先週の日経平均は、節目の2万8,000円台を回復して終了

 先週末25日(金)の日経平均株価終値は2万8,283円となり、節目の2万8,000円台を回復して取引を終えました。前週末の終値(2万7,899円)からは384円ほど上昇したわけですが、その前週が364円安でしたので、下げた分を取り戻したような格好です。

 週末の終値だけで比較すれば、相場の方向性があまり感じられませんが、1週間の値動きをたどってみると、少し違った印象になります。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、上の図1で先週の日経平均の値動きを振り返ると、祝日だった23日(水)を挟み、前半が2万8,000円を意識した「様子見」、後半が前回のレポートでも指摘した「株高のスイッチ」を試す動きとなりました。

 株高のスイッチとは、「直近高値(8月17日と11月11日)同士を結んだ上値ライン超え」と、「25日と75日移動平均線のゴールデン・クロス」の二つになります。前者については、図1を見てもクリアしていることが確認できます。

 後者については、一見すると2本の移動平均線が微妙に重なっているように見えますが、先週末25日(金)時点の25日線の値は2万7,659.97円、75日線の値は2万7,659.00円となっていますので、小数点以下の数字上はクリアできています。

 これにより、25日・75日・200日の3本の移動平均線が上から順番に並ぶ「パーフェクト・オーダー」の形状が一応成立したことになります。

 パーフェクト・オーダーについては、前回のレポートでも解説していますが、出現後の株価上昇が継続しやすい傾向があります。

 株価に動きが出始めた時、移動平均線は期間の短いものから反応し、下落トレンドが発生している時は、上から200日・75日・25日の並び順となりますが、この状況がひっくり返るパーフェクト・オーダーの出現は、相場の底打ちを意味することになるため、その後の株価の戻りも期待できるのではという考え方が背景にあります。

 したがって、今週は、先週末時点でまだ微妙な段階にあるゴールデン・クロスをより明確にできるかが焦点になります。

今週のTOPIX、上値を追えるか?

 続いて、同じ国内主要株価指数であるTOPIX(東証株価指数)についても確認していきます。

■(図2)TOPIX(日足)の動き(2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末25日(金)のTOPIX終値は2,018pでした。二つの株高スイッチの達成はもちろん、2,000pの節目突破や、8月17日の直近高値も上回る上昇だったことが分かります。

 こうした先週の値動きにも表れているように、最近はTOPIXが日経平均よりも強い場面が多く見られます。実際に、前週末からの上昇率は日経平均が1.38%だったのに対し、TOPIXは2.5%となっています。

 となると、今週はTOPIXがさらに上値を追えるかにも注目です。そこで、中長期の株価の動向について探っていきます。

■(図3)TOPIX(日足)の水準感と方向感(2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は、期間が長めのTOPIX日足チャートに、ギャン・アングルとフィボナッチ・リトレースメントを重ね合わせたものです。それぞれ、昨年9月の高値と今年3月の安値を起点に描いています。

 フィボナッチ・リトレースメントで見ると、TOPIXは先週の値動きによって「61.8%戻し」と「76.4%戻し」の高値ゾーンに足を踏み入れています。さらに、このゾーンを抜けたところに1月5日の高値が控えています。株価の水準感では、TOPIXはかなり戻してきたと言えます。

 さらに、方向感を探るギャン・アングルで見ると、最後の戻りの目安となる「8×1」ラインを超え、さらなる上昇を期待させる格好となったわけですが、このラインを「窓」開けで超えている点には注意です。窓開けには、開けた方向への動きを強める働きと、開けた窓を埋めにいく修正の働きがあります。

 その中でも気を付けておきたいのが、9月13日に戻り高値をつけた時のようなケースで、この時は、窓開けでフィボナッチ・リトレースメントの「61.8%戻し」を達成したものの、再び窓を開けて下落してしまい、結果的に「アイランド・リバーサル」と呼ばれる格好となって、その後の株価の下げ足が速まっていきました。

 そのため、中期的には上方向への意識を保ちそうですが、目先についてはTOPIXの上昇が一服する展開も想定しておく必要がありそうです。

 ちなみに、日経平均をギャン・アングルとフィボナッチ・リトレースメントで捉えると、高値ゾーンに一瞬タッチしたものの、まだ本格的に足を踏み入れていないほか、ギャン・アングルの8×1ラインもまだトライしておらず、TOPIXよりも遅れている状況です(下の図4)。

■(図4)日経平均(日足)の水準感と方向感(2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 となれば、TOPIXに日経平均がキャッチアップしていくのが望ましい展開なのですが、両者の値動きの違いについては、時価総額の大きいメガバンクや商社株が物色されてTOPIXが上昇する一方で、日経平均への寄与度が大きい値がさ株の一部に出遅れが出ていること、来週末のメジャーSQ(12月9日)を控えた需給的な動きなどが影響していると思われ、連動性については普段と異なる動きを見せるかもしれません。

米国市場、株価上昇はひとまずストップの可能性も

 こうした株価指数の値動きの違いについては、米国市場でもダウ工業株30種平均とナスダック総合指数に表れています。

■(図5)米NYダウ(日足)とMACDの動き (2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

■(図6)米NASDAQ(日足)とMACDの動き (2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の米国株市場の動きを振り返ると、節目の3万4,000ドル台を回復し、8月の戻り高値も超えてきたNYダウに対し、NASDAQについては、株価の底打ち感は強まりつつありながらも、株価の上昇に弾みがついていません。

 確かに、最近の米国市場は、この時期の株価が上昇しやすいというアノマリーやFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の引き締め緩和観測などを背景に株価が上昇する場面が増えており、ややリスクオン気味になっていると言えますが、緩和的な金融政策を先取りして、IT・ハイテク銘柄といった成長(グロース)株や景気敏感株を買い直す動きがある一方、ディフェンシブ銘柄や高配当銘柄などの割安(バリュー)株を物色する動きが併存し、やや後者が優勢になっていると思われ、それがNYダウとNASDAQの値動きの違いに表れていると思われます。

 また、そのNYダウについても、目先は上値が重たくなるかもしれません。

■(図7)米NYダウ(日足)とRSIの「逆行現象」(2022年11月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図7は以前のレポートでも紹介した、NYダウとRSIの「逆行現象」の状況を捉えたものです。

 先週のNYダウが8月16日の高値を上回ったことについては先ほども触れましたが、これによって、1月からずっと続いていた下向きの「トレンド継続型」の逆行現象が解消され、中期的には株価の戻りが期待できる格好となりました。

 ただ、短期的には株価の上昇とRSIが下向きとなる「トレンド転換型」の逆行現象が出現しているため、株価の上昇がひとまずストップする可能性があります。

 もちろん、年末株高の期待については現時点で否定されたわけではありませんが、足元のこうした状況は、今後の景気後退に対する警戒の根強さの裏返しでもあると言えます。

 市場が利上げの打ち止めや利下げへの転換といった今後の金融政策の修正を織り込みつつある中、FRBとしては、急ピッチな引き締めペースをいったん落として、実体経済への影響を見極めたいスタンスと思われるため、市場とFRBとの間に「時間軸」のギャップがあります。

 市場の先走った動きによって、金融市場やムードが過熱し、結果的にインフレの鎮静化を遅らせてしまう可能性もありますし、金融引き締めによる景況感の悪化についても、まだ始まりを見せたばかりですので、しばらくは少し慎重に相場に臨むのが良さそうです。