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脱炭素社会の実現に向け、環境と経済の関係を「見える化」することが重要な課題となっており、今年発表された骨太の方針2022では『グリーンGDP』などの研究・整備が進められることになりました。そして、8月5日には内閣府が温室効果ガスの排出など経済活動による環境への負荷を踏まえた経済成長率を示す『グリーンGDP』という新しい指標の試算を初めて公表しました。
【ポイント1】温室効果ガスの排出増減を経済成長率にプラス/マイナスして評価
今回の内閣府の発表に先んじて、2012年には国連が「環境経済勘定体系」という国際基準を採択し、2018年には経済協力開発機構(OECD)が「汚染調整済経済成長率」を提案しています。
「汚染調整済経済成長率」は、温室効果ガスや大気汚染物質の削減努力を経済成長率にプラス評価するという指標です。1991~2013年の平均では、ドイツをはじめ欧州を中心に従来の経済成長率にプラスの評価となりました。一方、インドや中国などは温室効果ガスの排出増が経済成長率にマイナスで反映されました。
【ポイント2】『グリーンGDP』では日本の経済成長率はプラス評価に
内閣府が発表した『グリーンGDP』は、「汚染調整済経済成長率」に相当します。1995~2020年の平均では、従来の経済成長率の0.57%に汚染削減調整項が0.47%としてプラス評価され、『グリーンGDP』は1.04%となりました。
汚染削減調整項の0.47%の内訳を見ると、メタンの排出削減が0.29%と寄与が大きくなりました。メタン排出の大半を占めている稲作、畜産、ガス・水道・廃棄物処理業で、廃棄物の埋立量減少や家畜の頭数減少などが行われたことで、メタンガスは減少してきています。また、牛のげっぷは多くのメタンガスを放出すると注目されています。その対策として、牛の餌に海藻のカギケノリを混ぜることで約85%のメタンガス排出を削減できるという研究や、家畜の排せつ物を用いてメタン発酵を行うことで再生可能エネルギーをバイオガスとして活用しようという取り組みなども進められています。
【今後の展開】『グリーンGDP』を引き上げるために、私たちができる取り組みとは
これまで日本では、排出規制や企業の自主的な取り組みによって窒素酸化物などの大気汚染物質が減少してきています。また2013年以降は、再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ技術などの進展も奏功しています。
2020年度の温室効果ガスの内訳を見ると、二酸化炭素(CO2)が約9割を占めており、エネルギーを起源とするものは実に約84%にも上ります。CO2の排出(電気・熱配分後)は、鉄鋼や非鉄金属などの一次金属、化学、運輸・郵便業などからが多くなっています。例えば、運輸などでは自動車の排ガスの影響が考えられますが、最近は電気自動車(EV)の開発・販売が進んできており、今後、CO2の削減効果が期待されます。
一方、CO2の排出元の第2位は家計が約2割となっており、その多くを占めています。このためCO2の削減には、企業だけでなく家庭での取り組みも大きな役割を果たすと考えられます。例えば、家庭での節電が代表的なもので、使わなくても良い電気をこまめに消したり、省エネ家電に買い替えたり、太陽光発電などの再生可能エネルギーに切り替えることなどが挙げられます。政府が、そして世界が、脱炭素社会の実現に向けて大きくかじを切る中、まずは一人一人が身近なところから取り組み始めることで、『グリーンGDP』を引き上げていくことにつながると期待されます。
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