はじめに

今回のアンケート実施期間は、4月30日~5月2日でした。

4月の日経平均の動きを振り返りますと、4月末の終値は14,304円となり、前月末比で約523円(3.5%)下落しました。月間の値幅は前月と同様に大きくなり、1,200円を超えています。

月初こそ、日銀の金融政策決定会合を前にした追加金融緩和の思惑による、いわゆる「日銀トレード」の盛り上がりもあって15,000円台に乗せるなど順調な滑り出しだったのですが、蓋を空けてみれば緩和への期待が後退したことで下落に転じ、さらに、米株市場でモメンタム銘柄が軟調となったことも加わって下げ幅が拡大、一時節目の14,000円台を割り込む場面もみられました。下落基調が落ち着いた月半ばから月末にかけては14,500円を挟んだもみ合いとなり、薄商いとともに方向感に乏しい展開が続きました。

今回のアンケートは、大型連休の谷間に行われました。アンケート期間中は、日米の金融政策決定会合や企業決算が相次ぐなどイベントが多かったほか、米NYダウが最高値を更新するなどの動きがあったのですが、日本株市場は盛り上がりに欠ける状況でした。DIの結果も前回調査から大きく悪化し、日本株を積極的に買う材料不足が反映された格好となりました。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:4月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI=△17.53
    (3月31日(前回)と1カ月後の日経平均の見通し DI=2.39)
  • Q2: 4月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=2.11
    (3月31日(前回)と3カ月後の日経平均の見通し DI=11.63)

今回の日経平均の見通しDIですが、1カ月先のDIがマイナス17.53と、前回(2.39)から大きく悪化してマイナスに転じました。3カ月先のDIについても、かろうじてプラスは維持したものの、前回(11.63)から悪化し、2.11となりました。

とはいえ、回答の内訳(強気・中立・弱気)の比率を見ると、中立が多数派を占めています。1カ月先については半数以上、3カ月先については4割以上が中立と回答しており、この割合は前月とあまり変化はありません。その一方で、強気の見方が減少し、弱気の見方が増加したことが今回のDIの悪化につながりました。

確かに、1カ月先DIの結果(マイナス17.53)はインパクトのある数値ですし、1カ月先の強気の回答割合は約15%まで減少し、アベノミクス相場が始まる直前の2012年10月調査以来の10%台です。あれよと言う間に投資家のマインドが冷え込んだような印象ですが、3カ月先のDIについては前月から悪化したものの、1カ月先DIほどではありません。

最近の冴えない国内株市場を受けて、「アベノミクスへの失望」といったようなコメントが多く見られるようになりましたが、回答の中立派の多さや、3カ月先の見通しの悪化が限定的であることを考えると、失望と判断するにはまだ早いと思われます。テクニカル分析の面から見ても、1年間の値動きの中心とされる52週移動平均線が年明けの急落以降ずっと意識されています。もちろん、今後は失望と判断されて相場が崩れる可能性はありますが、とりあえず「次の展開を待っている」状況と言えます。

ただし、企業業績や経済指標などの消費税増税後の影響見極めに加え、日銀の追加金融緩和への期待が後退したこと、収拾の目処が立たないウクライナ情勢、何だかんだで燻る中国への警戒など、個々で見れば今のところ決定的な売り材料ではないのですが、次の展開を形成する買い材料が圧倒的に少ないことが、今回のDIを悪化させた主たる要因と言えそうです。

また、日本株の割安感や、米国など海外株市場と比較した出遅れ感を指摘する声もありますが、昨年あれだけ上昇した日本株を敢えて買い進める理由を見つけにくいこと、株価が中長期で上昇していくイメージが描きにくければ積極的には買えません。結果として薄商いが続き、値動きが大きい割には方向感が出ない相場地合いとなっていると思われます。

今回の調査期間中の30日には日銀の金融政策決定会合が開かれ、展望レポートが公表されました。レポート内でも、「政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進によって、成長期待が緩やかに高まっていくと想定している」という記述があり、やはり「第3の矢」が今後のカギを握ってくることになりそうです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
3月31日 DI=35.59 DI=23.19 DI=21.88
2月24日 DI=22.87 DI=16.75 DI=9.80

4月初旬に1月以来の104円をつけ、テクニカル指標でも円安トレンドを観測したドル円は、その後の日銀による追加緩和策がでなかったことやロシア問題で下落し多くの投資家の失望となりました。

3月31日実施のDIは、米ドル14.96(前回は35.59)、ユーロ11.94(同23.19)、豪ドルは11.02(同21.88)という結果となり、前回大きく円安方向にみる向きが増加しましたが、今回は円高をみる投資家が増加しました。

