先週の日経平均は2万7,899円で終了
先週末18日(金)の日経平均株価終値は2万7,899円でした。前週末終値(2万8,263円)からは364円安、節目の2万8,000円台も下回って取引を終えています。週足ベースでは4週ぶりの下落となりました。
まずは、いつものように足元の日経平均の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き (2022年11月18日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、「週初に大きく下落した後、週末まで2万8,000円の攻防が続く」展開となりました。
上値については、6月9日や9月13日といった戻り高値にトライする場面がなく、下値についても75日移動平均線を目指すような動きがなく、全体的に方向感に欠ける印象だったといえます。
前回レポートの最後でも想定していたように、上昇が一服した後、株価の水準感を探る推移だったわけですが、とりわけ2万8,000円が強く意識されていたようです。
また、前回のレポートでは、タイトルを『強い株高意識の裏にある「脆さ」に注意』としていましたので、株高意識の強さと、相場が崩れる脆さについても再考していきます。
まず、先週の値動きを見る限りでは、株高への意識は後退したようにも感じられますが、実際には上値意欲は保たれていると思われます。そして、今後のカギを握るのが「二つの上抜け」です。
一つ目の上抜けは「上値ライン」です。先週の日経平均の高値は14日(月)につけた2万8,305円なのですが、直近11日(金)の高値(2万8,329円)に届いていません。
そのため、この11月11日と8月17日の戻り高値同士を結んだ「上値ライン」を描くことができます。直近の高値同士や安値同士を結んだ線を超えると、株価の動きに勢いがつきやすい傾向があり、最近でも8月17日と9月13日を結んだ線がいったん抵抗となりましたが、超えてからは上値を伸ばしていたことが分かります。
続いて、二つ目の上抜けは「移動平均線」です。上の図1にもあるように、25日移動平均線が75日移動平均線を上抜けできるかが注目されます。
いわゆる「ゴールデン・クロス」として知られているサインなのですが、これが達成されると、移動平均線の位置関係が上から、25日・75日・200日と期間が短いものから長いものへと順序よく並ぶ「パーフェクト・オーダー」と呼ばれる形になります。
パーフェクト・オーダー、過去の3ケースを分析
実際に、過去のパーフェクト・オーダーの状況を見ると、達成後に株価の上昇が強くなるケースは結構あります。
■(図2)日経平均(日足)の動き 過去のパーフェクト・オーダー その1(2020年8月)
最初のケースは、コロナショック後の2020年8月にみられた動きです。
上の図2を見ても分かるように、2020年3月に底打ちした株価はその後戻り基調を描いていきましたが、同年の8月後半にパーフェクト・オーダーを達成し、コロナショック前の高値水準だった2万4,000円台の節目を超えてからは、先ほど紹介した上値ライン超えをきっかけに、2021年2月16日の高値まで、段階的に上昇が加速していきました。
■(図3)日経平均(日足)の動き 過去のパーフェクト・オーダー その2(2019年9月)
続いてのケースは、図2で見てきたコロナショック前の2019年9月に見られた動きです。
こちらも2019年9月下旬にパーフェクト・オーダーを達成し、節目の2万2,000円を上抜けてから同年12月につけた2万4,000円台まで上値を伸ばしていきました。
■(図4)日経平均(日足)の動き 過去のパーフェクト・オーダー その3(2016年10月)
三つ目のケースは、2015年夏場からのチャイナショックや、翌年6月のブレグジット後の2016年10月に見られた動きです。
こちらも図2と同様に、時間をかけてパーフェクト・オーダーを達成していますが、2016年2月と6月の安値による「ダブル・ボトム」のネックラインを超えてから上昇に弾みがつきました。
この図4のチャートでは表示できていませんが、この後も2018年1月の2万4,000円台まで株価の上昇基調が続いています。
このように、パーフェクト・オーダーを達成した後の株価は上昇が続きやすい傾向があります。また、今回は3つのケースを紹介しましたが、これらを週足チャートにまとめたのが次の図5になります。
■(図5)日経平均(週足)の動きとMACD(2022年11月18日取引終了時点)
