はじめに

与野党逆転という歴史的な結果を残した衆議院選挙から1カ月、その間の日本株式市場はひとり世界から取り残されるかのような緩慢な歩みから、後半は急激に失速、ついには日経平均株価が10,000円を割り込む展開となってしまいました。
実は早いものでこの『楽天DI』も昨年10月にはじめてちょうど一年が経ちました。時の経つのは早いものです。昨年はリーマン・ショックの直後で市場も大混乱していましたが、先行きを読むのが難しいという点においては、どんな局面でも一緒だな、と改めて思います。そんな中、この『楽天DI』が皆様の投資判断の一助になればと、関係者一同、引き続き創意工夫を凝らしたものをご提供できるように頑張っていきたいと思っています。

楽天投信投資顧問株式会社 代表取締役社長 大島和隆

1.日経平均の見通し

個人投資家の見方「弱気センチメントへの傾斜拡大は3カ月連続、水準は昨年12月初め調査時点と短中期共に同水準」

  • Q1:9月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △32.61
    (8月31日と1カ月後の日経平均の見通し DI= △8.59)
  • Q2:9月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= △3.38
    (8月31日と3カ月後の日経平均の見通し DI= +2.86)

今回の基準日となった2009年9月28日の日経平均株価の終値は10,009.52円です。週末に88円台に入る急激な円高が進み、週初から弱含んだ結果、ザラバで2カ月ぶりとなる日経平均株価の10,000円大台割れを示現した日です。前回のレポートで、『「株と債券とどっちが嘘つき?」と言いたくなるような株高と債券高(金利低下)の同時進行が続いていますが、DIの結果から見てもその答えはたぶん“株式”なのだろう。』と結ばせて頂きましたが、やはり結果は株式の方でした。

相場のことは歴史に学ぶと案外と良い答えが見つかったりもするものですが、今回のDI結果が近似している昨年12月初めとはどんな時だったのでしょうか。実はその1カ月前にあたる11月4日の米国大統領選挙でオバマ大統領誕生が決定し、興奮がやや冷め始め、「Yes、We Can!」という新大統領のスローガンに金融市場が「sure?」という気持ちを感じはじめていた時といえます。それはある意味では現在の日本の状況にも置き換えることができるのではないでしょうか?

8月30日の衆議院選挙で圧倒的な多数議席獲得をもって誕生した鳩山新政権、閣僚が決定し、徐々に新政権としての具体的な舵取りが理想や理念から現実への適応へと変わっていく過程で、市場が「本当にマニフェスト通りにできるの?」という不安を感じ始めているという意味においてです。長く続いた自民党政権から初めて2大政党での与野党逆転という大転換ですから、頭では色んなことが起こると解っていても、その現実には多くの人が戸惑うのも事実だと思います。

政権交代し、スポークスマンが変わったからには、市場との対話の仕方ひとつとっても、いろいろと変わるものがあり、当然ミス・コミュニケーションも起こるはずです。米国ではそうした山積する課題をこなし、チューニングをこなし、S&P500種がオバマ新大統領の政権を評価して11月4日の株価を上回ったのはこの7月24日です。世界経済のステージが当時と今とでは全然違いますので、同じだけ時間が掛かるとは思いませんが、今回のDIが示す短期見通しのマイナス幅と中期見通しのマイナス幅の乖離には、投資家の足元の現状に対するそんな不安を垣間見ることができるような気がしています。

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
9月28日 DI=△30.32 DI=△7.63 DI=-2.51
8月31日 DI=△23.88 DI=△8.39 DI=-2.02

調査時点の円/ドルは89.56円、円/ユーロは130.81円です。今回のDIの結果も、前回と引き続き全通貨に対して円高見通しとなりました。前回集計時点よりも今回の水準の方が円高になっているのですが、それでもなお全通貨に対しての見通しが円高というのは、やや気になるところです。中でも、ドルに対するDIが前回よりもさらに水準を進めていますので、投資家は昨年12月や本年1月の87円台の円高を予想しているのかも知れません。

