先週の日経平均は2万6,890円で終了

 先週末10月21日(金)の日経平均株価は2万6,890円で取引を終えました。前週末終値(2万7,090円)からの下げ幅は200円とあまり大きくはなかったものの、節目の2万7,000円台を割り込んだほか、週足ベースでも2週連続の下落となっています。

図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2022年10月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、「前半に上昇、後半に失速」という展開でした。

 前半の上昇局面では2万7,000円台や25日移動平均線を超え、19日(水)の取引では200日移動平均線も超える場面がありましたが、週末にかけての2日間は下向きとなっている25日移動平均線に寄り沿う格好で株価が下落していきました。

 ローソクの形を見ると、一週間(5営業日)の全てが、実体(ローソク足の箱のように見える部分)が短くなっていることが分かります。こうした実体の短い線は、その形状から「コマ足」とか「十字足」と呼ばれるのですが、一般的に「迷い」を示す線といわれています。

「取引時間中の株価が上下に動いても、結局は始値と終値がほぼ同じになっている」という考え方が背景にあります。

 ただ、迷いを示す線が連続して出現しながらも、実際の値動きを見ると、株価水準を保っているほか、図1下段のMACDを見ても、上向きの基調を続けているため、「何だかんだで堅調だった」と判断して良さそうです。

 今後の株価が上方向を目指すのであれば、再び2万7,000円水準や200日移動平均線、さらにその上にある75日移動平均線、そして、直近高値である8月17日と9月13日を結んだ上値ラインなどが、株価上昇の目安として意識されそうですが、21日(金)の国内株取引終了後の、日経225先物取引の終値が、大阪取引所で2万7,150円、CME(シカゴ先物取引所)で2万7,145円と上昇していますので、この流れを引き継ぐのであれば、今週の日経平均は2万7,000円台の回復からスタートが見込まれます。

今週の米国株市場、終値は3万1,082ドル

 また、日本株が取引を終えた後の21日(金)の米国株市場では大きく株価が上昇しており、市場のムードが変化していますので、この点についても確認していきます。

図2 米NYダウ(日足)とMACDの動き (2022年10月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末21日(金)の米NYダウ(ダウ工業株30種平均)の終値は3万1,082ドルとなりました。

 上の図2を見ても、週末21日(金)の大きなローソク足の陽線が目立っているほか、この日の上昇によって、3万1,000ドル台超えや50日移動平均線あたりまで株価を戻していることが分かります。

 また、チャートの形をざっくり捉えると、9月30日と10月13日の安値でいわゆる「ダブル・ボトム(二番底)」を形成しているようにも見えます。2回にわたる安値によって相場が底を打つという場面は、今年の6月から7月にかけてもみられました。

 当時の様子を上の図2で確認すると、6月17日の安値を境にいったん株価が反発したNYダウは、25日移動平均線で跳ね返され、7月14日の安値を再度つけに行きます。その後、再び株価が反発し、25日移動平均線を超え、そして50日移動平均線を上抜けしたあたりから上昇が加速し、8月16日の高値へとつながっていきました。

 今回も9月30日を境に上昇した後、25日移動平均線あたりで再び下落し、先週の値動きによって、25日移動平均線超えを達成し、50日移動平均線のトライという状況となっています。さらに、下段のMACDについても、いわゆる「0ドル」ライン超えが意識されているようにも見えるため、チャートの形状は上向きを強めていると考えることができます。

 見込み通りに株価が上昇した場合には、3万2,000ドルや、先ほどの6月と7月の安値同士を結んだライン、200日移動平均線などが上値の目安となりそうです。とりわけ、今回は200日移動平均線への意識が強まる可能性があります。ちなみに21日(金)取引終了時点の値は約3万2,750ドルです。

 その根拠としては、200日移動平均線が「1年間の値動きの中心線」であることと、200日移動平均線が上向きと下向きのトレンドの勢いがぶつかり合いそうな水準に位置していることが挙げられます。

図3 米NYダウ(日足)とRSIの「逆行現象」(2022年10月21日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3はNYダウとRSI(相対力指数:買われすぎか、売られすぎかを判断する指標)の「逆行現象」についてまとめたものです。

 株価とRSIが反対の方向を示している状況を「逆行現象」と呼んでいるのですが、この逆行現象は、見方によって、「トレンド転換型」と「トレンド継続型」の2種類が存在しています。

