米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2022年10月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します(株価、配当利回りなどのデータは2022年9月13日現在、為替は1ドル=143円で計算)。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な三つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国に上場していても米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:NRGエナジー(NRG)

 NRGは米国24州、カナダ8州で電気や天然ガスの生産・販売をしています。

 家庭用、商業用、産業用、卸売用を含む約600万世帯の顧客を有し、昨年もDirect Energyを買収するなど積極的に事業を拡大させています。

 100%再生可能エネルギーの電力を提供する「Green Mountain Energy」や、買収した「Direct Energy」、「Reliant Energy」などさまざまなブランドでサービス提供をしています。

 時価総額は104億ドルで、日本円で約1兆5,000億円となっています(USD=143円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「テキサス事業(Texas)」で、続いて「イースト事業(East)」、「ウェスト・サービス・その他事業(West/Services/Other)」となります。

 それぞれの事業で家庭用、商業用、産業用および卸売用の電力と天然ガスの販売を事業展開していますが、「テキサス事業」では家庭用電力の比率が高く、「イースト事業」では商業用、産業用電力の比率が高いなど地域によって異なる売上構成となっています。

競合他社

 競合他社として、エネルギーとエネルギーサービスのプロバイダーであり、米国中南部で電力・天然ガスに関する物理的な配送および関連サービスを提供するOGEエナジー(OGE)、米国全体の市場で小売および発電の統合ビジネスを運営するビストラ・コープ(VST)、グローバルな電力会社であるAES(AES)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は上下があるものの一定の範囲内で推移していますが、配当は今年に入ってから増配をしています。

 テキサスの気温が平年を上回ったことで電力需要が増加し、インフレによるコスト増の懸念がありました。しかし、同社のヘッジプログラムによって業績悪化を回避したことや、自社株買いを行っていることで株価は安定的に推移しています。

 大寒波やコロナの影響などによって株価の変動はあるものの、営んでいる事業から他業種に比べて株価の変動は少なく推移しており、今後も配当を目的として保有するには良い銘柄の一つではないでしょうか。

業績動向

 2022年8月4日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 また、1株利益は前年同期比の水準を下回り、売上は前年同期比の水準を上回る結果でした。

「テキサス事業」、「イースト事業」において顧客数が増加していることや、インフレによる記録的な価格変動・負荷変動にも事業中断保険および損害保険などさまざまな対策を講じることでリスクを軽減させ業績を安定させています。

 今後は、住宅向けの省電力サービスAirtronの拡大が予想されており、引き続き好調な業績が続くことが期待されます。

 次回2022年11月10日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 昨年はテキサスで記録的寒波が発生し、大規模停電が起きました。

 そして、全米の石油生産の4割を占めるテキサスがそのような状況に陥ったことで、発電コストが上昇し大きく利益が減ったことがありました。

 そういった天候要因で業績に影響が出る可能性には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.4ドル
配当利回り:3.15%
株価:44.36ドル(約6,300円)

 この銘柄、権利落ち日は10月下旬予定(権利実施は11月中旬予定)です。

 配当利回りは9月13日時点で3.15%、株価は44.36ドルでおよそ6,300円から購入できます(1USD=143円計算)。

 2019年からの最高値は46.85ドル、最安値は21.99ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:ペンビナ・パイプライン(PBA)

 北米で65年以上にわたってエネルギー輸送やエネルギー中流サービスを展開する企業です。

 液体炭化水素と天然ガスパイプラインの統合ネットワークを所有し、石油・LNGと物流サービス、輸出ターミナル事業を展開しています。

 時価総額は203億ドルで、日本円で約2兆9,000億円となっています(USD=143円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「マーケティング&新規開発事業(Marketing&New Ventures)」となっており、続いて「パイプライン事業(Pipelines)」、「保守・管理事業(Facilities)」などがあります。 

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「マーケティング&新規開発事業」では、LNGおよび天然ガスの販売戦略、新規事業を行い、「パイプライン事業」ではカナダおよび米国の主要市場において、原油、天然ガスパイプライン輸送、貯蔵サービスを中心に事業展開しています。

競合他社

 競合他社として、天然ガスパイプライン事業、製品パイプライン事業、ターミナル事業およびCO2事業の四つのセグメントを通じて事業を展開するキンダーモルガン(KMI)、中流サービスの提供、天然ガス液(NGL)システムを所有し、天然ガスの収集、処理、貯蔵、輸送資産のネットワークを構築するONEOK(OKE)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は今年6月の高値まで回復していませんが、マーケット全体が下落する中年初から1~2割程度上昇して推移しています。また、配当は横ばいで推移しています。

 今年3月、カナダ西部の天然ガス事業をKKR & Co Incと統合し新会社「Newco」を発足することを発表し、7月28日に全ての規制当局の承認を得ることができたとの発表がありました。

