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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
景気悪い方が良い?米国株:雇用好調で売られる どうなる日経平均?

ナスダック反発で上昇の日経平均、ナスダック反落で下落か

 10月最初の週(10月3~7日)の日経平均株価は1週間で1,178円上昇して2万7,116円となりました。3日発表の米ISM製造業景況指数が予想以上の低下となったことを受けて「金融引き締め(利上げ)が鈍化する」期待が出て米国株が反発した流れから、日経平均にも外国人と見られる買い戻しが増えました。

 ただし、7日に発表された米雇用統計が予想以上に強かったことから、金融引き締め(大幅利上げ)が続く懸念が広がり、週末にかけて米国株は急落しました。その流れを受けて、今週の日経平均は反落が予想されます。

ナスダック・日経平均比較:2019年12月末~2022年10月7日

出所:2019年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

9月の製造業景況指数は予想以上の低下

 9月3日に発表された、米ISM製造業景況指数が市場予想以上に低下して50.9となりました。同時に発表された受注指数が47.1と前月から4.2ポイント低下したこともあり、製造業中心に米景気が急減速していることが鮮明となりました。これを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締め(利上げ)の手を緩める期待が出て、米国株が一時急反発しました。

米ISM景況指数:2018年1月~2022年9月

出所:米ISM供給公社

 ただし、非製造業の景況は56.7と堅調です。足元の米景気は、2019年と同様、製造業の景況低下が鮮明であるものの、サービス産業は好調が続いています。サービス産業まで含めて、景況が悪化しないことには、米景気悪化は鮮明となりません。

9月の米雇用は好調

 7日発表の9月の雇用統計は、米雇用が依然として強いことを示すものでした。完全失業率は前月比0.2ポイント低下して3.5%でした。コロナ前の2020年2月と同水準です。実質完全雇用の強い雇用が続いていることが確認されました。

 これで、FRBが金融引き締めの手を緩める期待が消えました。11・12月も大幅利上げが続く不安から、ナスダック総合指数は再び急落しました。

米雇用統計、完全失業率:2014年1月~2022年9月

出所:米労働省

 9月の非農業部門雇用者は、前月比26万3,000人増と、増加幅が縮小しましたが、引き続き、雇用増加を示すものでした。

米雇用統計、非農業部門雇用者数(前月比):2019年1月~2022年9月

出所:米労働省

どうなる日本株?

 結論は、いつも述べていることと同じです。日本株は割安で長期的には良い買い場と考えますが、短期的なショック安はまだ終わっていません。米国株とともに急落して二番底をつける可能性もあります。

 米国株が下げ止まるまで、日経平均の下値模索は続くと思います。ただし、米国株と比較すると相対的に下落率が低い状況が続くと思います。

 日経平均は昨年10月以降、米国株が急落する中、相対的に低い下落率で済んでいます。円安・リオープン(経済再開)による企業業績押し上げ期待が、日本株が相対的に堅調な理由です。米国株の主要株価指数が安値をつける中で、日経平均はまだ年初来安値(3月9日の2万4,717円)より高い水準にあります。

 2023年は、米国がリセッション(景気後退)ぎりぎりまで減速する可能性があります。日本の景気も軟化するものの、リオープン(経済再開)・インバウンド(外国人観光客の消費)復活で相対的に堅調となる可能性があります。

 IMF(国際通貨基金)の予測では、2023年、珍しく日本の成長率が米国や欧州を上回ることが想定されています。

IMF世界経済予想:2022年7月時点

出所:IMF

 かつては、米国経済がリセッションあるいはリセッションぎりぎりまで悪化すると、同時に世界中の景気が悪化していました。ところが、近年少し異なる動きもあります。米国向け輸出に景気を完全に依存していたアジア(中国・インド・ASEAN)が、米国向け輸出だけでなく内需による独自の成長をするようになってきたことです。

 IMFの予測では、欧米がリセッションぎりぎりまで悪化する中で、アジアの高成長が続く想定となっています。中国については、成長率が低下するとはいっても、2023年に4%台の成長が可能ならば、世界第2位の経済大国としては異例の高成長といえます。ゼロコロナ政策がリスクとなりますが、2023年にはその影響が低下することを前提とした予想と考えられます。

 ただし、世界的な金融危機が起こり、米景気が深刻なリセッション入りする場合は、話が変わります。円安・リオープンの恩恵を受ける日本の景気も腰折れするリスクがあります。しばらく、米景気・企業業績の動向を慎重にウオッチする必要があります。

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