はじめに

今回のアンケートが行われたのは2012年2月27日から2月29日です。このタイミング、市場のセンチメントはガラッと変わったかのような印象を受けています。懸念された3月20日のギリシャ国債の償還について2次支援策が決定して一応の目途がついたということもあるでしょうし、また日銀の追加緩和策が円安を誘発したということも相まって、1月からリスクオンに傾き始めた投資家のセンチメントは一気に強気側にアクセルを踏んだ感じです。すでに市場の強気論の中には「年末株価13,000円」というような剛毅な声も聞こえるようになり、慎重論や弱気派はすっかり影を潜めた感じです。ただ皆が強気になった時が一番怖いというのも歴史の語るところであり、今回のアンケート結果もぜひ今後の投資活動のご参考にして頂ければ幸いと思います。次回も、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「楽天DI始まって以来の強気到来!」

  • Q1:2月27日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +31.14
    (1月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △3.35)
  • Q2:2月27日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +25.29
    (1月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +9.61)

今回の基準日となった2012年2月27日の日経平均株価の終値は9,633.93円です。前回実施の1月30日に比べると840円も上昇したことになりますが、前回、本アンケートの結果を時系列に分析すると市場動向に先行するということをコメントしましたが、まさにその通りになったという感じです。すなわちDIが大きく好転したトレンドを見事に反映したということです。

その点で申し上げると、3月はもっと強い市場動向になるかも知れません。というのも、今回の結果は2008年10月に本アンケートを開始して以来のプラス数値となったからです。前回は1カ月後の見通しについては絶対値はマイナスながらも前々回との比較において大きくプラスに動いたというものでしたが、今回はそのトレンド自体もさることながら、絶対値としても完全に「Historical High」を更新する結果となりました。毎週お届けしているメルマガ『大島和隆からの手紙』でもご承知の通り、私自身は慎重な姿勢を変えていませんので、正直なところ、この強気への傾斜にはかなり違和感があるのですが、集計結果に間違いはなく、また経験則で言えることも間違いないことは明らかです。

市場センチメントが強気に傾いているのは、ギリシャ向け第2次支援が決定したこと、あるいは日銀が追加緩和策を発表したこと、そして米国経済のマクロデータが引き続き市場予想よりも好結果を出し続けていることが大きな要因だと思われます。後半の設問においても、こうした流れを反映した結果が色濃く出ております。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
2月27日 DI=+43.71 DI=+24.43 DI=+31.29
1月30日 DI=△12.81 DI=△17.90 DI=+6.84

調査時点の円/ドルは81.10円、円/ユーロは109.15円です。前回のアンケート実施時の水準と比べると対ドルも対ユーロも対豪ドルも大きく円安に動いています。アンケート対象通貨には入っていませんが、「対ブラジル・レアル」や「対トルコ・リラ」など見ても同様にこの2カ月間は円安に動いています。1月の市場動向は資源国通貨が買われて円安となったという説明が適当でしたが、2月の動きは円がほとんどの他通貨に対して売られて円安になったという説明が妥当です。

じつは株価に関するDI同様、為替相場見通しについても対ドルと対ユーロは「Historical High」を更新しています。対豪ドルでは2009年10月のアンケートの時につけた33.44が最高値になるのですが、それに次ぐ結果が今回となっています。この円安を強く見通す結果が今回の株価DIに関する強気理由のひとつだと思いますが、それには日銀の追加緩和策のみならず、日本の貿易赤字や経常赤字の話が大きく影響していると考えています。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回

前回

アメリカ 33.29% 30.28% 3.01%
EU諸国 7.43% 9.32% △ 1.89%
ブラジル 31.86% 32.46% △ 0.60%
ロシア 6.57% 8.15% △ 1.58%
インド 39.86% 40.47% △ 0.61%
中国 18.71% 19.65% △ 0.94%
中東・北アフリカ 7.43% 8.44% △ 1.01%
東南アジア 45.29% 42.94% 2.35%
中南米 9.71% 6.84% 2.87%
東欧 3.00% 3.06% △ 0.06%

今回の株価上昇の背景には米国マクロが市場の予想よりも好調なものとなっているということがあるのは確かですが、先月一度足踏み状態になった米国市場への注目度が再び高まっています。また東南アジアや中南米に対する注目度合いも高まっており、投資家がだいぶリスクオンになってきていることを裏付けていると思われます。ちなみに東南アジアが全エリアで注目度No.1となっており、成長期待への根強い期待感があるものと思われます。一方、当然のことながら欧州に対しての厳しい見方は引き続いており、欧州債務危機にはいったんの終息を織り込みながらも、投資対象とするには時期尚早という判断がされているように映ります。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 76.86% 70.89% 5.97%
外国株式 23.57% 25.04% △ 1.46%
投資信託 28.71% 29.99% △ 1.27%
ETF 15.00% 17.47% △ 2.47%
FX(外国為替証拠金取引) 16.14% 16.89% △ 0.74%
国内債券 5.14% 8.59% △ 3.45%
海外債券 11.57% 9.17% 2.40%
17.71% 18.34% △ 0.63%
原油 8.43% 8.01% 0.42%
商品 3.57% 4.51% △ 0.94%
REIT 11.14% 10.63% 0.52%
CFD 2.86% 3.35% △ 0.49%

本アンケートを開始して以来の最強気を記録した日本株市場の見通しを背景に、今後注目する投資分野として当然「国内株式」が断トツの第一位となりました。ただ残念ながらこれは「Historical High」ではありません。とはいえ、アンケートにご回答いただいた方の4分の3以上が注目されているというかなりなハイスコアであることは確かです。

また円安見通しを背景として、海外債券の注目度合いも前月比ポイントを上げています。ただ絶対値自体はまだ相対的に低い状況です。一方、国内債券については、これ以上の金利低下は望み薄と思われたのか、それとも絶対値として魅力を感じないということなのか、注目度合いはそもそも低い8.59%からさらに下がって5.14%まで低下しました。その他のアセットクラスについては、あまり大きな変動は見られません。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。