※本記事は2021年9月22日に初回公開したものです。 

 投資信託での積み立てが長期投資と相性が良いということと、高値圏から始めても利益を期待できるという点は積立投資のテクニック(1)でご説明しました。では早速ですが、ここで質問です。

Q反対に積み立てが不利に働くことはあるのでしょうか?

解答

あります。

 積み立てが不利に働くパターンは主に2つ。

(1)基準価額が大きく下がることなく、右肩上がりの上昇を続ける

(2)基準価額が一度上昇したのち下落する

 では、今回も投資元本5万円は同じながら、「一括投資」「積立投資」の2つのケースを比較しながら検証していきましょう。

・ケースA:基準価額1万円のときに一括投資
・ケースB:毎月1万円ずつ5カ月にわたって積み立てていった場合

積立投資の不利パターン(1)

 まずは、(1)の「右肩上がりの上昇を続ける」パターンから見ていきます。

 積み立てを開始したときの基準価額が1万円で、その後4カ月、毎月1,000円ずつ、基準価額が上昇していったと仮定します。

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注:購入手数料はゼロとし、約定日などの細かい条件は考慮しない
注:購入金額あたりの購入口数=(10,000口÷基準価額)×購入金額
注:口数の端数切り上げ

 上表のように、積み立て開始後に基準価額が上昇を続けると、その都度、上昇した基準価額で投資信託を購入していくことになります。つまり、購入できる口数が毎月減っていくのです。

 最終的な評価額は、最後の月の基準価額が1万4,000円になったので、次のようになります。

・ケースA:7万0,000円(50,000口×14,000円÷10,000)
・ケースB:5万9,165円(42,261口×14,000円÷10,000

 そしてリターンは、ケースAが+40%、ケースBは+18.3%になりました。

積立投資の不利パターン(2)

 次に(2)の「一度上昇したのち下落する」パターンを見ていきましょう。

 積み立てを開始したときの基準価額は1万円。その後の2カ月は基準価額が毎月1,000円ずつ上昇したのち、毎月1,000円ずつ下落。最終的に開始時の1万円まで戻ったと仮定します。

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注:購入手数料はゼロとし、約定日などの細かい条件は考慮しない
注:購入金額あたりの購入口数=(10,000口÷基準価額)×購入金額
注:口数の端数切り上げ

 最終的な評価額は、最後の月の基準価額が1万円まで戻ったので、次のようになります。

・ケースA:5万0,000円(5万0,000口×10,000円÷10,000)
・ケースB:4万6,156円(4万6,516口×10,000円÷10,000)

 そしてリターンは、ケースAが0%、ケースBは▲7%になりました。

タイミングを見て、スポット購入すべきなのか?

(1)と(2)、2つのパターンを比べると、少なくとも(1)については、基準価額が低かった1カ月目の時点でスポット購入をしていたほうが良かったということになります。

 しかし、これはあくまでも結果論にすぎません。基準価額がどのような動きをするか、投資を始める段階では誰も分かりません。スポット購入で5万円分投資した後、反対に毎月基準価額が1,000円ずつ下がっていったとしたら、今度は「一度に買って失敗した…」と、激しく後悔することになります。

 今回ご紹介した(1)と(2)のパターンでも、この後、中長期的に積み立てを継続していけば、リターンが向上する可能性は十分にあります。

 繰り返しになりますが、積立投資は、基準価額が上下に変動することを前提とした投資方法です。今後のマーケットの方向性について確固たる自信がない限りは、やはり最初から積み立てを選び、大きく損をする可能性を低くしたほうが賢明でしょう。