はじめに

今回のアンケート実施期間は10月1日(月)から10月3日(水)でした。

先月(9月)の株式市場の動きですが、世界的な景気減速懸念が燻る中、各国の金融政策当局によるイベントが多く控えていたこともあって、神経質な相場地合いとなり、下値を探る格好でのスタートとなりました。その後、ECB理事会において、スペインなど財政懸念国の国債を買い入れる計画(OTM)が合意されたことをきっかけに上昇に転じ、さらに、米FOMCでのQE3、日銀金融政策決定会合と、追加金融緩和の流れが続いたことが株価上昇に弾みをつけ、日経平均は一時、8月の戻り高値を更新する場面も見せました。

しかし、一連の金融緩和による過剰流動性相場への期待は長くは続かず、月末にかけて上昇幅を縮小させる展開となりました。外交問題を含む中国情勢への警戒をはじめ、景気減速による企業業績の下振れ不安、欧州でもスペインの財政支援要請待ちの状況と特に進展が見られなかったこともあり、結局、9月末の日経平均は前月末比で約30円の上昇にとどまりました。

金融政策など注目のイベントが多かった割には、これまでの相場地合いが大きく変わるような状況にならず、日米の企業決算発表や、中国指導部の交代(共産党党大会)、米国大統領選挙とその後に控える「財政の崖」問題、解散総選挙をにらんだ国内の政局など、早くもこれから控えている「次の材料待ち」の印象となっています。

とりわけ、政治絡みのイベントについては、思惑や観測で相場が左右されやすくなるため、イベントが終了するまでは方向感は出にくくなり、現在の株式市場は、個別の材料株を中心とした物色や短期の売買が目立っています。また、今回のアンケート結果を見ても、日経平均の見通し、為替の見通しともに極端な強気・弱気のサインは見られず、中立のスタンスが中心となっています。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「一連の金融緩和も、実体経済への懸念根強い」

  • Q1:10月1日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △33.05
    (9月3日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △29.55)
  • Q2:10月1日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △9.41
    (9月3日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △14.39)

日経平均の1カ月先の見通しDIと3カ月先の見通しDIは、それぞれ、△33.05、△9.41となり、前回調査(それぞれ△29.55、△14.39)と比較すると、1カ月先の見通しは悪化、3カ月先の見通しは改善とまちまちでした。

なお、1カ月先の見通しDIは今年に入って一番弱い結果となっています。DIの結果だけで見ると、弱気スタンスが強まっている印象ですが、その内訳を見ると、弱気の回答率はさほど増えておらず、強気の回答率が減少し、中立にシフトしたことが今回の結果につながりました。逆に、3カ月先の見通しDIは、弱気と中立の回答率が減少し、強気派がやや盛り返しています。いずれにしても、中立の回答率が一番多く、「不透明感が強い中、どちらかというと弱気スタンス」という傾向が続いていると言えます。

一連の金融緩和の流れをひとまず好感して、過度な悲観は今のところ一服していますが、米国では10月第二週目から、国内でも10月下旬以降に企業決算の発表が本格化するタイミングであるほか、本アンケートが実施された10月1日には日銀短観が発表され、大企業製造業の業況判断が3四半期ぶりに悪化するなど、冴えない企業の景況感を示す結果だったこともあり、足元の景気減速懸念と目先の企業業績下振れ警戒が意識されていることが、弱気スタンス持続の背景になっていると思われます。さらに、日中関係の問題が長期化の様相を呈しており、さらなる企業業績への悪影響も懸念されています。

また、3カ月後の見通しDIの改善については、今後も年末にかけて政治的なものを中心に国内外で多くのイベントが控えていますが、これらが一巡するタイミングでもあり、状況改善を期待する見方が反映されたものと考えられ、積極的な強気要因でないと思われます。

前月と同様、マクロ環境では中長期の見通しを立てにくく、なかなか強気姿勢に傾きにくい状況です。業績が堅調な内需ディフェンシブ銘柄を物色する動きや、個別の材料株で短期の値幅を取りにいく動きなど、ミクロの視点での取引が中心となる展開がしばらく続きそうです。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
10月1日 DI=△6.90 DI=△13.60 DI=0.63
9月3日 DI=△14.14 DI=△25.76 DI=7.58

為替の見通しですが、米ドルのDIについては△6.90と前回(△14.14)から円高見通しが弱まる結果となりました。内訳をみると、変わらずの回答率が一番多いほか、円安見通しの回答率がわずかに増加しています。

9月12日~13日に開かれた米FOMCでは、住宅担保ローン債券(MBS)を「期限と上限なしで」購入する量的金融緩和第3弾(QE3)が決定されました。前回QE2が決定した当時(2010年11月3日のFOMC)のアンケート結果を振り返ってみると、決定前(2010年8月~10月)は円高見通しが回答率の半分以上を占めていましたが、決定後(2010年11月~)は逆に円安見通しが強まりました。

金融緩和(QE2)の決定前までは、通貨の供給量の差が意識されて円高見通しが強まり、決定後は、円高対策のために日銀が追随して金融緩和を実施するだろうという観測に加え、金融緩和の効果による、「米国景気の回復、インフレ、日米金利差拡大」への期待で、円安見通しが強まる傾向となりました。今回のDIの結果も前回の傾向に沿ったものと考えられます。

ただ、QE2決定以降は実際に日米の金利差が拡大しましたが、今回はさほど拡大していません。「ツイストオペ」の影響もあるかと思われますが、景気先行きや企業業績の回復にまだ自信が持てない状況で、しばらくはQE3の効果を見極めたいというのもあるかと思われます。今後は前回ほど円安見通しが強まらないかもしれません。

また、ユーロのDIについては、△13.76と2カ月連続で円高見通しが弱まる結果となりました。9月6日のECB理事会で、国債買い入れ計画(OMT)が合意され、欧州の債務問題に対する不安が後退したことが背景にあるようです。ただし、欧州経済も減速懸念が根強く、景況面ではユーロの買い戻しも限定的にとどまる可能性があり、依然として円高見通しの回答率が多くなっています。

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 38.91% 36.36% 2.55%
EU諸国 8.58% 8.08% 0.50%
ブラジル 26.99% 30.56% △ 3.57%
ロシア 9.62% 8.33% 1.29%
インド 34.31% 28.79% 5.52%
中国 10.67% 12.88% △ 2.21%
中東・北アフリカ 6.28% 7.83% △ 1.55%
東南アジア 45.61% 42.42% 3.18%
中南米 11.72% 11.36% 0.35%
東欧 3.97% 4.29% △ 0.32%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 70.80% 70.20% 2.60%
外国株式 23.43% 22.73% 0.70%
投資信託 23.43% 29.04% △ 5.61%
ETF 12.97% 16.16% △ 3.19%
FX(外国為替証拠金取引) 18.41% 17.17% 1.24%
国内債券 10.25% 8.08% 2.17%
海外債券 11.09% 11.62% △ 0.53%
21.13% 19.19% 1.94%
原油 7.11% 7.07% 0.04%
商品 5.86% 6.06% △ 0.20%
REIT 13.81% 11.87% 1.94%
CFD 3.14% 2.78% 0.36%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。