はじめに

今回のアンケートが行われたのは8月29日から8月31日です。半ばレームダック状態に陥っていた永田町に、新しい民主党代表、すなわち第95代内閣総理大臣に就任するのは誰なのかという民主党代表選挙が行われ、新しい風が吹き込む流れの中で今回のアンケートは行われました。事前の世論調査で人気を集めていた前原氏の対抗馬として、最大勢力を誇る小沢派が担ぎ出したのは海江田氏。菅直人前首相が正式な辞任をやっと表明してからほとんど政策論争もないままに行われた新総理を決定する選挙を見ながら、皆さんはどんなことを考えて市場の動きをご覧になり、この先の市場を展望されていたのでしょうか。一方で米国経済の動向や欧州の信用リスク問題なども引き続き懸念材料であったのも事実です。内に外に難題を抱えながらの今の市場環境の中で、個人投資家の皆様の生の声を集計しお届けしたいと思います。今回もこのアンケート結果が皆様の日々の投資活動に、少しでもお役に立てればと願っております。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「株価水準は下がっても、なおその慎重な姿勢は変わらない」

  • Q1:8月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △4.19
    (7月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △7.78)
  • Q2:8月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +14.94
    (7月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +12.49)

今回の基準日となった2011年8月29日の日経平均株価の終値は8,851.35円です。前回のアンケート基準日である7月25日の10,050.01円よりも値幅にして約1,200円、変動率にして約12%もの下落となったにもかかわらず、DIの数値はわずかに数ポイントずつポジティブに動いただけで、大きな流れが変わったと見ているとは思えない結果が出ました。3月15日に付けた震災後の安値水準(8,605.15円)まであとわずかという水準でありながらも、この水準を割安感あるところと捉えてはいないことが浮き彫りになりました。

毎週月曜日発行の「大島和隆からの手紙」で、株式市場の下落要因や投資環境を詳しく解説しておりますが、そこでも指摘させて頂いている通り、日本の政治への関心は引き続き市場環境を見定めるという点ではあまり大きなポイントではないということが見て取れます。では何が問題なのかと言えば、やはり米国の景気動向であり、欧州の信用リスク問題なのではないかと思われます。この点についてはいまだに明確な変化が何も確認できていない以上、こうした結果になることは致し方ないことなのかも知れません。

このアンケート結果を集計し、この原稿を書き上げている傍らで野田新内閣の顔ぶれが決まりました。「どじょう内閣」と何とも冴えないニックネームのついた内閣ですが、次回にこのアンケートをお願いした時には是非とも市場からの注目と信認を取り戻し、多くのポジティブ・コメントを発することができる状況になっていることを期待したいところです。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
8月26日 DI=△12.85 DI=△6.98 DI=+16.48
7月25日 DI=△22.78 DI=△21.14 DI=+4.71

調査時点の円/ドルは76.64円、円/ユーロは111.34円とともに前回よりわずかに円高に動いたという感じにしか見えませんが、8月19日には円/ドルは戦後最高値を更新する水準にまで円高が進み、いったんは日本単独の為替介入なども行われて80円台にまで戻すものの、再び円が買われて上述の水準になっているというのがこの期間の大きな流れです。

背景には史上初の米国国債の格下げという事態に、世界中の投資家がリスク回避的になり、ドルからもユーロからも資金を引き揚げ、結果、行き場を失った安全志向のマネーが消去法的に円に向かってきたということがあげられます。この流れの中、金価格が市場最高値をつけたことからも、一方で通貨リスクは取れないと思った資金が金に向かったということも、やはり証明されています。

ただ、前回に比べるとやや対ドルや対ユーロでの円高見通しが緩和されているように見えるのは、野田新首相が元財務相であることで、積極的な円高対策を取ってくると考える市場関係者が多いと判断したからかも知れません。豪ドルでの円安見通しがDIで+16.48まで振れているということは、やはり資源のある国の通貨が選考されているという証なのでしょう。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 24.86% 26.07% △ 1.21%
EU諸国 8.24% 8.76% △ 0.52%
ブラジル 37.29% 40.53% △ 3.24%
ロシア 8.10% 9.64% △ 1.54%
インド 39.66% 43.59% △ 3.93%
中国 22.49% 20.04% 2.44%
中東・北アフリカ 8.80% 8.11% 0.69%
東南アジア 36.87% 35.27% 1.60%
中南米 9.08% 12.05% △ 2.97%
東欧 3.91% 5.70% △ 1.78%

新興国市場に対する個人投資家のリスク回避的な姿勢は前回に引き続き継続しています。ブラジルは前回と合わせるとこの2カ月で6ポイントも低下しています。同様にインドやロシア、中南米などもポイントを比較的大きく失っています。一方で、中国が前回失ったポイント分をほとんど取り返しました。

一方で、米国は前回、前々回とポイントを上げてきましたが、さすがに格下げを受けた渦中の国であることもあり、今回はポイントを失っています。実はもっと低下するかとも思いましたが、予想されたほどには個人投資家の皆さんは悲観的には見ていないということのようです。その意味では、EU諸国が東欧などと合わせ、へこんだままで居ることは、市場の目線が本当はどこにあるのかを雄弁に語っている気がします。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 6411% 64.29% △ 0.19%
外国株式 24.30% 24.32% △ 0.01%
投資信託 35.20% 38.01% △ 2.81%
ETF 19.55% 18.07% 1.48%
FX(外国為替証拠金取引) 21.37% 21.91% △ 0.54%
国内債券 7.40% 7.67% △ 0.26%
海外債券 12.85% 14.57% △ 1.72%
17.04% 18.51% △ 1.47%
原油 4.61% 5.15% △ 0.54%
商品 4.47% 5.04% △ 0.57%
REIT 9.50% 13.25% △ 3.76%
CFD 3.35% 4.49% △ 1.14%

今回は明らかに投資家がリスク回避的になっているかということをまざまざと見せつけられました。今回、投資信託やREITのポイントが大きく低下しているのが目立ちます。これらの2つは、まさに現状国内の売れ筋商品であることからも、リスク回避の傾向はあきらかといえます。ただ一方でETF(上場投信)がポイントを伸ばしていることに注目しています。ETFは先進国だけでなく、新興国単体の指数なども扱っており、多くの種類があることから、世界中の市場のINDEXをトレースするものを探すことができるといわれています。世界中の株式市場が大きく傷んだことで、その中には可能性の高い市場があり、そこに投資する機会を与えてくれる数少ない金融商品と言う点に着目されているのだろうと思います。ちなみにETFは株式関連に限らず、商品や債券に連動したものも存在していることをお忘れなく。

一方、あれだけ騒がれている金がポイントを失っていることにも注目しています。確かに金価格はいったん1,900ドルという最高値を更新する場面もありましたが、為替の円高影響を考えると、本邦個人投資家の皆様にとっては、抱えたリスクに見合う期待リターンの水準には届かないと踏まれているのかも知れません。そう見て考えると、海外債券がポイントを失っているのもやはり為替の影響によると見ることができ、また金に対する仮説の正しさも見えてくる気がします。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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