今回は信用取引における売買タイミングについて考えてみたいと思います。

 前回は、信用取引が比較的短期間の投資に向いていることについて触れました。信用取引は金利などのコストが日々発生するため、建玉を長期間保有するとそれだけ諸経費もかさむことになることや、レバレッジ効果によって、わずかな株価の値動きでも損益の変動が大きくなりがちというのがその理由です。

 また、投資期間が短くなるほど、テクニカル分析の存在感も高まってきます。取引している銘柄で、企業業績に与えるようなファンダメンタルズ的な材料が毎日出てくるわけではありませんし、その時々の相場全体のムードや景況感などの影響を受けながら上げ下げする株価の動きに合わせて取引する必要があるからです。

トレンドのサイクル

 ここで話が少し変わりますが、相場において利益がねらいやすい局面はどこになるのでしょうか?

<図>トレンドのサイクル

 上の図は、相場のトレンドのサイクルの概念図です。相場は、第1ステージの底値圏から第2ステージの上昇局面、第3ステージの天井圏を経て、第4ステージの下落局面へと推移するサイクルを繰り返していきます。

 主に株価に方向感をもたらすのは、第2の上昇局面と第4の下落局面で、サイクルごとに第2が強ければより大きな上昇トレンド、反対に第4が強ければ下落トレンドを形成していくことになります。

 そのため、相場で利益がねらいやすいのは、株価に動きが出ている第2もしくは第4の局面、つまり、「トレンドが発生しているとき」になります。「買い」オンリーの現物株は上昇局面でしか収益機会がありませんが、信用取引を活用すれば下落局面でも収益機会として生かすことが可能です。

「順張り」と「逆張り」について

 また、相場における投資スタイルには、「順張り(じゅんばり)」もしくは「逆張り(ぎゃくばり)」という区分がありますが、これらはトレンドと深い関わりがあります。

 順張りとは、「発生しているトレンドに素直に乗る」スタイルです。一方の逆張りとは、すでに発生しているトレンドに対して、「そろそろトレンドが終了して反対の方向に向かいそう」という場面を見計らって行うスタイルになります。

 では、順張りと逆張りのどちらが良いのかというと、投資家の好みの問題もありますが、順張りがメインで、逆張りをサブで考えるのが基本になります。その理由としては、損益の確率と、逆張り自体の難しさが挙げられます。

星取表で見た収益チャンスの違い

 例えば、上昇トレンドが発生しているときに、順張りと逆張りをそれぞれ行った場合でどのような違いが生じるのでしょうか?

 下の図はその後の株価の値動きの違いによる損益の星取表になります。

<図>トレンド発生時に順張りと逆張りを行った場合の星取表

 まず、順張りから見ていきますが、その後のトレンドが強くても弱くても、トレンドが転換さえしなければ利益が出ますが、逆張りについてはトレンドが転換して初めて利益が出ることになり、確率的には順張りの方が有利と考えることができます。

逆張りは思ったよりも難しい?

 さらに、逆張りは思っている以上に判断が難しいという面もあります。

 先ほどのトレンドサイクルの図において、逆張りを仕掛けるタイミングとしては、第2ステージの終盤や、第3ステージの天井圏の場面が考えられますが、厄介なのはこの第3ステージです。

 株価の上昇がピークを迎えて、そのまま下落に転じることもあれば、しばらくもみ合いを続けた後に下落し始めるケースなど、実は天井圏の見極めは意外と困難です。しかも、もみ合いについては、再び株価が上昇することもあり、その時は結果的に天井圏ではなく、上昇トレンドにおける小休止(保ち合い)となってしまいます。

 トレンドがいったんストップしてもみ合いとなったときには、無理に逆張りを狙わずに、もみ合いを抜けた方向に順張りをした方がうまくいくケースも多かったりします。

 いずれにしても、順張り・逆張りを問わず、「トレンドの動きを捉える」という基本自体は変わりません。また、こうしたトレンドの動きを探る上でよく使われるのがテクニカル分析になります。

 そこで、次回はテクニカル分析の視点で探るトレンドの動きについて見ていきたいと思います。