今回のテーマは「レバレッジ」と「建玉の管理」についてです。

そもそも「レバレッジ」とは?

 最初はレバレッジについてです。レバレッジとは「てこ」を意味します。昔学校で習った、支点・力点・作用点をベースに、小さい力で大きなものを動かす原理のことです。

 このレバレッジは投資の世界でも、「レバレッジを掛ける」、「レバレッジが効いている」、「レバレッジが何倍」といった具合に頻繁に耳にするキーワードなのですが、手持ちの資金よりも大きい金額の取引を行うことを「てこ」に例えています。

 つまり、「手持ち資金の何倍の規模の取引ができるのか?」を表したものがレバレッジです。米国株信用取引では手持ち資金の約2倍の取引を行うことが可能ですので、レバレッジは約2倍ということになります。

 このレバレッジによって取引の規模が大きくなれば、それだけ得られる利益も大きくなる一方、発生してしまう損失も同様に大きくなります。いわゆる、ハイリスク・ハイリターンですが、そのリスクとリターンの度合いはレバレッジが大きくなるほど高まります。

 また、信用取引以外にも、レバレッジ型の投資として、先物取引やFX(外国為替証拠金取引)などが知られていますが、これらのレバレッジは一般的に20倍を超えています。単純にレバレッジだけで比較すれば、信用取引は世間が抱くネガティブなイメージほどリスクは高くはないと言えます。

レバレッジと「委託保証金率」

 続いて、先ほどまで繰り返し登場してきた手持ち資金について、もう少し細かく見ていきます。まずは、この手持ち資金のことを、信用取引では「委託保証金(いたくほしょうきん)」と呼んでいることを押さえてください。

 また、現物取引の場合、株を買うのに必要なのは現金オンリーですが、信用取引に必要な委託保証金は、現金だけでなく、保有している株式も現金の代わりとして利用することができます。米国株信用取引においては、現金(日本円・米ドル)と米国株式が委託保証金の対象になります。ちなみに、委託保証金に使われる株券のことを「代用有価証券」といいます。

 気を付けておきたいのは、委託保証金として日本円を使う場合には実際の金額の95%、米国株式を委託保証金として使う場合には、「株価×保有株数」の金額の70%で評価して計算されるという点です。

 例えば1,000米ドル分の米国株式を保有していた時、信用取引の委託保証金として使えるのは700米ドルになります。これは、日々変化する為替や株価の価格変動リスクを考慮した対応です。

 繰り返しになりますが、米国株信用取引のレバレッジは2倍ですので、準備した委託保証金の倍の金額を取引することが可能になるわけですが、次に押さえておきたいのは、「委託保証金率」という言葉です。

 結論から言ってしまうと、委託保証金率とは、「レバレッジ何倍」を別の表現で言い換えたもので、「取引したい金額に対して何%の委託保証金が必要なのか」を示したものです。

 楽天証券における米国株信用取引の委託保証金率は50%となっています。仮に1万米ドルの新規建てをするのであれば、その50%にあたる5,000米ドルの委託保証金が必要になります。つまりレバレッジ2倍というわけです。

 なお、委託保証金率50%以上の委託保証金を保有していたとしても、その額が最低委託保証金額(おおよそ32万円を米ドル換算した額)に満たない場合は新規建てができません。信用取引を始めるには、少なくとも30数万円の委託保証金が求められます。

 その他、楽天証券の委託保証金と委託保証金率の細かい内容については、こちらに掲載されています。

 余談になりますが、国内株信用取引のレバレッジが、「約3倍」というように、少しアバウトな表現になっているのも、実はこの委託保証金率が関係しています。

 一般的に国内株信用取引の委託保証金率は30%です。委託保証金が100万円の場合、最大で333万3,333円(100万円÷30%)までの取引ができるわけですが、この例の様に計算で割り切れないケースも出てくるため、約3倍と表現しているわけです。

チョットまぎらわしい、委託保証金率の二つの意味

 最後に「建玉の管理」についても簡単に整理していきたいと思います。

 株式取引の最大の関心事は株価の動きです。現物取引でも信用取引でも株価の上げ下げが損益を左右します。ただし、信用取引は「資金や株券を借りて取引している」ため、株価の動きだけでなく、保有している建玉の状況にも注意を払う必要があります。

 こうした建玉の状況を把握する上で大事なのが、先ほども登場した「委託保証金率」です。先ほどの「50%」は新規建てに必要な委託保証金率になります。

 そして、建玉を管理する際に注目される委託保証金率が「30%(以上)」になります。

  • 委託保証金率「50%」…新規建てに必要
  • 委託保証金率「30%」…建玉の維持に必要

 信用取引も含めて、株式投資では必ずしも利益が出るとは限らず、損失が発生してしまうことがあります。新規建てを行った後の委託保証金率は、建玉の損失分(評価損といいます)を考慮して計算されることになります。ざっくりまとめると、以下の通りです。

建玉保有時の委託保証金率=(委託保証金額-建玉の評価損額-諸経費)÷建玉額×100

 つまり、保有している建玉で評価損が膨らんだり、委託保証金に使っている株式の株価が下落した場合には委託保証金率が低下していくことになります。複数の建玉を保有している場合はそれぞれの建玉の損益を通算しますが、通算の結果プラスになった場合は「0ドル」で計算されます。

 委託保証金率を増やすには、建玉数を減らすか、委託保証金に現金を追加する、もしくは委託保証金に使っている株式の株価が上昇することなどが必要になります。

 委託保証金は、信用取引を始める時に必要な担保であり、また、返済時に損失を賄う資金でもあります。そのため、評価損が増えて維持率が低下し過ぎてしまうと、返済時に資金が足りなくなる可能性が高まることになります。

 そこで、建玉を維持するために必要な委託保証金率を30%以上に定めています。このことから、委託保証金率30%のことを「維持率」と呼ぶこともあります。仮にこの維持率を下回ってしまうと、あの有名な「追証(おいしょう)」が発生することになります。

 そこで次回は、追証の発生メカニズムと解消方法や回避方法などについて考えていきたいと思います。