MACDが底打ちしてから0円ラインに差し掛かったところでパーフェクト・オーダーが達成されることが多いなど、図から読み取れる情報はいろいろあるのですが、ここで注目したいのは、「株価がどこまで上昇したか?」になります。
そのポイントは、下落前の株価水準を超えて一段高となったケースとそうでないケースです。
2016年10月のケースでは、2015年夏場の高値圏である2万1,000円台を超えて2万4,000円台まで値を伸ばしましたが、その後はこの2万4,000円が上値の抵抗となり、2019年9月のケースではこの株価水準で上昇が止まっています。
2020年8月のケースでは、もたつく場面があったものの、2万4,000円台を突破し、2021年2月の3万円台乗せまで上昇しましたが、その後につけた同年9月の高値はこの水準を上抜けしきれておらず、今後の上値の抵抗として機能することが考えられます。3万円台から上放れするには、新たな買い材料や強いモチベーションが必要になってくると思われます。
そのため、今後の株価が上昇基調を強めた場合でも、これまでの戻り高値を意識しながらの展開をいったん想定しておくのが良さそうです。
■(図6)日経平均(日足)の主な高値と安値(2022年11月18日取引終了時点)
もちろん、今週の値動きによっては、これまで説明してきたパーフェクト・オーダー自体が達成されず、売りに押される展開もあり得ますので、最後に株高意識の「脆さ」について、米国株市場の動きから探っていきたいと思います。
「ブラック・フライデー」視野に、米国株の上昇具合を要チェック
■(図7)米NYダウ(日足)とMACDの動き (2022年11月18日取引終了時点)
先週末18日(金)の米NYダウ(ダウ工業株30種平均)の終値は3万3,745ドルでした。前週末終値が3万3,747ドルでしたので、2ドル安と週足ベースではほぼ横ばいだったことになります。
上の図7を見ても、節目の3万4,000ドル台に乗せることができず、もみ合いが続いていたことがわかりますし、下段のMACDを見ても、前回高値(8月16日)時の値を上回っている中で、シグナルとの下抜けクロスも出現しそうな感じですので、上昇が一服しそうな印象があります。
そのため、普通に考えれば、いったん売りに押されて3万3,000ドルの株価水準や、200日移動平均線あたりがサポートとして機能するかどうかを試しにいっても良さそうなのですが、先ほどの図1の日経平均と同様に、上にも下にも株価の揺らぎが少ない値動きとなっています。
堅調といえばそうなのですが、それがかえって目先の展開を読みにくくしています。
結果的に先週の日米の株式市場はともに方向感の出ない推移が目立ちましたが、先週公表された米10月PPI(卸売物価指数)が、先日の米10月CPI(消費者物価指数)に続いてインフレのピークアウト感を示したことや、米小売大手のウォルマートの決算内容が好感されたことなどが追い風となりました。
一方、株価急騰による反動売りをはじめ、FRB(米連邦準備制度理事会)要人によるタカ派のけん制発言、暗号資産交換所大手のFTXの破産申請、ポーランドに着弾したロシア製ミサイルをめぐる地政学的な緊張の高まりなどのネガティブ材料も多く、全体的に売りが優勢になってもおかしくなかったことを踏まえれば、足元の相場は「打たれ強さ」を見せているともいえます。
確かに、「株価は不安の崖を駆け上がる」という相場格言が表しているように、多少の不安要素があるぐらいの方がちょうど良いのかもしれませんし、この時期の株式市場は上昇しやすいというアノマリー(経験則)もあります。
とはいえ、FTXの破綻申請や地政学的な材料については、リスクというよりも不確実性の面が強いほか、FRB要人のタカ派発言に市場が聞く耳を持たなくなりつつあるなど、市場がネガティブ材料に対して少し鈍感になっているかもしれないことは想定しておく必要がありそうです。
FTXの破綻申請や地政学的な材料については、リスクというよりも不確実性の面が強く、今後の動向次第では無視できない売り要因となる可能性があります。
さらに、初期反応で好感されたウォルマート決算についても、生活必需品の販売増が他の商品の売上減少を補ったことや、これまで同店舗に足を運ばなかった高所得層の購買が増えていたことなどが背景にあり、「収益は確保したが消費意欲が減退している」兆候も見られています。
今週末の25日(金)には米国の一大商戦となる「ブラック・フライデー」を迎えるタイミングでもありますので、今週は様子見が基本スタンスとなる中、相場の「打たれ強さ」がさらなる上昇へとつながるのかを見極めていくことになりそうです。
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