米ドル

米ドルは、DIが14.96、前月比-20.63下落し、円安を見る投資家が円高派よりも多いものの前月比では15.3%減少し、円高派が前月比で5.4%増加しました。

4月の米ドルの動向は、4日の米雇用統計で非農業部門雇用者増加数が予想より若干下回った結果となりましたが、104円台をつけ「ドル高(円安)」への期待が高すぎたのか、マーケットの反応は米金利低下、ドル売りとなり一気に103円台での推移となりました。その後、4/8の黒田日銀総裁がコメントの中で追加緩和にふれなかったことが、楽観的な姿勢であると判断され、失望感とともに円高、株安が進み、一目均衡表をみると雲の下での推移となりました。

5月2日の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が2012年1月以来の高水準となる28万8千人増、また失業率は6.7%から6.3%へと低下し良好な結果となり、103円台にワンタッチしたものの、この上昇がアメリカの悪天候の影響からの回復でFRBの緩和策によるものではないとし、米金利低下→米株安→ドル売りの展開となりました。本日5/9は米ドル101.50円レベルで推移しており、サポートライン101.20円をうかがう展開になりそうです。このレベルを下抜けると年初来安値の100.75円が見えてくることとなり、まさに「SELL in MAY」(米国相場格言「5月は売り」)の展開になりそうです。

DIの結果で円高派が増加したのは、この格言によるものでしょうか。ただし、この格言では「5月に売って9月に買う」というものですが、マーケットは、「5月に売って(下落)、6月に買う(上昇)」を期待しています。

5/21の日銀金融政策決定会合、その後の黒田日銀総裁の定例記者会見でのコメントに注目です。失望されれば、100円台、期待されれば上昇となる可能性大です。

経済指標は、是非当社経済カレンダーで確認してみてください。

星★付きが重要度大です

ユーロ

ユーロDIは11.94と前月比-11.25ポイントとなりました。

また、方向感別では、円高派+1.5%、変わらず派+9.9%そして円安派が-15.3%となり、米ドル同様円安派が減少しました。

最近のユーロは、米ドルが対円レートで下落する中、140円から144円のレンジのなかでの推移となっています。ユーロは対米ドルレートが堅調で、5/8のECB理事会で金利が据え置きされると、2011年10月以来の1.4000ドル直前まで上昇しました。その後、ECB総裁のコメントでハト派的な発言がでると1.3800ドル台前半まで下落しています。今後の注目は、低インフレ懸念からの金融緩和となりますが、ECB総裁が「6月初旬の発表の経済予測を確認したい」とコメントしており、5月は動きづらい展開になりそうです。

ユーロは、前回のDIコメントで書きました、対円レートでの144円ダブルトップを上抜けすることなくレンジ内での推移となっていますので、エネルギーが凝縮されつつあります。前回同様、ユーロの対米ドルレートが1.4ドルをどうトライするかまた米ドルの対円レートがどう動くかに注目です。5月中に大きく動くのであれば、きっかけは、ロシア問題の動向になりそうです。

豪ドル

豪ドルDIは11.02。前月比-10.86ポイントとなりました。オセアニア通貨は、オーストラリアと中国の良好な経済統計を受け、豪ドルの対ドルレートは大幅に上昇しました。また、ニュージーランド(NZ)ドルの対米ドルレートも、史上最高値レベルまで上昇しており、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)による介入警戒感が強くなってきています。

ただし、豪ドルの対円レートは、ユーロ同様に米ドルの対円レートの下落で豪ドルの上昇を相殺されています。

オセアニア通貨が強いということは、マーケットがリスクオンの状態ですので、米ドルの再上昇もうかがえそうです。

5/9現在、上値抵抗線は96.50円、下値支持線は94.00円といったところでしょうか。DIでは、円安派が減少しましたが、強い経済指標を背景にした、豪ドルの上昇に期待したいところです。ユーロ同様、ロシア問題には、注意したいところです。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 49.86% 55.01% △5.15%
EU諸国 14.62% 14.87% △0.25%
ブラジル 20.16% 16.02% 4.14%
ロシア 6.28% 7.40% △1.11%
インド 22.22% 22.57% △0.36%
中国 7.08% 7.09% △0.01%
中東・北アフリカ 9.31% 7.32% 1.99%
東南アジア 36.26% 32.97% 3.29%
中南米 7.88% 6.55% 1.33%
東欧 4.34% 3.70% 0.64%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回 前回比
国内株式 70.82% 76.58% △5.76%
外国株式 25.59% 23.57% 2.01%
投資信託 45.06% 40.52% 4.54%
ETF 16.56% 14.71% 1.85%
FX(外国為替証拠金取引) 13.19% 12.25% 0.94%
国内債券 6.85% 5.93% 0.92%
海外債券 11.14% 7.86% 3.28%
12.74% 15.87% △3.13%
原油 3.20% 4.01% △0.81%
商品 1.88% 1.62% 0.27%
REIT 15.71% 15.02% 0.68%
CFD 1.20% 1.16% 0.04%