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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【日本株】利上げショックでNYダウ安値、どうなる日経平均?

利上げショックで世界株安

 先週の日経平均株価は1週間(20~22日)で413円安の2万7,153円となりました。米利上げショックで米国株が一段安となったことが嫌気されました。日本が祭日だった23日に米国株が一段安となったので今週の日経平均は2万6,000円台半ばまで下落する可能性があります。

 先週21日、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.75%の大幅利上げを発表してからナスダック総合指数・ダウ工業株30種平均は一段安となりました。NYダウは23日に年初来安値を更新、ナスダックも安値に接近しました。

 0.75%の利上げは事前に示唆されていたのでサプライズ(驚き)はありませんでしたが、利上げ発表後の記者会見でジェローム・パウエルFRB議長が従来通りの強硬タカ派姿勢を示したことが嫌気されました。

ナスダック・日経平均比較:2019年12月末~2022年9月23日(日経平均は22日まで)~

出所:2019年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

年末のFF金利予測は4.4%、11.12月にさらに大幅利上げ見込まれる

 FRB(米連邦準備制度理事会)は21日、0.75%の大幅利上げを発表しました。FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を2.25~2.50%(中心2.375%)から3.00~3.25%(中心3.125%)へ引き上げました。0.75%の大幅利上げを、6月15日・7月27日に続き、3会合連続で実施しました。かつてない急激な利上げ、金融引き締めが進んでいます。

 0.75%の利上げ自体は事前にFRBが示唆していた通りでサプライズ(驚き)はありません。利上げ決定後の記者会見で、パウエルFRB議長が金融引き締めを続ける強い決意を語ったこと、さらに、FOMCメンバーによる2022年末のFF金利予測(中央値)が4.4%と高かったことが、ネガティブでした。予測値通りなら、11月にさらに0.75%、12月に0.5%の利上げが実施されることになります。そうなると長期(10年)金利との逆ザヤが拡大し、米景気を後退させるリスクが高まります。

米FF金利、長期金利、NYダウ月次推移:2004年1月~2022年9月(23日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 米長期(10年)金利は3.687%まで上昇していますが、もしFOMCメンバー予測で示唆されたように、年末4.4%までFF金利が上がると、10年金利との逆ザヤが大きくなります。それまでに米インフレ率の低下が進み、米景気の減速も顕著になると、長期金利は3%前後にさがると予想しています。

米10年・2年金利とFF金利の動き:2021年1月4日~2022年9月23日

出所:QUICK・ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 そうなっても、FRBがおかまいなしに大幅利上げを続けると、長短金利の逆イールドが1%以上に拡大することになります。高金利によって、米景気がオーバーキル(やり過ぎて台無しにすること)される可能性が高まります。

 目先の株式市場はそのリスクを懸念して、下落が続く可能性があります。

金融危機を伴う世界景気後退がなければ日経平均の安値更新はないと予想

 メイン・シナリオでは、世界景気はリセッションすれすれに減速するものの、リセッション入りはないと予想しています。11・12月に米利上げが見込まれますが、利上げ幅は縮小し、年末のFF金利は3.875%止まりと私は予想しています。

 なぜならば、原油先物・海運市況の急落に示されている通り、世界的なインフレはこれから沈静化に向かうと予想しているからです。

 米景気が減速しても、リセッション入りがなければ、日本の景気回復は続くと予想しています。円安・リオープンが内需回復や企業業績の回復に寄与すると思います。

 その場合、日経平均はここから一段安になっても、年初来安値(3月9日の2万4,717円)を下回ることはないと予想しています。米景気のソフトランディングが見通せるようになれば、日経平均は反転上昇していくと予想しています。

 時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると判断しています。

 リスク・シナリオとして、米金利上昇・ドル高が新興国などで金融危機を引き起こす可能性を想定しておく必要があります。世界的な金融危機を伴う、世界的なリセッションが起こると、日本の景気も腰折れとなります。その場合は、日経平均は安値を更新して、一段安となる可能性もあります。

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