 そういった積極的な事業拡大と、良好な市場環境を追い風に好調な業績を維持しており、株価も堅調に推移しています。

 また、新会社発足後に配当金の引き上げも計画されており、配当を目的とした継続的な買いが入ることが期待されます。

業績動向

 2022年8月4日開示の四半期決算では、1株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 インフレによるコスト増がありながらも、原油とNGLの市場価格の上昇やカナダのアルバータ州で展開するPeace Pipe Lineで販売量が増加していることなどから、業績は好調に推移しています。

 今後は新会社「Newco」がさらなる業績拡大をもたらすことが期待されており、今後も堅調な業績が予想されています。

 次回は2022年11月3日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 配当金は当初カナダドルで出て、その後米国ドルに切り替わるため、カナダドルと米国ドルの関係で配当金の受け取り額が変動する可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.99ドル
配当利回り:5.43%
株価:36.64ドル(約5,200円)

 この銘柄、権利落ち日は10月下旬(権利実施は11月中旬)です。

 配当利回りは9月13日時点で5.43%、株価は36.64ドルでおよそ5,200円から購入できます(1USD=143円計算)。

 2019年3月からの最高値は42.37ドル、最安値は11.66ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株3:ユニバーサル(UVV)

 1918年の創業以来、タバコを中心に事業を展開している世界有数の葉タバコサプライヤーです。タバコメーカー向けに黄色種、バーレー種、ダークタバコの調達、加工事業を展開しています。

 B to Bのグローバル企業であり、5大陸30カ国以上で事業を展開しています。

 時価総額は12億5,000万ドルで、日本円で約1,800億円となっています(USD=143円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は、「たばこ事業(Tobacco Operations)」で、続いて「食材事業(Ingredients Operations)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「たばこ事業」ではタバコ製品メーカーに販売する葉タバコの契約、調達、融資、加工、梱包、保管、出荷を行っています。また、「食材事業」では大手多国籍食品・飲料メーカー向けに飲食可能な植物由来の原料を提供しており、それらが形を変えフルーツジュースや野菜ジュースなどとなって消費者に届いています。

競合他社

 競合他社として、科学研究、技術と製品開発、サプライチェーン管理からオフライン配布まで、電子タバコ業界での活動を行うRLXテクノロジー(RLX)、国際的なタバコ会社であるフィリップ モリス インターナショナル(PM)、たばこと不動産の二つのセグメントで事業を展開するベクター・グループ(VGR)などがあります

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移しています。

 一方、配当は52年連続で増配中です。

 嗜好(しこう)品であるたばこは一定のニーズがあり、業績の極端なブレが少ないことから、株価も一定の範囲内で推移しています。

 今年に入ってから、米国の金利引き上げに伴うマーケット下落の影響を受けて株価は下落していますが、一方で配当は6%台まで上昇しています。

 毎年増配をしていることからも、現在の株価が下落した局面で配当を目的として保有するのにはよいのではないでしょうか。

業績動向

 この企業は業績の市場予想は発表されていません。

 2022年8月3日開示の四半期決算では、売上は前年同期比を上回りましたが、1株利益は前年同期比を下回りました。

 ドル高による為替要因で利益率が低下したものの、葉タバコの需要は引き続き堅調で、アフリカの悪天候の影響もあり供給不足の状態が続いています。

 また、「Ingredients Operations 」では人とペット向け原料が好調な売り上げを記録しました。

 コロナという危機がありながらも引き続きたばこに対する強いニーズが想定されており、今後も好調な業績が期待されます。

注意点

 ドルが強くなっていることで、タバコ生産を行うアフリカなどの新興国で為替差損が発生しており、今後のドル高によって業績に悪影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:3.16ドル
配当利回り:6.19%
株価:50.99ドル(約7,300円)

 この銘柄、権利落ち日は10月6日(権利実施は11月7日)です。

 配当利回りは9月13日時点で6.19%、株価は50.99ドルでおよそ7,300円から購入できます(1USD=143円計算)。

 2019年からの最高値は63.73ドル、最安値は38.58ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:エニス(EBF)

 パンフレットやカードホルダーなどに印刷を行う商業印刷や、文具への印刷を行う広告宣伝印刷などさまざまな印刷サービスを中心に事業展開しています。

 米国内の独立系卸売業者向けでは、最大手の企業となっています。

 時価総額は5億4,000万ドルで、日本円で777億円となっています(USD=143円換算)。

事業の注目ポイント

 事業は「印刷事業(printed business)」の単独事業となります。

「印刷事業」ではビジネスフォーム印刷、圧力シールフォーム、ラベル、タグなどさまざまな製品に対応しています。また、製品の約94%は、顧客の仕様に応じ、サイズ、色、部品点数、数量などを変えることが可能なオーダーメード製品となっています。

