先週の日経平均は2万7,567円で終了
先週末16日(金)の日経平均株価は2万7,567円で取引を終えました。前週末終値(2万8,214円)からの下げ幅は647円、週足ベースでも下落に転じています。
図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2022年9月16日取引終了時点)
先週の日経平均の値動きをもう少し細かく見ていくと、週の前半は株価の戻りをうかがう状況だったのが、週末にかけて急落に向かうという展開でした。
また、上の図1を見ても分かるように、週初や週の半ば、そして大きな陰線を挟んで週末、といった具合に、3回にわたってローソク足の間隔を空ける「窓」が出現しています。とりわけ、最初の二つの窓は25日移動平均線をまたぐかっこうで開け、ローソク足が取り残されてしまう「アイランド・リバーサル」となっていて、あまり良い形ではありません。
もちろん、週末時点のローソク足は75日移動平均線がサポートとして機能しており、下値の目安となるところで下げ止まってはいるものの、6月20日と7月1日の安値同士を結んだトレンドラインを下抜けているほか、下段のMACDも下向きかつ「0円」ラインを下回っていますので、積極的に押し目を拾いに行けるようなムードでもなさそうです。
そのため、今週は75日移動平均線の攻防を意識するかっこうでスタートしそうです。
図2 日経平均(日足)75日移動平均乖離率のボリンジャーバンド(2022年9月16日取引終了時点)
そこで、この75日移動平均線を基準に、75日移動平均線乖離(かいり)率をボリンジャーバンド化したもので今週の想定レンジを探っていくと、上の図2のようになります。
中心となるレンジは、プラスマイナス1σ(シグマ)となり、16日(金)時点の75日移動平均線の値(2万7,517円)で計算すると、2万7,186円から2万8,774円となります。株価がさらに大きく動いた際には、さらにその幅をプラスマイナス2σへと広げることになります。
続いて、先週末にかけての株価下落の状況についても振り返っていきます。
先週の米NYダウ、終値は3万822ドル
図3 米NYダウ(日足)とMACD (2022年9月16日取引終了時点)
上の図3は米NYダウ(ダウ工業株30種平均)の日足チャートです。先週末16日(金)の終値は3万822ドルでした。
図1でも見てきた日経平均と同様に、先週のNYダウも堅調なスタートでした。週初12日(月)の取引では4日続伸となり、50日移動平均線も超えてきたのですが、翌13日(火)以降はこうした株価反発ムードが一変してしまいました。
そのきっかけとなったのが、同日に公表された米8月CPI(消費者物価指数)です。細かい数値や分析については他に譲りますが、インフレの高止まりを示唆する結果だったことで、「米金融政策の引き締め姿勢が続くのでは?」という観測が高まり、相場の重しとなりました。
実際に、この日のローソク足は大きな陰線だったほか、6月17日と7月14日の直近安値同士を結んだトレンドラインを下抜け、4日続伸による株価の上昇分も全て吐き出すかっこうとなりました。下段のMACDも下方向への意識を強めています。
今週の国内株市場は、祝日が集中するシルバーウイークの時期と重なり、20日(火)~22日(木)の3営業日のみとなりますが、その合間を縫うようなタイミングで日米の金融政策イベントが予定されています。
具体的には、FOMC(米連邦公開市場委員会)が20日(火)~21日(水)、日本銀行金融政策決定会合が21日(水)~22日(木)というスケジュールなのですが、とりわけ、先ほどの米8月CPIを受けて開催されるFOMCの動向が、今週の株式市場の最大の焦点となります。国内株市場がFOMCの結果を受けるタイミングが週末の22日(木)であり、需給的にも注意が必要です。
決定される利上げ幅に注目が集まる中、利上げ幅0.75%については、先日のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)で報じられた観測記事によって、すでに市場に織り込まれた可能性が高く、その通りの結果であれば、イベント通過のアク抜け感で株価が上昇していく展開になるというのが、先週の頭まで描かれていたシナリオでした。
それが、米8月CPIの結果によって、「利上げ幅が0.75%ではなく、1%もあり得るのでは?」という見方が一部で出てきたことが厄介になっています。
というのも、FOMCまで様子見が続き、1%の利上げが決定されてから株価が下落で反応するパターンや、FOMC前に利上げ幅1%を先取りするかっこうで売りが先行し、FOMC後に値を戻すパターン、こうした思惑とは関係なく、当初の想定通りの0.75%利上げパターンなど、複数のシナリオが浮上することになったからです。
また、先週の株価急落が、果たして1%の利上げを織り込んでいるのかどうか…というのも論点になるかもしれません。もちろん、その可能性はありますが、状況を整理すると、微妙なところです。
図4 米NYダウ(日足)の動き (2022年9月16日取引終了時点)
上の図4は少し期間が長めの米NYダウの日足チャートです。
今年1月5日の高値を起点に、6月17日の安値までの期間における下向きのギャン・アングル(水色)と、6月17日の安値を起点に、直近戻り高値(8月16日)までの期間の上向きのギャン・アングル(ピンク色)の二つのギャン・アングルを重ねています。
先週のNYダウは、水色のギャン・アングルにおける、「2×1ライン」から「3×1ライン」を目指そうとしていた動きが否定され、結局「2×1ライン」を下抜けてしまった一方、ピンク色のギャン・アングルの「8×1ライン」が下値のサポートとして機能していたことが分かります。
一応、相場は崩れていないと考えることができるものの、サポートとなったのが、ピンク色のギャン・アングルの「8×1ライン」ということは、6月17日安値からの株価上昇分のほとんどを失っていることでもありますので、ここを下放れしてしまうと、株価下落に勢いがついてしまい、3万ドル台割れも視野に入る可能性も出てきます。
ちなみに、6月17日の安値は6月FOMCの開催前に0.75%の利上げを織り込んでつけた株価です。
さらに、米株市場において、気になる点がもう一つあります。
米物流大手・フェデックスの株価が表すこととは
図5 米フェデックス(FDX)(日足)の動き (2022年9月16日取引終了時点)
上の図5は、米物流大手のフェデックス(FDX)の日足チャートです。
まずは、週末16日(金)の急落が真っ先に目に飛び込んできます。この日のフェデックス株価は前日比で約21%安となっていて、200ドルあたりから一気に160ドル台へとその水準を切り下げています。200ドル台は2022年相場の下値の目安として意識されてきただけに、この日の株価急落はかなりのインパクトがあるといえます。
また、1月5日を起点とするギャン・アングルで捉えても、「8×1ライン」と「4×1ライン」の範囲内で推移していたのが、一気に「3×1ライン」まで飛んでしまったようなかっこうです。
株価急落の背景には、同社の決算速報値において、国内外で貨物需要が減少していることを理由に、売上高が市場予想に届かなかったことや、通期の業績見通しも撤回したことが挙げられます。
フェデックスは物流面で国際的に高いシェアを誇っており、同社の業績低迷は世界経済のモノの流れが悪くなり、実体経済が悪化し始めている表れと考えることもできます。ただ、図3・図4にもあるように、NYダウをはじめ、この日の米国株市場は下落していますが、その下げ幅は米8月CPIを受けた13日(火)ほど大きくありません。
先ほどまで金融政策の織り込みについて考えてきましたが、実体経済の悪化の織り込みについては、まだ進んでいない、足りていない可能性は高いといえます。そのため、今回のフェデックスの株価急落は、今後の株式市場が実体経済の悪化を織り込んでいく呼び水となりかねないことは認識しておく必要はありそうです。
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