はじめに
今回のアンケート実施期間は12月25日~27日でした。前回の調査に続き、日経平均と為替の見通しがともに大きく改善する結果となりました。
ここ数年を見ると、この時期の国内株市場は、海外勢のクリスマス休暇などで売買が細る傾向があるのですが、今回については売買が落ち込まず、日経平均は連日で年初来高値を更新するなど、勢いのある動きを見せました。
12月の相場全体を振り返っても、新政権への期待と為替の円安を背景に、目立った調整局面がないまま、ほぼ一本調子の株価上昇となりました。季節柄、忘年会シーズンでしたが、一次会(衆院選挙まで)の流れが二次会(日銀の金融政策決定会合まで)に突入しても続き、一次会に参加できなかった投資家が二次会から合流したことで売買も盛り上がり、19日の日経平均終値が4月3日以来の1万円台を回復したほか、東証1部の売買代金も1年9カ月ぶりの多さ(SQを除く)など、久々の大賑わいを見せました。
そして、年末までの三次会も一気に駆け抜け、日経平均は大納会も年初来高値を更新し、終値は1万395円でした。大納会の年初来高値は1999年以来(13年ぶり)になるほか、月間上昇率も10%を超えました。過熱感や高値警戒感が意識されながらも、「行けるところまで行ってしまえ」といった相場基調の強さが感じられ、まさに「掉尾の一振」を地で行く展開となりました。
先高感の強い相場地合いですが、特に最近の株式市場は為替の円安動向に連動する場面が多く見られます。「アベノミクス」など国内の円安要因に目が向かいがちですが、国外要因(世界景気の回復観測、米国財政問題の過度な不安後退、欧州情勢の落ち着きなど)によるリスクテイクの動きも円安に寄与しています。今後の相場を見ていく上で、円安を演出しているこれらの要因を整理・注視していくことがポイントになりそうです。
2013年もぜひ、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之
1.日経平均の見通し
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Q1:12月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= 51.67
(11月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= 27.84) -
Q2:12月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 39.92
(11月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 19.16)
日経平均の1カ月先の見通しDIと3カ月先の見通しDIは、それぞれプラスの51.67、39.92となりました。前回調査に続いてのプラス見通し(それぞれプラス27.84、19.16)だったほか、その度合いも前回からさらに強気を示す結果となりました。特に、1カ月先の見通しDIがプラス50を超えるのは、2008年10月のアンケート調査開始以来、はじめてとなります。
また、これまでの調査を振り返ると、DIの結果がプラス・マイナス問わず、いちばん回答率が高いのが「中立」というパターンが多く、「どちらかというと強気(弱気)」というのが投資家のメイン姿勢で、見通しそのものが大きく傾くということはあまり見られませんでした。昨年2月~3月の上昇相場時においても、「強気」と「中立」が拮抗する状況でしたが、今回の調査では、1カ月先と3カ月先の見通しの両方で「強気」の回答率が過半数を占め、「中立」と「弱気」の回答率が大きく低下しています。
昨年11月の衆院解散以降、新政権への期待先行で株価が上昇してきましたが、その衆院選後も上昇が継続しました。新政権を担う自民党が衆院において磐石な基盤を得たことで、政策運営が行いやすくなったほか、日銀に対しても金融緩和や物価目標を要請する圧力が強まることが見込まれ、政府と日銀の取り組みがそれぞれ「車の両輪」として機能し、デフレ脱却や景気回復への期待がより高まったことが背景になったと思われます。
あらためて今回のDIの結果から、投資家の株式市場に対する先高感が感じとれるわけですが、衆院選を経て、単なる期待だけでなく、日本の構造変化の息吹とその現実味、また、円安進行による輸出企業を中心とする業績への寄与観測などを織り込む格好で株価が底上げされたことが、強気の見通しにつながったと言えます。
2013年大発会の相場も大きく上昇しましたが、経済対策の策定(1月11日)、補正予算案の閣議決定(1月15日)、日銀金融政策決定会合(1月21日~22日)、通常国会(1月)と新政権がいよいよ本格始動します。株式市場はこれまでの「期待の先取り」から「政策のスケジュール感と実現度」を見極める段階に徐々に移行していくと思われます。
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
12月25日 | DI=65.95 | DI=50.73 | DI=43.93 |
11月26日 | DI=46.11 | DI=32.93 | DI=37.87 |
為替のDIは、すべての通貨(米ドル、ユーロ、豪ドル)で円安見通しが強まりました。米ドルのDIは65.95(前回は46.11)、ユーロは50.73(同32.93)、豪ドルは43.93(同37.87)という結果で、日経平均の見通しと同様に、円安の回答率が過半数を超えています。
とりわけ、米ドルにおける円安の回答率については75%以上を占めています。12月の米ドル円の動きを振り返ると、月初の81円台から月末の86円台へとわずか1カ月で6%以上の円安が進行していたことも大きく影響していると思われます。
直近の株高の背景となっている円安ですが、その要因は、国内要因と国外要因に大きく分けられます。国内要因はいわゆる「アベノミクス」と呼ばれる新政権の政策スタンス(積極財政と金融緩和拡大)への観測で、「円売り要因」です。国外要因については、米中をはじめとする世界景気の回復傾向や、欧米の財政問題の動向、海外中銀の金融政策などのリスクオンの動き、つまり、「米ドル(ユーロ、豪ドル)買い要因」です。
米ドルに限らず、12月の為替市場は総じて円安が進行しましたが、これら国内外の材料が出揃ったことによるものです。これまでも国外要因によるリスクのオンとオフ、特にリスクオフによる円高の動きが目立っていましたが、国外のリスクオンに加え、国内の強力な円売り要因が加わったことで、「現状に大きな変化がない限りは円安傾向が続くだろう」という見通しにつながったと思われます。
3.今後注目する投資先
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 40.59% | 35.33% | ↑ 5.26% |
EU諸国 | 10.28% | 7.04% | ↑ 3.24% |
ブラジル | 27.37% | 26.50% | ↑ 0.87% |
ロシア | 10.81% | 9.28% | ↑ 1.53% |
インド | 36.72% | 34.73% | ↑ 1.99% |
中国 | 11.88% | 9.28% | ↑ 2.60% |
中東・北アフリカ | 7.48% | 8.23% | ↓△ 0.76% |
東南アジア | 50.33% | 53.89% | ↓△ 3.56% |
中南米 | 10.41% | 10.63% | ↓△ 0.21% |
東欧 | 4.67% | 4.34% | ↑ 0.33% |
4.今後注目する投資商品
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 77.30% | 76.65% | ↑ 0.66% |
外国株式 | 27.24% | 24.85% | ↑ 2.39% |
投資信託 | 34.45% | 30.69% | ↑ 3.76% |
ETF | 16.02% | 13.77% | ↑ 2.25% |
FX(外国為替証拠金取引) | 17.89% | 19.01% | ↓△ 1.12% |
国内債券 | 7.08% | 5.99% | ↑ 1.09% |
海外債券 | 11.62% | 11.68% | ↓△ 0.06% |
金 | 20.03% | 18.56% | ↑ 1.46% |
原油 | 4.67% | 5.69% | ↓△ 1.02% |
商品 | 4.81% | 3.44% | ↑ 1.36% |
REIT | 16.02% | 12.13% | ↑ 3.90% |
CFD | 1.74% | 2.69% | ↓△ 0.96% |
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。
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