8月のビットコインイベント

NEW! 8月24日 イーサリアム「マージ」正式決定、9月15日に決まる
NEW! 8月12日 ミキシングサービス・トルネードキャッシュ開発者、蘭当局が逮捕
NEW! 8月11日 BlackRock、BTC私募投信提供開始
NEW! 8月2日 MicroStrategy、マイケル・セイラーCEO退任、会長に

*2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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8月の振り返り

8月のビットコイン価格(円)とイベント

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

 8月のBTC(ビットコイン)相場は上値の重い展開。

 月前半はじりじりと値を上げたが、2万5,000ドル(約345万円 138円換算)に跳ね返されると、今度は2万ドルを割り込んだ。

 7月に発表された第2四半期の米GDP(国内総生産)は一般にリセッション入りの基準となる前期比で2期連続マイナス成長となった。市場では、これによりFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが早期にピークアウトし、来年5月には利下げに転じるとの見方が浮上した。

 この結果、8月に入っても弱い経済指標が出ると、利上げ鈍化期待でリスクオンになる相場が続き、特に8月10日に発表された7月のCPI(消費者物価指数)が前月の9.1%から8.5%に低下すると、そうした市場の楽観的な見方が強まった。

 そうした中、BTC相場は2万5,000ドル水準に何度か上値を抑えられるも、15日には一時的に上抜けに成功した。

 しかし、16日に9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での75bp利上げを支持する可能性に触れたジェームズ・ブラード セントルイス連邦準備銀行総裁を皮切りに こうした市場の甘い見通しに対して警鐘を鳴らすFRB高官発言が相次ぎ、米株は下落に転じ、BTCも2万ドル台まで値を落とした。

 その後はジャクソンホール会議を控え2万1,000ドル台でのもみ合い推移が続いたが、同会議でのジェローム・パウエルFRB議長の講演内容がタカ派なものだったことから米株が下落、BTCも2万ドルを割り込んだ。

 しかし2万ドル割れでは下げ渋り、2万ドルを挟んでのもみ合い推移が続いている。

9月の見通し

テクニカル的には上値が重そう

一目均衡表で見た8月のBTC相場

(出典:Trading View)

 この8月の相場と9月の相場の見通しは、一目均衡表を見ると分かりやすい。7月に約3カ月ぶりに雲の中に入ると、しばらくは方向感のない取引が続いたが、やがてじりじりと上昇、雲の上限の上抜けをトライした。この雲の上限が2万5,000ドルで4回目のトライで上抜けに成功したが、そこで失速すると今度は雲の下限を割り込んでしまった。

 すると今度は雲の下限2万2,000ドルがレジスタンスとなり上値を抑え始めた。それでも8月末には雲が薄くなり、上抜けのチャンスもあると思われたが、下がってきた雲を下に迂回(うかい)するような形でレンジを切り下げている。

 これで見ると9月の相場もしばらくは上値を抑えられそうだが、20日ごろから月末にかけて雲が薄くなるので、その辺りが上抜けトライのチャンスになり得る。

材料的にはまだ調整余地あり

 材料的には、8月の金融市場はFRBの金融政策一色となった。特にジャクソンホールでのカンザスシティ連銀主催のサマーシンポジウムに注目が集まったが、その理由は夏休みシーズンでイベントが少なかったからだけではない。

1970年代から1980年代のスタグフレーションとFRBの対応

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 上は米国のGDP(前年同期比年率)CPI(同)FF金利とリセッション時期(赤地)だ。1970年代初頭のインフレを抑えるためにFRBは利上げで対抗したが、1973年ごろからリセッション入りすると翌年にはインフレの鎮静化を待たず利下げに転じた。重要なのはこの際インフレよりFF金利が下回る実質金利がマイナスになっていたことだ。

 この結果、1980年代の景気後退は2度に及ぶ長く深いものとなり、インフレも1970年代を遥かに上回り、鎮静化に数年を要した。この間、さすがにFF金利はピークの20%から引き下げているが、インフレ率よりもFF金利を高く維持している。すなわち実質金利をプラスにしてインフレ退治を優先した訳だ。

 これが最近になってFRB高官が口にし始めた1970年代の反省というものだ。

利下げを織り込むFF先物金利

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 一方で市場の見方は異なっている。上はCME(シカゴ先物取引所)のFF金利先物に織り込まれている将来のFF金利水準の推移だ。これを見ると2023年3月の水準を同年5月、6月、12月の水準が下回っている。これは、市場が、来年3月に利上げのピークを迎え、その後は利下げが始まると予想していることを示している。

