はじめに
東日本大震災から3週間が経ちましたが、いまだ被災地からは手がつけられない状況が続いている痛ましい報道が届き、また福島原子力発電所の状況も情報として何が正しくて、何が問題かということが定かでない状態が続いています。また直撃する被害こそなかった首都圏においても、計画停電などによる不自由な生活を強いられ、その対象地域の製造業などにおいては、まさに二次災害と呼ぶに相応しいダメージが徐々に拡大しつつあるとも報じられています。そんな厳しい環境の中で行われた今回のアンケートの集計結果をお届けします。状況が状況ですから、なるたけ冗長なコメントは控えつつ、主として数値結果をご覧いただき皆様のこれからの投資活動の一助として頂ければ幸いです。一日も早く皆様に平穏な日々が戻ってくることを祈念しております。
楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆
1.日経平均の見通し
個人投資家の見方「当面、日本株式市場には弱気。」
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Q1:3月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △28.98
(3月7日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +1.04) -
Q2:3月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △11.23
(3月7日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +12.50)
今回の基準日となった2011年3月28日の日経平均株価の終値は9,478.53円です。3月11日の大引け間際に東北地方太平洋側エリアを中心に襲った東日本大震災の影響と、それに続く福島原子力発電所の事故の報に市場はいったん底抜けし、日経平均先物のザラバ安値は7,800円という極端な急落を見る場面もありました。そして直後にまさにセオリー通りに下落幅のおおよそ半分超を取り戻しました。阪神大震災の時でも同様でしたが、急落してリバウンド、そして被害状況など震災の影響を徐々に織り込んでいくという状態が続いたことを想起させます。あの時は、ベアリング・ショックへ続く流れがあったため、不思議な力で日経平均株価が先物によって引き摺りあげられている不自然な印象がありましたが、今回はそのイメージはありません。ただ福島原子力発電所のシリアスな状況は長期化するのか、あるいはさらに悪化するのか、といった不透明要素が大きく市場を覆い、さらに当面は首都圏への電力供給能力が決定的に不足するという経験のない状態を前にしているというのが前回の阪神大震災後の教訓が生かしきれない決定的な違いと言えます。やはり市場参加者は想定される通り、震災直前のデータと比べるまでもなく、かなり弱気に傾いていることがわかります。
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
3月28日 | DI=+19.58 | DI=+16.08 | DI=+23.82 |
3月7日 | DI=+12.71 | DI=+17.60 | DI=+18.54 |
調査時点の円/ドルは81.68円、円/ユーロは114.93円です。震災直後の為替市場では生命保険会社や日本企業の海外資金の国内回金が大量に行われるだろうという思惑から、一気に史上最高値である79.75円を上回る76.20円まで円高に振れる場面も見られましたが、日米欧の先進7カ国(G7)による協調介入の決定や、実際にそうしたレパトリが見られなかったこともあって急速に円は値を戻した段階で今回のアンケートが行われています。
じつはこの水準においてもまだ投資家の多くが円安を志向しているということにやや不安を覚えます。為替の決定要因の大きな一つが購買力平価に代表される国力の評価だからです。ドル、ユーロ、豪ドルの全通貨に対してかなり強く円安を見ているということの意味は、日本の将来対する漠然とした投資家の皆さまの不安の表れなのかも知れません。
3.今後注目する投資先
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 30.80% | 27.29% | ↑3.51% |
EU諸国 | 9.10% | 7.81% | ↑1.29% |
ブラジル | 34.60% | 37.29% | ↓△ 2.69% |
ロシア | 12.14% | 10.83% | ↑1.31% |
インド | 41.73% | 46.25% | ↓△ 4.52% |
中国 | 25.95% | 23.85% | ↑2.09% |
中東・北アフリカ | 7.74% | 7.92% | ↓△ 0.18% |
東南アジア | 29.74% | 32.19% | ↓△ 2.45% |
中南米 | 8.35% | 9.79% | ↓△ 1.45% |
東欧 | 4.70% | 3.75% | ↑0.95% |
最近の市場動向を素直に反映して、米国への注目度合いがオバマ大統領誕生以来の水準にまで高まるとともに、BRICsと言われた新興国市場への人気が剥落しています。世界景気の大きな回復の中で、新興国だけが牽引役ではないということが広まりつつある表れだと思います。ただ下がったとはいえ、いまだにインドは41.73%、ブラジルは34.60%と米国のそれより遥かに高いということがグローバルな拡大を示す証だと思われます。ただ中国がかなり低い状況になってきたのはやや気になるところです。この点については今後も引き続き注視していきたいと思っています。
4.今後注目する投資商品
(複数回答)
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 68.74% | 65.42% | ↑3.32% |
外国株式 | 25.95% | 23.75% | ↑2.20% |
投資信託 | 27.31% | 33.54% | ↓△ 6.23% |
ETF | 19.58% | 20.21% | ↓△ 0.63% |
FX(外国為替証拠金取引) | 21.55% | 19.79% | ↑1.76% |
国内債券 | 5.46% | 6.25% | ↓△ 0.79% |
海外債券 | 10.62% | 11.98% | ↓△ 1.36% |
金 | 16.24% | 18.23% | ↓△ 1.99% |
原油 | 8.95% | 10.94% | ↓△ 1.98% |
商品 | 6.53% | 6.35% | ↑0.176% |
REIT | 11.53% | 14.58% | ↓△ 3.05% |
CFD | 3.79% | 3.44% | ↑0.36% |
残念なことに投資信託の人気が大きく剥落し、過去最低水準に近づいています。ただ投資信託という仕組みそのものが否定されているのだとしたら大問題ですが 国内株式、外国株式、そしてFX(外国為替証拠金取引)といったセグメントが上昇しているところと合わせ考えると、こうした市場がボラタイルに上下する局面においては、ネット証券のお客様は自ら投資判断を下されて、自ら売り買いをされる商品の方を好まれるということだと思います。確かに「長期投資でコツコツと資産を殖やしましょう」という言い方は、まさにこの刹那、やや虚しく響くと思われるというのが運用会社の社長として、またファンドマネジャーとしての正直な気持ちでもあります。むしろ、こうしたタイミングで株式やFXのような商品の人気が高まるということに、個人投資家の皆様の逞しさを思い知らされる気がします。
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。
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