はじめに

政権交代後、初の国会論戦が始まった10月28日を含む3日間で今回の楽天DIは集計させていただきました。毎月の皆様のご協力に心より感謝申し上げます。
さて、そんな国会での熱い舌戦を他所に、残念ながら、個人投資家の熱い目線は日本市場に向けてではなく、ブラジルに向いているというデータが顕著に出る結果となりました。本文で詳述しますが、日本株の人気剥落傾向には歯止めが掛からず、これも寂しい限りです。
ただ偶然、この集計締切日となった10月28日には私自身がブラジル国営石油公社であるペトロブラス社の総裁の話をじかに聞く機会があったのですが、国会での与野党の舌戦内容と比較して「ブラジルに投資家の目が向くのは無理もない」と感じてしまいました。声が大きかったからという印象は差し引かなければなりませんが、“勢い”とか“力強い”という印象をとても受けたからです。日本株の人気が回復してくることも切に願っています。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「弱気センチメントにやや一服感、3カ月先見通しは辛うじて水面に浮上、年明けには期待を繋ぐのか?」

  • Q1:10月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △12.15
    (9月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △32.61)
  • Q2:10月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +0.92
    (9月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △3.38)

今回の基準日となった2009年10月26日の日経平均株価の終値は10,362.62円です。対前回比で比較してしまうと、日経平均株価は約350円も上昇したことになりますが、前回のDIが1カ月の短期見通しにおいて急激にマイナスに落ち込んだことを反映し、10月初めに9,628.67円まで急落しています。その後の株価回復で前回水準を上回ったということになるのですが、見通しは引き続き△12.15と決して高くはありません。つまり市場はまだこれは短期的なリバウンド程度にしか期待をしていないということを表しているかに思われます。

一方、3カ月先の見通しに関しては、前回は7カ月ぶりのマイナスになりましたが、今回はプラス0.92と辛うじて水面上に浮上し、マイナス値は連続しないで済みました。10月26日からの3カ月後は年明け1月26日となりますが、年末を乗り切れば、年明けの日経平均株価は1万円台を回復しているだろうというようなイメージなのかも知れません。

この『楽天DI』も、標本数が12を超えてきましたので、時系列データの解析を少しずつ始めていますが、その数値の変化傾向とその後の市場の動きの相関においては、1カ月先よりも3カ月先見通しの方が、有為性が高いという結果が見え始めており、その意味においてもこの結果はややポジティブな材料と考えられると思います。

ただ1カ月先についても、3カ月先についても、どちらも中立との判断が中心になっていますので、全般的にみれば方向感の見え辛い展開と考えている個人投資家の方が多いようです。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
10月26日 DI=+10.73 DI=+20.80 DI=+33.44
9月28日 DI=△30.32 DI=△7.63 DI=△2.51

調査時点の円/ドルは91.83円、円/ユーロは138.07円です。今回の結果の最大の特徴は、全通貨に対して同時にDIがすべて揃ってプラス、すなわち円安であることを示唆し、さらに個々の通貨別に見ても、そのプラスの絶対値が最大ということです。過去における対ドルの最大値は2月23日実施分でプラス10.34、対ユーロでは3月30日実施分でプラス8.37、そして対豪ドルにおいては7月27日実施分の12.38という結果が参考になるのですが、そのどれをとっても今回の結果が上回る円安方向への数値となりました。

政権交代後、藤井財務相の為替不介入発言によって、いったんは円高に大きく振れた市場ですが、今回の集計時10月26日時点ではだいぶその修正も入っていた段階ですから、やや結果に対して驚きを禁じ得ないという気もしています。日本株の人気剥落とあわせて考えて、ややもすると日本の金融資産に対する投資家の不信感の表れなのではないかと危惧しています。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 18.30% 19.63% △1.33%
EU諸国 8.15% 9.27% △1.12%
ブラジル 52.33% 30.86% ↑ 21.47%
ロシア 10.98% 12.54% △1.56%
インド 44.93% 48.53% △3.60%
中国 55.24% 56.82% △1.57%
中東・北アフリカ 5.91% 5.67% △0.24%
東南アジア 19.88% 19.19% 0.69%
中南米 9.65% 7.42% 2.24%
東欧 4.58% 3.71% 0.87%

今回の最大の特徴は、ブラジル人気の急激な高まりです。東京が五輪招致に敗れ、ブラジルでのオリンピック開催が決定したこともあり、通貨レアルなども含めて、投資家の熱い視線はブラジルに注がれているということを数字的にも裏付ける結果が出ました。

添付したチャートは楽天DI開始時点からの「今後注目する投資先」の時系列推移を示していますが、ご覧いただける通り、中国が突出して高く、その次にインドが続くという流れでしたが、両国も引き続き高い人気は保ちながらも、一気にブラジル人気が急騰していることがこれを見ても解ります。

ブラジルでは投資資金の過剰な流入を抑制するために、20日から海外からの送金に対して2%を課税する措置が導入されることとなり、サンパウロ証券取引所の代表的な株価指数であるボベスパ指数が急落するなどの動きもありますが、2016年のブラジル・オリンピック開催に向けて、今後多くの材料があるとの投資家の判断がこれを上回るように働いているかに思われます。また前述いたしましたが、確かに私などもブラジル企業を取材する機会があると、少なくとも日本企業などに比べると勢いというか、元気の良さを感じてしまいます。引き続きブラジルに関しては注視していきたいと思っております。

楽天証券 個人投資家アンケート 注目する投資国の推移


(作成:楽天投信投資顧問)

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 67.72% 69.36% ↓ △1.64%
外国株式 32.36% 31.19% 1.17%
投資信託 29.28% 24.65% 4.64%
ETF 22.38% 16.79% 5.59%
FX(外国為替証拠金取引) 21.96% 20.72% 1.24%
国内債券 7.82% 6.76% 1.06%
海外債券 14.23% 9.16% 5.07%
20.05% 17.99% 2.06%
原油 9.15% 9.49% △ 0.34%
商品 5.57% 4.47% 1.10%
REIT 9.07% 7.31% 1.76%
CFD 5.57% 4.03% 1.54%

今回ポイントを落としたのは国内株式と原油の2つだけとなりました。原油はWTI原油先物が80ドルを超えてくるなど、材料は豊富な気もしますが、このポイント低下は投資家の原油に対する高値警戒感の表れかも知れません。

一方、人気を集めたものは投資信託、ETF及び海外債券という結果です。投資信託とETFだけならば貯蓄性の高いものへの嗜好の変化とも読めなくもないですが、海外債券の伸びと、前述のブラジル人気とを加味して考えると、ブラジルへの投資可能な金融商品を投資家は求めているという結果の反映とみることが出来ます。ブラジル株投信やボベスパ指数のETF、あるいはブラジル・レアル債といったところでしょうか。外国株式や海外債券について、国別や先進国と新興国などの分け方を取り入れてアンケートをお願いすると、より際立った結果が見られたかと思います。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

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