はじめに

今回のアンケートが行われたのは2011年12月26日から12月28日です。2011年の年末最後に発行したメルマガ『大島和隆からの手紙』でもお伝えしましたが、今回のアンケートが行われた昨年末ほど、世界中で未解決の重要課題が山積したまま越年しようとしていた年末は少ないと思っています。その結果として、世の中では「リスク・オフ」という単語が一般的となり、すなわち投資家は誰もリスクを取りたがらないと言われる状況で皆様にご協力をお願いしました。年末年始に発信された多くの市場関係者のコメントを見ても、年末年始のご祝儀的色彩の強い恒例の楽観論がだいぶ影をひそめたという感じでしたが、アンケートの結果も総じて同様なものとなりました。ただ「リスク・オフ」と言われながらも、投資家は常に諦めてはいないという感触は、設問4「今後、注目する投資先」などに現れたように思います。むしろ大胆なアロケーションの変更などが今後あるのかも知れません。いずれにしましても、今年でこのアンケートも足掛け3年目に突入しました。ここまで続けてこられましたのもひとえに皆様方のご協力のおかげと心より感謝しております。設問の改良や解析方法の見直しなども今年は時機を見て行いたいと考えております。引続き皆様の日頃の投資活動の一助になればと考えながらコンテンツの充実も行なって参りますので、今年もどうか宜しくお願い申し上げます。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「短期は更に弱気に、3カ月後は気持ち持ち直し?!」

  • Q1:12月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △23.80
    (11月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △21.77)
  • Q2:12月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △5.20
    (11月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △9.98)

今回の基準日となった2011年12月26日の日経平均株価の終値は8,479.34円です。「棹尾の一振」といった相場格言があることさえ嘘のように、市場は8,000円台前半で安値膠着のまま大納会を迎えました。一番の問題点は、極端に細った売買代金で年末最終週は一日のそれが5,000億円をも下回る日が2日間もありました。そのくらい市場がエネルギーを失っているため「投資家はリスク・オフに陥っている」というような解説が多く聞かれました。原因は欧州債務危機が本丸とされていますが、売買代金の減少についてはそれ以外の要因があるように思います。なぜなら、少なくとも日本市場には円高の流れを止められないほどに外国人投資家の資金自体は流入しているからです。国債の発行残高に占める外国人投資家の保有比率は上昇しており、それを事実として証明できるのですが、問題はそれが株式投資に向かわずリスクの低い短期債を中心に集まっているということです。日本の株式市場における外国人投資家のプレゼンスはすでに7割程度となっており、もし彼らが日本に持ち込んでいる資金が株式に向かえば相当な上昇力となるはずです。しかしそうはならないのは、原因が欧州債務危機だけではない、日本固有の問題があるということだろうと思われます。

その最たる理由が、国内企業のことを知り尽くしているであろうはずの日本の個人投資家、あるいは日本の年金資金までもが国内企業への株式投資を控えていることが、統計上も明らかだということです。日本人自らが買わないものを、外国人投資家に買って貰おうというのは、ある意味虫がいい話です。

欧州債務危機に関して目先の気掛かり材料は、3月20日に大量償還を迎えるギリシャ国債が同国への2次支援策によってうまく借り換えられるかということです。この問題を市場が気にして「リスク・オフ」を続ける限り、株価の反転は望み薄であり、その意味でも1カ月先のDI指数が前月より悪化したと言えるでしょう。悪化の大半は強気派が前月の19.48%から14.80%に減少したことが影響しています。ただ3カ月先、すなわち3月20日以降を想定した場合には、ギリシャ問題の結果はともあれ、最悪期はとにかく脱しているということで、先月アンケートよりやや持ち直した感じです。しかし△9.98が△5.20になっただけですから、これをセンチメントの改善と楽観するのは尚早だと思われます。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
12月26日 DI=△2.60 DI=△38.40 DI=+3.40
11月28日 DI=△6.22 DI=△35.84 DI=+1.47

