今回のテーマは信用取引と投資スタイルについてです。

株式投資で利益を得るために必要な二つのポイント

 株式投資では、「何を取引するのか?」と「いつ取引するのか?」の二つが重要です。つまり、銘柄選びと投資タイミングがうまく合致すれば利益を得ることができます。とはいえ、言葉にすると簡単ではあっても、いざ実践の場になると、そううまくは行きません。この二つのポイントは投資家にとって「永遠のテーマ」でもあります。

銘柄選びで重要なファンダメンタルズ分析

 この二つのポイントのうち、前者である「何を取引するのか?」に焦点を当てたのが、いわゆるファンダメンタルズ分析です。決算などの業績データや会社発表の情報などから会社の価値を分析し、その価値と比べて株価が割安であれば買い、その後は株価が上昇するのを待つというものです。

 ただし、どんなに優良な企業の銘柄を選んだとしても、すぐに株価が上昇し始めるとは限らず、買ってからかなりの長い期間、この銘柄を保有し続けたり、株価の高値圏で買ってしまったり、ということも珍しくありません。

取引タイミングで重要なテクニカル分析

 そこで、注目されるのが、二つのポイントの後者にあたるテクニカル分析になります。

 テクニカル分析では、主に「チャート」と呼ばれる、株価の推移や売買などが記録されて図表化したものを用います。

「チャートはあくまでも売買の記録でしかなく、未来の予測には役に立たない」という考え方もありますが、過去の値動きのパターンからトレンドの傾向を捉えたり、売買タイミングを探ったりする参考指標としてテクニカル分析を活用することは必ずしも無意味ではないと言えます。

 例えば、ファンダメンタルズ分析で優良な銘柄をいくつか選定し、その後、テクニカル分析の視点で株価が動き出したものから取引すれば、取引開始から利益を得るまでの時間的な効率を高めることも可能になります。

投資スタイルによってウエート配分が異なる

 このように、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析をうまく組み合わせることが大事になってくるわけですが、では両者のどちらを重要視するのかについては、投資家それぞれの投資スタイルによってウエートの配分が異なってきます。

投資スタイルの違いの例

 上の図は、株式投資における投資スタイルのざっくりとした区別になります。実際のところ、株式市場にはさまざまな投資スタイルや投資手法があり、また、定義によっては上の図のような区分が当てはまらないこともありますが、ここではあくまでも一例として挙げています。

 このまま上の図に沿って話を進めていくと、投資スタイルを、「バリューで稼ぐ」、「トレンドで稼ぐ」、「回転で稼ぐ」の三つに分けています。右側に行くほど、投資期間が短期になり、テクニカル分析のウエートが大きくなります。反対に、左側に行くほど投資期間が長く、ファンダメンタルズ分析のウエートが大きくなります。

 例えば、図の右側に位置する「デイトレーダー」と呼ばれる投資家は、ファンダメンタルズを全く見ないとまでは言えないものの、少なくとも日々の売買の判断は、株価の値動きをテクニカル分析で行っていると考えられます。

 取引している銘柄について、企業業績に与えるようなファンダメンタルズ的な材料が毎日出てくるわけではありませんし、その時々の相場全体のムードや景況感などの影響を受けながら上げ下げする株価の動きに合わせて取引する必要があるからです。

米国株信用取引に向く投資スタイルとは?

 これまでのコラムで紹介してきたように、信用取引は金利などのコストが日々発生するほか、レバレッジが効いていることもあって、わずかな株価の値動きでも損益の変動が大きくなりがちです。

 そのため、信用取引ではなるべく早く結果を出した方が好ましく、短期の投資スタイル向きと考えられます。また、テクニカル分析の出番も比較的多くなります。

 ただし、米国株信用取引については、国内株の信用取引と比べて、ファンダメンタルズ分析のウエート配分を高めにした方が良いかもしれません。

短期間の株価変動の注意点

 株価は理論上、「企業の価値を表す」とされています。相場環境にもよりますが、中長期的には、株価が企業の価値と比べて割安なら買い、割高なら売りといった判断で利益を得る可能性は高くなります。

 しかし、短期間においては、「株価が高いか安いか」ではなく、「相場が強いか弱いか」で動く場面が多くあります。

 企業の実力以上に株価が上昇(下落)し、「さすがに行き過ぎ」とされる株価水準を超えても、さらに上値や下値をトライするような値動きに出くわす経験をされた方も多いと思います。その時点の市場ムードや、需給の偏り、投資家の思惑などが影響しているとされています。

 とりわけ、米国株でこうした値動きが顕著なのが、「ミーム株」と呼ばれる銘柄です。ミーム株とは、企業の業績に関係なく、SNSやインターネット掲示板などを通じた情報の拡散によって、米国の個人投資家を中心に短期間で急激に株価が変動する銘柄を指します。

米国株信用取引の取り扱い銘柄

 そもそも、米国株信用取引においては、こうしたミーム株は取り扱い銘柄ではありません。国内証券会社が米国株信用取引の取り扱い銘柄を選定する際、日本証券業協会のガイドラインに沿って行われます。

 例えば、主要株価指数(ダウ工業株30種平均・S&P500種指数・ナスダック総合指数)の組み入れ銘柄であることや、主要株式市場(NYSE・NASDAQ)に上場するETF(上場投資信託)であること、そして、時価総額や1日の平均売買金額などについても基準が設けられており、米国株信用取引で取引できる銘柄は、米国株市場における主力銘柄が中心になります。

 つまり、米国株信用取引の取り扱い銘柄は、多くの投資家が取引している銘柄であり、その中には巨額の資金を運用する機関投資家なども含まれます。当然ですが、機関投資家はムードや勢いだけで取引することはなく、ファンダメンタルズ分析のウエートを高くして取引を行っています。

 そのため、信用取引自体は短期の投資スタイル向けではありますが、企業業績などのファンダメンタルズ面もしっかりチェックすることが大事になります。