競合他社

 競合他社として、中小企業にビジネス管理ソリューションを提供するバレット・ビジネス・サービシーズ(BBSI)、世界中の企業とビジネスリーダーにエグゼクティブサーチ、リーダーシップコンサルティング、文化形成サービスを提供する顧問会社であるハイドリック・アンド・ストラグルズ・インターナショナル(HSII)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準近辺で推移しています。

 また、配当は昨年増配しています。

 昨年6月AmeriPrintを買収し、その少し前にはInfosealを買収するなど積極的に事業を拡大させています。

 また、業績が安定していることもあり、株価は一定の範囲内で推移しています。

 配当は5%弱あり、株価の変動も比較的少ないことから配当を目的として保有するのによい銘柄ではないでしょうか。

業績動向

 2022年6月20日開示の四半期決算では一株利益・売上ともに市場予想を上回りました。

 また、買収の効果もあり一株利益・売上ともに前年同期比の水準を上回っています。

 売上は、自社製品に対する顧客からの強い需要が継続したことおよびインフレコストをカバーするために価格を引き上げたことで拡大し、販管費の削減なども相まって利益率も改善しています。

 次回2022年9月27日開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 原材料の高騰が想定以上に進んだ際に、価格転嫁が難しくなり業績に悪影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.00ドル
配当利回り:4.75%
株価:21.04ドル(約3,000円)

 この銘柄、権利落ち日は10月上旬予定です(権利実施は11月上旬)。

 配当利回りは9月13日時点で4.75%、株価は21.04ドルでおよそ3,000円から購入できます(1USD=143円計算)。

 2019年からの最高値は22.54ドル、最安値は14.23ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株5:デル・テクノロジーズ(DELL)

 ITインフラサービス、マルチクラウド環境での管理システム構築、働き方改革への対応などさまざまなビジネスソリューションを顧客企業へ提供しています。

 約180カ国で事業を展開するとともに、世界トップクラスのサプライチェーンを所持していることで、スケールメリットを生かした事業展開を行っています。

 時価総額は295億ドルで、日本円で約4兆2,000億円となっています(USD=143円換算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「クライアントソリューショングループ事業(Client Solutions Group)」で、続いて「インフラソリューショングループ事業(Infrastructure Solutions Group)」となります。

※直近の四半期決算(企業HPより)、筆者作成

「クライアントソリューショングループ事業」では広く認知されているパソコンのデルの販売や、法人向けにITサポートの導入、設定などの事業を展開し、「インフラソリューショングループ事業」ではマルチクラウドとビッグデータソリューションを介し、顧客へDXサービスを提供しています。

競合他社

 競合他社として、エッジツークラウドのサービスとしてのプラットフォーム企業であるヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、同社は中小企業、政府、学校、医療機関などにサービスを提供するグローバル情報技術企業であるインサイト・エンタープライジズ(NSIT)、テクノロジー製品とソリューションを提供するスキャンソース(SCSC)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は年初の水準を下回って推移していますが、配当は今年2月に配当方針が承認され、4月から配当がスタートしました。

 昨年はコロナに対応するため顧客企業の需要が高まりましたが、今年はその需要が一服したことで業績が停滞し、株価は年初の水準を下回って推移しています。

 しかし、自社株買いを行い、配当を開始するなど株主還元に取り組んでいることもあり、それらが継続されることで今後株価が回復していくことが期待されます。

業績動向

 2022年8月25日開示の四半期決算では1株利益は市場予想を上回りましたが、売上は市場予想を下回りました。

 決算を受けて株価は下落し、まだ決算前の水準まで回復していません。

 第2四半期として過去最高の売上を達成したものの市場予想に届かなかったことや、1株利益が前年同期比を下回ったことも株価下落の理由となりました。

 しかし会社側は、厳しい環境下でありながら優れた業績を達成することができたと述べており、自社のビジネスが今後も顧客に必要とされる可能性が高く、今後数年間で業績がさらに拡大していく可能性があるとの見解であり、これからの株価回復が期待されます。

 次回は2022年11月23日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。 

注意点

 配当金は今年から始まったこともあり、過去の履歴から推測することができず、思った以上に配当金が受け取れない可能性があることには注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:1.32ドル
配当利回り:3.27%
株価:40.30ドル(約5,700円)

 この銘柄、権利落ち日は10月18日(権利実施は10月28日)です。

 配当利回りは9月13日時点で3.27%、株価は40.30ドルでおよそ5,700円から購入できます(1USD=143円計算)。

 2019年からの最高値は69.80ドル、最安値は26.23ドルとなっています(終値ベース)。

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