 一つ一つ説明すると長くなってしまうため、細かい解説は省きますが、足元では、短期的なトレンド転換型の逆行現象が出現し、実際に株価が反発基調をたどりつつある状況となっています。一方、中長期的な視点では1月から4月、そして8月と株価の上値が切り下がっているところに注目したトレンド継続型の逆行現象が最近まで意識されていました。

 このまま株価が上昇していくと、それに伴ってRSIの値も上昇していくことになりそうですが、仮に、RSIが8月の高値をつけたときの株価が8月の高値を下回っていた場合には、下向きのトレンド継続型の逆行現象が確認できることになり、株価の上昇と下落の勢いがぶつかり合うことになります。

 そのぶつかる株価水準が200日移動平均線の位置している3万2,000ドル台である可能性はかなり高いと考えられます。

 となると、目先で焦点となるのは、「今週の米国株が上昇基調を続けることができるか?」になりますが、そのカギを握っているのは、決算動向です。

 今週の米国では、アップルやマイクロソフト、グーグル(アルファベット)、アマゾンといった米主力IT企業の決算が発表されますが、これらの銘柄は組み込まれている株価指数(S&P500種指数やナスダック総合指数)において、時価総額で20~30%を占めているため、相場全体に与える影響度は大きいといえます。

先週末の米株上昇の背景とは?

 さらに、先週末の米株上昇の背景についても整理していきたいと思います。

 先週末の米株上昇を促したのは、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の記事によって、「FRB(米連邦準備制度理事会)が年内にも利上げペースを緩めるのでは?」との見方が浮上したためです。

 FRBは「FEDウオッチャー」と呼ばれる記者に情報をリークして記事を報道させ、市場の温度感を探るということを行うのですが、現在注目されているのがWSJの記者(ニック・ティミラオス氏)です。

 記事の内容をざっくりまとめると、「11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げ見込み」、「12月のFOMCの利上げ幅については議論される見通し」、「複数の委員が過度の金融引き締めによるリスクを意識している」というものでした。

 最近までの米国株市場は、米10年債利回りなどの金利上昇が重荷となって株価が下落していましたが、今回の報道によって、「ひとまず、FRBによる利上げの最高到達点(ターミナルレート)が見えてきた」ことが好感されたと思われます。

 記事の内容に沿うのであれば、9月のFOMC終了時点の政策金利(3.25%)から、11月のFOMCで4.00%に引き上げられ、12月は4.25~4.75%といった見通しとなりました。

 ひとまず、政策金利の目標について目星がついたことは株式市場にとっては好材料ですし、これに先ほどの企業決算の内容が、思ったよりも「好調」もしくは「悪くない」といった内容であれば株価上昇の勢いに弾みがつくことが想定されます。もちろん、さえない決算が相次げば再び株安シナリオが浮上することになります。

 そのため、今週の株式市場は株高基調を維持できるかの「天王山」となる週になりそうです。

 とはいえ、今回のWSJの記事から読み取れるのは、FRBが利上げ幅の見直しを検討するのは、インフレの収束が確認できたからではなく、急ピッチな引き締めによる景気への影響を、いったん引き締めのペースを落として見極めようとしている点にあるということです。

 ちなみに、先ほどのWSJの記者については、7月に「早すぎる金融政策の転換は、1970年代にインフレ抑制の利上げと景気対応の利下げを小刻みに導入する『ストップ&ゴー』政策を行ったことで、状況を悪化させてしまったことを繰り返しかねない」という記事を報じており、直近の報道によって、株式市場が金融政策の転換を先取りするような強過ぎる動きとなった場合には、FRB要人からのタカ派発言が増えてくることも想定されます。

 日経平均については、これまでのレポートでも紹介してきたように、引き続き「方向感」よりも「水準感」を探る動きとなりそうです。

図4 日経平均(日足)の水準感と方向感(2022年10月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 このほか、今週は日欧の金融政策イベント(日本銀行金融政策決定会合・ECB(欧州中央銀行)理事会)をはじめ、共産党大会が終了した後の中国(GDP(国内総生産)などの経済指標の発表が突如延期)の動きや、ウクライナ情勢、新首相の指名が注目される英国の政治動向など、相場のムードを揺さぶる「伏兵」は多く存在しているため、それらにも配慮する必要があります。

 したがって、今週の株価が意外と上昇した場合でも、そのまま年末株高へとつながっていくのかについての判断は現時点では難しいかもしれません。