はじめに

今回のアンケート集計期間は11月29日(月)~12月1日(水)の3日間です。世界の株式市場の中で“出遅れている”と言われた日経平均株価が5カ月ぶりに10,000円の大台を回復し、ドルベースで見ると年初来高値を更新(11月22日)した直後に行われた今回のアンケートは、前回極端に傾いたベアトーンとは一転したものとなりました。ただ一方で捻じれ国会は空転し補正予算審議にも時間が掛り、さらには尖閣諸島問題や北方領土問題などで中国やロシアとの外交問題が混迷する中、朝鮮半島の地政学的リスクが高まるなど決して安穏とマーケットを見ていられる状況に日本が置かれているわけではなく、そんなタイミングで行われた今回のアンケートは、個人投資家の皆様の目線が何処にあるのかを知る上では極めてタイムリーなものと考えています。事実、ご愛読頂いている私のメルマガなどでご承知の通り、私は今なお引き続き慎重論(ベア・トーン)であるからです。今回の楽天DI集計結果も、皆さまの今後の投資のご参考にして頂ければ幸いです。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「7カ月ぶり、DI史上3番目の強気に。気持ちは一気に転換」

  • Q1:11月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI= +15.77
    (10月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △36.97)
  • Q2:11月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +12.23
    (10月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △16.00)

今回の基準日となった2010年11月29日の日経平均株価の終値は10,125.99円です。実は今回のアンケート結果で1カ月後の見通しとなったDI=+15.77という水準は2008年10月に最初の楽天DIを始めてから過去3番目に強気の水準となります。1番強気に傾いたのは今年3月末に行った結果(+28.25)で、2番目がその翌月の4月に行ったもの(+21.28)です。日経平均株価の水準で言えば約1,000円値下がりして3番目の強気ですが、共通しているのは市場の見方に「割安」や「出遅れ」という表現をよく見つけることができるということでしょうか。当時も収益の回復状況というよりはPBR(株価純資産倍率)の1倍割れが多いことが議論の対象になりましたが、今回は世界市場の株価に比べて「日本株は出遅れている」という見方が増えた結果、11月初めの9,000円台前半からスルスルと株価が戻して10,000円台を超えてきたタイミングということができます。やはり基本的にはトレンド・フォローの結果が出やすいということなのかも知れません。

ファンダメンタルズの議論をすれば、尖閣諸島沖中国漁船衝突問題による中国との軋轢、突然のメドベージェフ露大統領の北方領土・国後島訪問、そして北朝鮮による韓国への砲撃から日米韓合同軍事演習への発展など、決して一筋縄ではいかない外交上の問題や地政学的リスクなどが日本を現在取り巻いています。

さらに、先の参議院選挙で民主党が大敗して捻じれ状態となって以降、初めて開催された国会は、これら外交上の問題やそれに伴う諸問題などで仙谷官房長官と馬淵国土交通大臣が問責決議を可決されるなど、審議進行に相当な困難さを露呈しています。その結果として補正予算審議は何とか野党も協力して可決されたものの、来年度予算案については全く国会での審議目処が立たないというような状態となっています。内閣支持率は歴代内閣の中でも下から数えた方が早いという水準にまで低下してしまったため、少なくとも内閣改造、もしかすると年明け以降に解散・総選挙という流れになりつつあります。そんな不安定な政治状況下にも関わらずDIの数値が過去3番目に強気な状況というのは、少々意外感がありました。

米国の追加金融緩和発表の裏で広がった南欧諸国の信用不安やアイルランド問題は再び欧州問題をクローズアップさせたため、ユーロ安を通じて円高にもなっていますので、為替メリットを大きく評価できる状況でもありません。やはり基本的には「出遅れ感」がすべてということになるのだと思うのですが、現在市場のメインプレイヤーである外国人投資家の目線であるドルベースの日経平均株価はすでに年初来高値を更新しています。自らの慎重論を戒めつつ、今回の結果は大変興味深いものとなったと思っています。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
11月29日 DI=+32.11 DI=△12.23 DI=+20.57
10月25日 DI=△39.72 DI=△18.62 DI=+3.03

調査時点の円/ドルは83.86円、円/ユーロは111.52円です。前回のアンケートの頃の市場コンセンサスは円/ドルは79.75円を超え史上最高値を更新する円高に向かうという感じで、当然DIについてもそれをサポートする結果となっていましたが、1ドル80円の壁を超えることなく3円以上も円安に振れたというのが株価に対しても強気見通しが戻ってきた背景にあるのかも知れません。ただその一方でユーロに対してはやや円高に振れています。

為替見通しのDIについてもやはり前述の株価DIと同じようにトレンドフォロワー型に近い結果になっているようです。ただ正式な解析はしておりませんが、直感的に記憶を辿ってみると、為替についてのDI結果についてはその後反対に市場が動くことがやや多いという印象を持っています。すなわちDIが極端に円高を示唆した場合は、実際は円安に、反対に極端に円安を示唆した場合は円高に、ということです。市場取引の原点が多数派(市場コンセンサス)の反対に動くという常識を当て嵌めると、実はその仮説が正しいことになるのかも知れません。ちなみに今回の結果は、明らかに過去から見てかなり円安を示唆しています。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 24.23% 23.03% 1.19%
EU諸国

6.86%

8.83%

△1.97%
ブラジル 38.74% 37.79% 0.95%
ロシア 6.74% 7.03% △0.29%
インド 54.86% 56.97% △2.11%
中国 27.20% 26.07% 1.13%
中東・北アフリカ 5.83% 6.90% △1.07%
東南アジア 38.74% 36.83% 1.92%
中南米 8.46% 8.00% 0.46%
東欧 2.40% 3.86% △1.46%

注目する投資先の散らばりはあまり特徴がない結果になったように思われます。欧州に対する注目度が下がっているのは当然ですが、6.86%という数値自体は過去最低というわけではなく、またインドのそれも同様です。そもそも2%程度の変動というのは良くあることですから。強いて特徴をあげるとすれば、東南アジアの注目度が過去最高を更新しています。金融引き締めに傾く中国や、IOF税(金融取引税)を引き上げて過度なホットマネーの流入を阻止する意図が明らかなブラジルなどと違って、東南アジアにはまだまだ成長のポテンシャルがあるという見立てなのかも知れません。いずれにしても今回はこれといった特徴のない結果になったと思います。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 68.00% 59.03% 8.97%
外国株式 28.23% 28.69% △0.46%
投資信託 30.40% 29.79% 0.61%
ETF 18.17% 14.90% 3.27%
FX(外国為替証拠金取引) 20.11% 21.93% △1.82%
国内債券 5.26% 5.66% △0.40%
海外債券 12.00% 12.41% △0.41%
17.49% 18.62% △1.13%
原油 5.37% 5.79% △0.42%
商品 4.69% 5.10% △0.42%
REIT 12.46% 12.28% 0.18%
CFD 3.31% 4.14% △0.82%

やはり過去3番目に日本株に対して強気という結果を反映して、国内株式への注目度合いが対前月比で8.97%も上昇して68.00%となりました。次にETFも+3.27%の上昇となって18.17%となりました。弊社楽天投信投資顧問ではETFを利用したグローバル・バランス投資のファンドを設定していますが、東南アジア市場などの新興国のみならず、市場全体が上昇するような局面では個別銘柄を選別するアクティブ運用よりも、市場連動型ETFを上手く組み合わせた方がパフォーマンスが良いという結果が多いのですが、そうした理屈を反映したアンケート結果になっているかと思われます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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