8月に輸出減速、外需萎縮でこの先一段の鈍化も

 中国の輸出が8月に減速し、市場コンセンサス予想から下振れした。国家統計局によると、5-7月に前年同月比17-18%増の力強い伸びを維持した後、8月には一転して7.1%増に鈍化(米ドル建て)。輸入は7月の2.3%増に続いて、8月も0.3%増と低成長が続いた。輸出が予想以上に大きく減速したため、8月の貿易黒字は794億米ドルと、7月の1,013億米ドルから縮小している。

 高インフレや地政学リスク、金融コストの増大、エネルギー供給のひっ迫を背景に、世界経済の一段の下押しリスクが続いているのが現状。世界の製造業PMI(購買担当者景気指数)は8月に50.3と、好不況の分かれ目となる50に迫る水準まで下落し、うちユーロ圏のPMIはここ2カ月、50未満の不況レベル。エネルギー危機を受け、欧州のリセッション(景気後退)リスクはさらに高まっている。米国経済も減速傾向にあり、企業在庫の増加率はほぼピークに近い水準。こうした外需の縮小や前年同期実績の高さが、中国の8月の輸出減速要因となった。

 輸出を地域別に見ると、主要相手国向けが軒並み低調。対米輸出は8月に4.6%減と、7月の10.6%増から急降下。対EU(欧州連合)、対日も11%増、7.6%増と、7月の12%増、18.2%増から減速した。ASEAN(東南アジア諸国連合)向けは7月に31.7%増加した後、8月は22.3%増。やはり減速したとはいえ、引き続き他地域を上回る勢いだった。

 品目別では自動車輸出が好調で、8月の自動車、自動車部品の輸出はそれぞれ66.5%増、11.8%増(7月は64.1%増、26.7%増)。半面、利上げによる輸出先の不動産市況の悪化で、家電、家具は16.6%減、13%減(7月は8.2%減、2.9%減)。旅行用品や衣類、玩具、プラスチック製品などの労働集約型製品も軒並み低調だった。

 外需の萎縮は今後も、中国の輸出の重しとなる見込み。今冬のエネルギー不足や地政学的な逆風を受けた欧州経済のリセッションリスクを受け、世界経済は10-12月にさらに大きな下押し圧力に直面する見込み。ただ、電力コストの高騰で、欧州の生産活動が制約される事態となれば、中国の輸出には逆に追い風となる可能性がある。

 一方の輸入の低成長は、内需の低迷と前年同期実績の高さが主因。製品別では原油の輸入量が8月に9.4%減と、7月並みの減少率となり、ほかにプラスチック製品や鉄鋼製品の輸入量がいずれも約15%減。半面、7月に12.5%減少した自動車輸入台数と28.1%減だった機械輸入台数はそれぞれ、20%、10%の伸びに転じた。

 中国の輸入額は今後も、PPI(生産者物価指数)の低下や前年同期実績の高さ、内需の低迷などを反映し、低成長で推移する可能性が高い。ただ、年内は輸入より輸出の減速傾向が鮮明になるとみられ、10-12月の貿易黒字は前年同期比で縮小する見込み。これにより、経済成長への貿易の貢献度が弱まる可能性が高まっている。