アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

※データは2022年8月31日時点。
※配当利回りは予想、単位は%。時価総額の単位は億円。月間騰落率の単位は%。移動平均線乖離率の単位は%、基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。

※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。

 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。8月31日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。

 配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。

ランク外となった銘柄、新規にランクインした銘柄

 8月の日経平均株価は1.0%の上昇となりました。中旬にかけて買い優勢、6月9日の戻り高値を上回り、一時は2万9,222円まで上昇しました。ただ、その後は伸び悩み、ほぼ往ってこいの状況で終了しています。消費者物価指数や生産者物価指数など物価指標が予想外の減速となったことで、米国のインフレピークアウト期待が高まる展開となりました。

 ただ、その後はFRB(米連邦準備制度理事会)高官のタカ派発言などを受けて米長期金利が上昇し、伸び悩みました。そして、8月26日にはジャクソンホール会合でFRBジェローム・パウエル議長の講演があり、こちらでも想定以上のタカ派的な姿勢が確認されたことで、早期利下げ期待などが大きく低下しました。

 直後にダウ工業株30種平均は1,000ドル超の急落となり、日経平均も下げ幅を広げる形になりました。

 こうした中、ランキング上位銘柄の株価は総じて堅調なものが多くなりました。中では、日本製鉄(5401)が2ケタの上昇となっています。第1四半期決算発表に併せて公表した通期見通しが予想以上に底堅いものだったため、足元の事業環境悪化による業績懸念が大幅に後退する形となりました。

 また、双日(2768)兼松(8020)住友商事(8053)など総合商社株もそれぞれ強い動きとなっています。双日や兼松は第1四半期の大幅増益決算がストレートに評価されました。住友商事は、安定的な利益還元に向けて株主資本配当率を新指標として導入したと伝わったことが材料視されました。

 非鉄市況のピークアウトに伴う大幅な減配懸念などが低下したようです。半面、NIPPON EXPRESS(9147)は上方修正や自社株買いの発表で一時上昇しましたが、その後は出尽くし感が優勢になりました。

 今回は、熊谷組(1861)UBE(4208)が新規にランクインした一方、住友金属鉱山(5713)丸紅(8002)が除外となりました。熊谷組は8月9日発表の第1四半期決算で、営業利益が大幅減益となったことで株価が下落し、配当利回りが上昇しました。UBEも利益予想の下方修正で株価が軟化したことから、配当利回りとランキングが上昇しました。

 一方、丸紅は第1四半期営業利益倍増などの好決算発表で、月間の株価上昇率が17.8%となり、利回り水準が低下しました。住友金属鉱山も月間を通して堅調な株価推移となったことで、ランキング外となりました。総じて8月は、商社や非鉄金属などの資源関連株が強い動きとなった格好です。なお、その他ランキング上位銘柄で大きな変動は見られませんでした。

 アナリストコンセンサスと会社計画で配当予想が異なっているものとして、引き続き海運株が挙げられます。商船三井(9104)は7月29日に配当金予想を500円に引き上げ、日本郵船(9101)も8月3日に1,435円(9月末の株式分割前ベース)に引き上げていますが、アナリスト予想はそれぞれ、528円、1,530円程度の配当水準をみているようです。

 また、双日(2768)、兼松(8020)、住友商事(8053)など総合商社各社も、そろってアナリストコンセンサスでは会社予想よりも高い配当水準を見込んでいます。日東工業(6651)も会社予想ベースの配当利回り6.87%と比較してコンセンサス水準が高くなっています。

 日本製鉄(5401)、SBIホールディングス(8473)は、会社側で2023年3月期の配当計画を示していません。アナリストの配当予想は、日本製鉄は135円(前期160円)、SBIHLDGは160円(前期150円)程度という状況です。なお、日本製鉄の上半期会社計画は70円としています。

相場の注意点

 米国の長期金利が再度上昇基調に転じていること、中間期末に当たる9月相場に入ることなどから、目先は高配当利回り株などのバリュー株に関心が向かいそうです。ランキング上位銘柄もほとんどは中間配当を実施しており、配当権利取りの対象となってきます。

 ただ、日本郵政(6178)、熊谷組(1861)は9月末での配当権利はありません(NIPPON EXPRESS(9147)は12月決算)。とくに、車用鋼材価格が最大の値上げで妥結したことなどもあり、素材株や資源株などが相対的に優位な状況と考えます。ただ、最近のFRB高官の発言内容などは、株価が大きく調整している場面ではタカ派色が薄れる傾向にもあります。

 一転してバリュー株からグロース株への資金シフトが強まる可能性も残るため、中間配当権利落ちのタイミングなどでは、高配当利回り銘柄の上昇一服も想定しておくべきでしょう。