 さらにGDPが2期連続でマイナスとなった7月28日には、そのピークも3.2%と今後0.8%強の利上げしかしないと市場は思い込んだ。これから実質金利をプラスにもっていこうとしているFRBとの乖離(かいり)はあまりに大きく、このまま放置していては、どこかで市場は大クラッシュを起こしかねない。

景気後退を好感して上昇した米株

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 そう考えたFRB高官たちは口々に市場の見方は甘すぎると警鐘を鳴らし続けたが、市場はなかなか聞く耳を持たず、米株市場も上昇を続けた。18日にジャクソンホールでのパウエル議長講演が26日に決まった辺りから、その内容を予想するレポートが出回り、さすがにこの市場の見通しに修正を迫るだろうとの見方が広まり、米株・BTCとも低下に転じた。

FF金利先物市場に織り込まれた利下げ幅

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

 この結果、市場が織り込む利下げ幅は縮小、ようやく2023年3月から5月にかけての利下げはゼロとなり、5月から6月もほとんど解消したが、再三FRB高官が警告しているのにもかかわらず2023年6月から12月はいまだに30bp以上の利下げを織り込んでいる。この利下げの織り込みが解消するまでは、足元の調整地合いが続くものと考える。9月の相場も秋晴れとはいかなそうだ。

イーサリアムのハードフォークが下支え

 9月の相場を考える上で見落とせないのがETHのマージのハードフォーク(HF)だ。おさらいになるがこれはETHがいよいよPoWからPoSに移行するのだが、同時にETHの発行額が減少する。昨年7月にロンドンHFで発行量が減少するアップデートが行われ、おおむねアップデートの前後2週間(計4週間)の間にETHは大きく上昇しており、今回も期待されている。

イーサリアム、昨年の供給減による上昇

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

 このマージでもう一つポイントとなるのが分岐を伴うHFの有無だ。HFとはブロックチェーンが分岐することを指すが、今回のようなアップデートをするためにHFを行うこともある。アップデートしたチェーンを正として古いチェーンはマイニングしないで放置する方法を採る。

分裂しても下がらなかったBTC価格

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

 一方、関係者の合意が取れず、けんか別れのような形でチェーンが二つに分岐することもある。古くはETH(イーサリアム)とETC(イーサリアムクラシック)、BTC(ビットコイン)とBCH(ビットコインキャッシュ)などがある。二つに分かれるのだから、価格も二つに分かれそうなものだが、そうはならなかった。

 すなわち、分岐前のBTC価格=分岐後のBTC価格+BCH価格になるので、分岐後にBTC価格が下がると思ったら、そうはならなかった。その結果、ハードフォークすればあたかもおまけのトークンがもらえるような期待感から価格が事前に上昇すると認識されるようになった。

 残念ながらBCHがさらにBSVと分裂する際の泥仕合で逆にハードフォークにネガティブなイメージが付くようになったが、今回はある程度お互いやむを得ず分裂するという側面もあるので、そろそろETHに上昇圧力がかかり始め、BTCのサポートになると考える。

アノマリーは微妙

 最後に恒例のアノマリーだが、先月は「8月はなんとか陽線が続いて、9月の大きな下げが来る展開」を予想した。そして9月は4勝7敗とパフォーマンスが悪く、また陽線から陰線に転じた過去27回のうち翌月陽線に転じたのは13回でほぼ半々。従ってアノマリー的にはやや分が悪い。

BTC月別騰落表

(出典:Bloombergより楽天ウォレット作成)

本格回復が近づいた

 従って、この9月は安値圏でのもみ合い推移を予想する。というのは前回2018年12月に大底を付けた際、1月に持ち直しの兆しが見えたものの失速した。そこで8月は何とかもつが9月に失速するシナリオを描いていたが、その下げを8月にこなしたイメージでいる。

 そして9月末から10月ごろに反発を始め、12月の間に戻り高値を更新してダブルボトムのような形で本格上昇が始まるイメージだ。そういう意味では8月後半の下げで本格回復に一歩近づいたと考えている。

前回底入れ時(2018年12月)の価格推移と今後のイメージ

(出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成)

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

7月20日 テスラ社、保有ビットコインの3/4を売却済
7月14日 レンディング大手Celsius Network、破産申請
イーサリアム、アップデート「マージ」予定日9月19日に決まる
7月6日 取引アプリVoyager Digital、破産申請
7月1日 交換所大手FTX、レンディング大手BlockFi救済で合意
ヘッジファンドThree Arrows Capital、破産申請
6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ
6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
5月13日 野村証券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日 米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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