覆面介入、2連続か?さらなる介入に警戒強まる 

 先週21日金曜日の海外時間に約1カ月ぶりに為替介入が実施されたようです。日本の通貨当局は介入を実施したと明言していませんが、値動きをみているとおそらく実施したのではないかと思われます。

 21日の値動きを振り返ってみますと、ドル/円は150円突破後、東京市場ではほとんど動きませんでした。しかし、欧州時間に入ると円売りが仕掛けられ、150.50円をブレイクするとそのまま円安が進み、NY市場で152円手前まで上昇しました。

 介入はその後実施されたようです。151円台から150円台に下落し、150円割れの攻防後、1時間半ほどで146円台前半に下落しました。報道では144円台半ばまで下落したと伝えられていますが、見ている限りでは145円台も144円台も観測できませんでした。その後、落ちたところに「ドル買い」の反発があり、147円台後半で越週となりましたが、反発力は弱い印象でした。

 しかし、週が明けると根強い円売りが再び活発となりました。今週の注目は、円売りが続き150円台に乗せるかどうか、150円台に乗せると「もぐらたたき」のように介入が出るのかどうかと思っていましたが、149円台に乗せ、150円突破かと思われたタイミングで介入が実施されたようです。時間は24日月曜日の朝8時台。

 当局は今回も実施したと明言していませんが、短時間で145円台まで下落したことをみると、おそらく実施されたのでしょう。

 2回目、3回目と2営業日連続で介入が行われたことから、今週は介入への捉え方が変わる環境になるかもしれません。つまり、ドル絶好の買い場を提供する「介入期待」よりも「介入警戒感」が高まってくる可能性がありそうです。

 先週21日金曜日の2回目の介入によるドル/円下落の動きをみていると、ドルの下落後、買われて戻ってもすかさずドル売りが出て、押し戻される動きが続いていたのが印象的でした。この執拗(しつよう)なドル売りはNY市場の取引終盤も続いていたようです。かなりのドルロングポジションが投げさせられたか、整理されたのかもしれません。

 推計によると21日の介入金額は5.5兆円規模に達した可能性があるとのことです。円買い介入としては過去最大となった可能性があるようです。9月22日の介入金額は約2.8兆円なので、その倍の規模ということになります。これは一度の介入ではかなりの規模です。一度の介入でドル/円が5円も、6円も動くとなると「下がったら買い」との意欲は減退するかもしれません。

 そして先週金曜日の2回目の介入は約1カ月ぶりでしたが、3回目がすぐに実施されたことによって介入への警戒感が強まる可能性がありそうです。また、ドル/円の高値を更新したわけでもないのに介入が実施されたことによって、介入がどの水準で出るのか分からなくなったことも介入警戒感を強めることになりそうです。

 介入の規模の大きさに加えて、連続で、しかも、通貨当局が介入の事実を明らかにしない「覆面介入」として行ったことで、さらに効果が高まるかもしれません。当局は「投機筋と厳しく対峙(たいじ)する」(鈴木俊一財務相)と強調していることから、介入の手綱を緩めることはしばらくなさそうです。

ドル買いにためらいも、WSJの米利上げ減速観測記事で

 大規模介入、連続介入、覆面介入に加えて、21日のWSJ(米紙ウォールストリートジャーナル)のFEDウオッチャーの観測記事が、今後、安心してドルを買うことをためらわせることになるかもしれません。FRB(米連邦準備制度理事会)のインフレ対策最優先の姿勢に、景気後退も考慮する姿勢が加わるかもしれないという内容です。

 WSJの観測記事では、「11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げを決め、12月に0.50%に利上げペースを落とすかどうかを議論する公算が大きい。一部の当局者は過度な景気悪化を警戒し、利上げ減速や来年早々の利上げ停止を求めている」と述べられています。

 この記事は介入前に配信されたのですが、この記事によってFRBの利上げペース鈍化期待が高まり、米長期金利は低下し、ドル/円は下落しました。ただ、ドル/円は151円台後半から151円前後までしか下落せず、円売り意欲は衰えず151円台半ばに反発した動きとなりました。介入はその後実施され、急落しました。

 記事発表後の反応は鈍かったのですが、今後のテーマ(利上げペースの議論)として大きくなる可能性もあるため、安心してドルを買うことをちゅうちょさせる、あるいは利食いを早くさせることになるかもしれません。今週は介入後のドル/円の戻りが強いのかどうかに注目したいと思います。

 今週27日(木)には、米国の7-9月期GDP(国内総生産)速報値が発表されます。4-6月期は実質年率で▲0.6%と2四半期連続のマイナス成長でしたが、7-9月期は2%台前半のプラス成長予想となっています。予想よりも下振れた場合は、先ほどのWSJの観測記事のテーマが注目され、金利は大きく低下し、ドルも売られる可能性があります。

 もちろん、逆の場合は反対の動きとなりますが、テーマがなくなるということではなく、さらなる経済指標や11月のFOMCで確認したいという動きになると思われます。11月1~2日のFOMCでは、12月の利上げ幅、あるいは今後の利上げペースの議論があったかどうか注目が集まりそうです。

 24日(月)に発表された欧米の景況指数は前月より低下した結果となりました。ユーロ圏10月PMI(購買担当者指数)は47.1と前月を下回り約2年ぶりの低水準となり、好況と不況の分かれ目である「50」を4カ月連続で割り込みました。同日発表された米国の10月PMIも47.3と前月より低下し、「50」を4カ月連続で割り込みました。

 年末に向けて景気後退が加速するリスクが高まってきている中、これまでのようにドルを安心して買える環境が続くのかどうか見極めるまでは、ドル/円は円売り一服となりそうです。