調査時点の円/ドルは77.99円、円/ユーロは101.94円です。このアンケートの集計後、ユーロは100円台を割り込む結果となりましたので、対ユーロのDIが前月よりも悪化して△38.40となったことも頷けます。円/ユーロが100円台を割り込んだのは2001年6月1日に瞬間的につけた99.98円以来のことであり、その瞬間値を除くと2000年12月にまで遡ります。2008年7月23日には1ユーロが169.97円もしたことを考えると、いかに急激な変化(過大な信頼⇒信頼の瓦解)が起こっているのかということがお分かりいただけるだろうと思います。

一方、対ドルの動きは日銀の覆面介入の甲斐あってか、前回の水準77.71円からほとんど変わっていません。為替市場では「行き過ぎた円高」という議論も起こる一方で、現時点でも、まださらなる円高見通しを持っている方もおり、今後の動向からは目が離せません。ただDI上では前回の△6.22%から△2.60%へと若干減少しており、あまり円高へのバイアスは掛かりにくくなっているように見えます。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 34.20% 27.82% 6.38%
EU諸国 6.40% 8.35% △ 1.95%
ブラジル 36.00% 27.99% 8.01%
ロシア 8.80% 9.82% △ 1.02%
インド 41.60% 37.48% 4.12%
中国 18.40% 20.29% △ 1.89%
中東・北アフリカ 7.80% 8.67% △ 0.87%
東南アジア 41.00% 40.75% 0.25%
中南米 8.80% 10.80% △ 2.00%
東欧 4.00% 3.44% 0.56%

米国に対する注目度合いがここまで回復したのは、2008年10月に本アンケートが開始して以後、2009年1月にオバマ大統領が熱狂的な興奮の中で就任演説を行い「Yes, We can!」旋風が巻き起こって以来です。この事実を引用すると、2009年がそうであったように、米国株式市場はいったん調整をしないとならないのですが、現状は労働市場、住宅市場、そして消費関連ともにマクロ統計の回復を伴っていますので、やや流れは違うといえます。あの時はまだリーマン・ショックの敗戦処理が緒についたばかりでした。また事実として、あれだけ大騒ぎになった国債の格下げを経ても、なお米国国債は買われており、米国10年国債の利回りは2%以上に大きく上昇したことがありません。また今年が4年に一度の大統領選挙の年ということも影響しているだろうと思われます。経験則では米国大統領選挙の年は株価が上昇する傾向にあるからです。

米国がもし景気回復をするとなるとその恩恵を日本が受けることは確かですが、やはり南米諸国がその恩恵を受ける度合いはそれ以上に高く、ブラジルが注目する投資先としてポイントを再び稼いでいる背景の一つと思われます。またホットマネーの流入による景気過熱によるインフレ懸念を嫌って利上げしたり、課税を厳しくしたりしてきた政策が転換されたことも影響しているかも知れません。当然のことながら、その一方でEU諸国に対しての投資家の厳しい目線は引き続き冷ややかさを増しており、投資対象とはみられていないようです。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 66.80% 67.92% △ 1.12%
外国株式 24.00% 23.08% 0.92%
投資信託 30.40% 30.61% △ 0.21%
ETF 21.20% 17.68% 3.52%
FX(外国為替証拠金取引) 23.00% 18.49% 4.51%
国内債券 11.20% 7.04% 4.16%
海外債券 11.80% 9.33% 2.47%
16.60% 16.53% 0.07%
原油 5.80% 4.91% 0.89%
商品 5.40% 4.75% 0.65%
REIT 11.00% 9.17% 1.83%
CFD 4.80% 4.26% 0.54%

前回比で見るとそれなりにデコボコがあるのですが、国内株式を除くとどれもこれもが注目度合いが均一化してきたという印象です。良く言えば、ここに掲示している12種の金融商品に対して投資家の認知度が高まってきたということが言えると思いますが、裏返して考えると、投資家がビークルとして何を利用して投資行動を起こしたら良いのか、迷い始めているということになるのかも知れません。

FX(外国為替証拠金取引)がポイントを伸ばして2010年9月以来の注目度合いとなりました。この注目度合いの水準は、米国QE2に絡んで円高が大きく進行した時と同水準であり、かなり市場は円高に対して確信犯的な状況になっていた頃です。DIの結果としてはドル円相場にあまり変化が起こらないことを見越しているようですが、だからこそ稼ぎやすいと考えられている方が多いのかも知れません。海外債券がポイントを伸ばしているところを見ると、円高はそろそろピークという見立てでもあるかと思います。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。