「iPhone 14 Pro」の売れ行き好調、カメラサプライチェーンの追い風に

 米アップルが「iPhone 14」2,000万台(大半がPro版)を緊急発注したとのニュースが伝わり、過去最長のリードタイム(納期)や高い転売利益率、中国でのSNS上の高評価が示唆していた同モデルの人気ぶりを裏付けた。BOCIはアップグレード部分が小さい「iPhone 14」の需要は横ばいとみる半面、「iPhone 14 Pro」の成功に言及し、アップルがこの先、iPhoneのカメラ機能のアップグレードに力を入れると予想。その結果、アップル向け、アンドロイド向けの双方で、スマートフォンのカメラサプライチェーンの追い風になるとみている。

「iPhone 14」シリーズの予約は9月9日に始まったが、圧倒的な人気を受け、注文から納品までのリードタイムが長期化している。米国では現在、「iPhone 14 Pro」のリードタイムが最短で3-4週間、「同Pro Max」が4-5週間。1年前の「iPhone 13 Pro」の2-3週間、「同Pro Max」の3-4週間を超える状況となった。BOCIによると、アップルが最も過小評価しているとみられる中国本土と香港では、「iPhone 14 Pro」と「同Pro Max」の納期は5-6週間、6-7週間。日本や英国でも過去最長を記録している。

 一方、香港の中古市場では、「iPhone 14 Pro Max」の転売時の利益率は15-18%と、ここ数年見られなかったほどの高水準。中国本土からの旺盛な需要を示唆している。

「iPhone 14 Pro」の成功の理由として、BOCIは4nmプロセスの新SoC「A16 Bionic」やダイナミックアイランド・デザイン、4,800万画素(48MP)のリアトリプルカメラシステム(iPhone 13の12MPから大幅に改良)、衛星通信といった高スペックを挙げている。中国のSNS上では画像・動画の画質を高く評価するコメントが目立つという。

「iPhone 14 Pro」人気によるスマホ市場への影響については、景気後退局面においても、特にプレミアムセグメントでは消費者がイノベーションを前向きに評価する傾向が示されたと指摘している。アップルが今後、カメラ機能のアップグレードにさらに野心的に取り組むとみて、アンドロイド勢も追随すると予想。結果的に、スマホのカメラサプライチェーンに有利となる見通しを示した。

 BOCIは特にPCや中低価格スマホを中心に、ハードウエアの需要は今も低調だとしながらも、新たな需要を生み出すためにはイノベーションやアップグレードが欠かせないとの見解。新エネルギー車(NEV)やAR/VR(拡張現実/仮想現実)、IoT(モノのインターネット)、データセンターなど、多角的な領域に関わる企業を有望視している。

 香港上場の中国テック銘柄の中では、引き続き光電子工学製品・光学部品大手の舜宇光学科技(02382)をトップピックとし、ほかにBYDエレクトロニック(00285)とQテクノロジー(01478)の株価の先行きに強気見通しを示した。ただ、ハードウエア系テック企業への投資については、従来より長期のスパンで考える必要があるとしている。