製品価格が8月から反転上昇、10-12月期の業績急回復に期待

 BOCIがカバーするセメント2社がそろって、2022年7-9月期の大幅減益見通し(前年同期比81-100%減)を発表した。BOCIは自社予想を大きく下回ったとしながらも、大きな不安要素はすでに取り除かれたと指摘している。セメント価格は8月後半から上昇に転じており、10-12月期には大幅な業績回復が期待できるとの見方。7-9月期の業績悪化を織り込む形で利益見通しを引き下げながらも、中国政府が景気対策としてインフラ投資の強化を継続していることや、メーカー各社が協調して生産調整を行っている点をプラスに評価。セクター全体に対する強気見通しを継続し、個別では中国建材(03323)をトップピックとしている。

 カバー対象の3銘柄のうち、華潤セメント(01313)は1-9月期に前年同期比64-66%の減益見通しを発表。これは7-9月期の94-100%減益を意味する。中国建材も1-9月に50%の減益見通しを示しており、7-9月は81%の減益との予想。セメント・セクターは7-9月に厳しい事業環境に直面したが、ここまでの大幅減益は想定外だった。

 中国のインフラ固定資産投資は4月から加速しているが、政府はこの先さらに、地方政府の特別債起債を通じて投資を強化する方針。特別債の2019年の残枠を利用するとともに、2023年の割当枠の一部を前倒して活用する形で、資金調達を促す。ただ、不動産セクターの需要は依然弱く、不動産開発投資は5月以降、マイナス幅が拡大傾向にある。BOCIはこうしたプラス・マイナス要因を反映させた上で、中国の2022年通年のセメント需要見通しを前年比5%減から、10%減へ下方修正した。    

 厳しい市況の下、セメント各社は生産調整が唯一の活路であると認識し、より協調性を強めている。このため、8月の設備稼働率はここ5カ月で最も低い水準となり、結果的に在庫レベルの引き下げに成功。セメント価格は8月下旬から上向きに転じ、国内平均価格はその後、10月半ばまでに6%上昇した(1トン当たり30元上昇)。

 BOCIは続く11月、12月に、国内価格がさらに1トン当たり各20-30元上昇するとみて、10-12月期の急速な業績改善を見込む。カバー銘柄3社が前四半期比で110%から最大1,200%という大幅増益を達成するとの見方。2023年については前年比33-74%の利益成長を予想している。

 7-9月期決算の下振れを受け、BOCIは3社の2022年通期の予想純利益をそれぞれ27-51%減額修正。2023-24年についても10-26%、3-15%引き下げた。これに伴い、目標株価を20-39%下方修正しながらも、19%超の上値が見込める中国建材と安徽コンチセメント(00914)の株価の先行きに対し、強気見通しを付与した(華潤セメントは中立見通し)。トップピックは中国建材。セメント事業の再構築によるコスト削減効果やグリーンエネルギー開発向けの新素材需要の拡大期待をその理由としている。