り、年内にドルが110~120円台まで下落することはないようにも思われます。

 先週の爆発的な株価上昇に続き、今週も緩やかな上昇継続に期待したいところです。