前述のミス・コミュニケーションという意味では藤井新財務相の為替介入に対するコメントは外国人投資家の円に対するスタンスを相当刺激しているように思われます。そうした流れを受けてドル円の水準は予想外の展開をするのかも知れません。

3.今後注目する投資先

(複数回答)

  今回 前回
アメリカ 19.63% 24.92% ↓ △5.29%
EU諸国 9.27% 9.63% △0.36%
ブラジル 30.86% 27.07% ↑ 3.80%
ロシア 12.54% 9.76% ↑ 2.78%
インド 48.53% 49.64% △1.11%
中国 56.82% 52.18% ↑ 4.64%
中東・北アフリカ 5.67% 7.22% △1.55%
東南アジア 19.19% 18.87% 0.33%
中南米 7.42% 6.70% 0.71%
東欧 3.71% 3.45% 0.26%

今回の最大の特徴は、米国が大きくポイントを下げ、『楽天DI』開始後最低の水準にまで数値が低下したということが挙げられます。このところ発表される経済統計がややまだら模様になり、景気回復期待に停滞感が滲み始めていることの表れかも知れません。

その一方で、中国、ブラジル、ロシアは堅調です。このアンケートの集計期間の後ではありますが、オリンピックの南米での開催という悲願を果たし、2016年のオリンピックはブラジルで開催されることが決定しました。昨年の北京オリンピック同様、かなり盛り上がることが予想され、ブラジルへの投資は今後さらに人気化する可能性も高いと思われます。逆の意味では、だからこそ東京に招致して欲しかったと残念でなりません。

4.今後注目する投資商品

(複数回答)

  今回 前回
国内株式 69.36% 76.45% ↓ △7.09%
外国株式 31.19% 26.74% ↑ 4.45%
投資信託 24.65% 22.97% ↑ 1.68%
ETF 16.79% 19.91% ↓ △3.12%
FX(外国為替証拠金取引) 20.72% 18.67% 2.05%
国内債券 6.76% 5.66% 1.10%
海外債券 9.16% 8.72% 0.44%
17.99% 15.88% 2.12%
原油 9.49% 9.04% 0.44%
商品 4.47% 4.88% △0.41%
REIT 7.31% 9.82% △2.52%
CFD 4.03% 4.49% △ 0.45%

今回、国内株式が歴史的な(?)人気剥落を見せて、ついに70%を割り込みました。当然過去最低を更新しましたが、ある意味では証券会社で集計するアンケートでの「お約束」みたいな側面もあると思っていた国内株式の人気が一気に7%も低下した事実には驚きを禁じ得ません。ただ超長期的な見通しで日本の将来を担う年金でさえ、自国の株式をポートフォリオの2割も買っていない現状からすれば、これも仕方のない結果なのでしょうか?

その一方で外国株式が過去最高となり、こちらは逆に初めて30%を超えて31.19%となりました。Q4の結果から類推するに、投資家の目線は再びBRIC’sを中心とした新興国へ向かい始めているのだろうと思います。その一方で、ETFの人気は低下していますので、パッシブ運用というよりは個別銘柄の一本釣りを志向されている投資家が増えているのかも知れません。

金の人気が今一つ盛り上がっていない点については、最近の金価格の動きと比較してやや違和感があるものの、投資家層や投資方針の違いでこれらは説明できるものだと考えます。

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。

本資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて楽天証券株式会社が作成・提供したものですが、情報や見解の正確性、完全性、適時性などを保証するものではありません。また、売買に関する勧誘を意図して作成したものではありません。投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。ストラテジストの見解や評価、予測は本資料作成時点での判断であり、予告なしに変更されることがあります。この資料の著作権は楽天証券に帰属しており、事前の承諾なく本資料の全部または一部を引用、複製、転送などにより使用することを禁じます。