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「いま、満たされている?」と聞かれて、「はい」と答えられる人はなかなかいないかもしれない。この数年で聞くようになった「Well-being(ウェルビーイング)」という言葉は、まさにその点を見つめ直そうというキーワード。いまと将来をもっとよくするために、いっしょに考えて、工夫をしてみよう。

幸せって?Well-being(ウェルビーイング)って?

 なんだか毎日いそがしくて、落ち着いて自分と向き合うことができなかったりします。仕事や人とのかかわり、健康だったり、お金だったり、今や将来のことだったり、いいことも悪いことも、期待も不安も、考え始めたらきりがない。だから、真正面から自分に問うのを意識せずに避けて、今に至るし、きっと明日もそう。

 でも、本当は誰もが、気持ちよく、健やかに、よりよく生きたいと思っていて、「いま、わたし、満たされてる?」と問えば、なかなかパーフェクトではなかったりします。

「パーフェクト」な状態なんてあるのか? 完璧にいい状態、満たされていて、幸せな状態。これはまさに昨今、耳にすることが増えた「Well-being(ウェルビーイング)」という考え方。でも、幸せなんてとても抽象的だし、人によって価値観も違うので、全ての人にあてはまるWell-beingはありません。

 例えば、田舎でゆったりときれいな空気を吸いながら、家族とゆっくり生活する幸せもあれば、キャリアを磨き社会に大きなインパクトを与えるビジネスを手掛けることによる幸せ、お気に入りの服をまとってアート作品に囲まれて過ごすことによる幸せ――どれもすてきだし、あこがれます。

理想と現実のギャップは大きい。埋めるための五つのヒント

 一方で、このようなあこがれと今の自分にギャップがありすぎて、「あこがれはあこがれ」と突き放してしまったり、世間一般の「すてきな生活」が自分の価値観や好みとずれていて違和感を感じたり、優先順位が違ったりして、もどかしく感じることもあるかもしれません。

 でも、大丈夫。そんなの当たり前。みんな全員に当てはまる幸福の形なんて逆に気持ち悪いし、今の時点で全てが手に入っている人なんていません。だからこそ、 自分にとっての理想の姿を「整理」していくことが、自分が「満たされている」と思える姿を見つけるための大切なプロセスになるかもしれません。

 では、何をまず考えればいいのか? このプロセスをスムーズに進めるためのヒントに、Well-beingを五つに分類する方法があります。米国のコンサルティング企業・ギャラップ社が提案する方法です。

(1)ソーシャル(Social- Well-being):人間関係。信頼や愛情
(2)キャリア(Career- Well-being):仕事や家事、育児、勉強
(3)ファイナンシャル(Financial-Well-being):経済状況。収入や資産
(4)フィジカル(Physical- Well-being):身体状況。健康やエネルギー
(5)コミュニティ(Community- Well-being):社会性。地域などとのつながり

 この五つがまんべんなく満たされている状態が、全体としての幸福度につながるというわけです。そして、ポイントはこれが瞬間的なものではなく、継続的であること。

 確かにどれが欠けていても、不安ですし、これがずっと満たされていると考えると、なかなか充実した人生と言えそうです。ただ、どれも簡単にコントロールできるかと言えばそうでもありませんし、どれもじっくりと向き合わないとよい状態になりにくいもの。

 そこで今回は、お金の学びを応援するメディア「トウシル」の得意分野である、(3)ファイナンシャルの部分について、いっしょに考えていきたいと思います。

「何となく不安」の理由は、日本人が苦手なお金のこと?

 おそらく日本のみなさんが苦手意識を持つことが多いのが、お金のこと。「将来のことがなんとなく不安」というところの一つの要素には、お金のことが関わっていると思います。

 身近なところでいえば、毎月の家賃や買い物などのやりくりだったり、節約だったり、預貯金だったり。少しを先を見据えると、5年後や10年後の理想の生活に必要なお金、老後のお金こともありますよね。

「いつかは、ちゃんと考えなきゃ」と、多くの方が思っていてもなかなか二の足を踏んでしまうエリアですが、この部分の整理をしておかないと、「何のためにお金がいるのか、稼ぐのか」といった、自分とお金の距離感があいまいになってしまいます。

 普段の仕事や生きていることが、「お金のためなのか?自分のためなのか?」が混乱しがちですが、これは距離感がブレているからかもしれません。ここに一つの「軸」ができるだけでも、お金に関するストレスは大きく減るはずです。

 では、ここから2回、いっしょにファイナンシャル(Financial-Well-being)について、考えていきましょう。